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幼女と執事が異世界で  作者: 天界
第5章

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113,超効率狩り



「それではユーウイトさん、お願いします」


「ほいほぉ~い」



 相変わらずの精霊さまの気の抜ける掛け声が終わる頃には視界はすっかり切り替わり、そよそよと流れる小川が目に入る。

 周りを確認してみてもアリアローゼさんご一行の気配はない。どうやら完全に引き上げたようだ。今度は迷わず帰れるといいけど。



「お願い聞いてくれてありがとうねぇ~。

 また何かあったら頼らせてもらうねぇ~」



 ふよふよ、と浮かぶユーウイトさんが微笑みながら可愛らしく首を傾けながら言ってくる。

 今回みたいな比較的安全な策が取れるなら特殊進化個体(モンスター)もいいのだけれど、そんな上手い話は早々ないだろうな。



「えぇ、でも内容によるってことで~」


「もちろんよ~。無理強いするつもりはないから大丈夫~」



 連絡する時はどうするのかと聞いたらオレなら他の人と違って神聖な気配がどこからでも辿れるから大丈夫だといわれてしまった。

 たぶん創造神の加護のせいだとは思うが、もしかしなくてもこれのせいで創造神達(・)にも覗かれているのだろうか……。



「じゃあまたねぇ~」


「あ、はい。またー」



 ユーウイトさんがのほほんと手を振って別れを告げる。

 思考がそれていたので慌てて返すとレーネさんもペコリと頭を下げ、アルはいつものように見惚れるほどの綺麗な一礼をしている。


 最後に1つ微笑んだ精霊様は溶けるように薄くなり、消えてしまった。



 結構唐突な出会いではあったけれど、祝福はもらえたし魔眼もゲットしたしでなんだかんだでいい出会いだったと思う。



「さて、じゃあLvあげに行きましょう!

 私のLv、がんがんあげちゃいますよー!」


【はい! 私とアルさんの祝福もありますからきっとすごく上がりますよ!

 もうワタリさんに敵はいなくなっちゃうくらい!】



 うずうずして堪らないオレの声に割り切ったというよりはその場の勢いでもうやけくそ気味になっているようなレーネさんが追従する。



「さぁ、しゅっぱーつ!」


「おー!」


「畏まりました」



 いつもはこんな大きな声を出さないレーネさんだけど、彼女の中で何かが振り切れているのだろう。もうほんとにやけくそ気味に大声を張り上げていた。







◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆








「22! ……23! おりゃー! 25!」


【あがりすぎですよぉぉぉぉぉぉ!】


「さすが我が主。ですが私のBaseLvもなかなかの上昇を見せております」


「おぉ~アルはいくつになったの~?」


「はい、さきほどBaseLvが42になりました」


「まじで!?」


【すごいです……。あ、でも私もまた1つ上がりました】



 次々と集まってくる魔物の大群を捌きつつも会話を交わす。

 アサルトウルフを狩っていたときの倍以上の数が殺到しているのには当然訳がある。


 森の奥深くで周囲の木々を切り倒して作られた即席の戦場の中心部には、切り倒した木で組み上げられた井桁式のキャンプファイヤーがピンク色の煙を立ち上らせている。

 これは魔誘香と呼ばれる魔物を引き寄せる効果がある薬を燃やしているのだ。

 普通は匂い袋のようにして使うのだが、広範囲に用いる場合はこうして燃やして煙を上げる。

 風の向きなどにもよるがこうするとかなり広い範囲に効果を及ぼす事が出来、こうして今も殺到するようになだれ込んでいる大量の魔物を引き寄せる事が出来る。


 アサルトウルフの時に使わなかったのは当然ながら魔物を指定して集める事ができるわけではないからだ。

 しかも今現在も雪崩のように集まってくる魔物を前にすると解体などもしている暇はないし、割と危険も多い。

 だが今回はその危険の部分を無視している。……いや、見ないようにしている。


 BaseLvがやっと普通に上がってくれるという事実がオレのテンションを上げまくり、通常ならもう少し慎重に行くべきところをノリと勢いだけで実行してしまったりした。

 だが結果として特に問題はなかった。

 確かに途切れることなく雪崩のように集まってくる魔物達ではあるが、集まってくるのはアサルトウルフ、グリズリー、フライングキャットなどなど何度も倒している魔物ばかりの上に一直線に向かってくるのだ。


 例えば氷の槍を1本投げるだけで片手の指の数では足りない数を倒す事が出来る。

 レーネさんの飛空斬でも同等以上の数を倒せるし、広範囲にばら撒けば押し寄せる波が一時的に止まる程度の被害を瞬時に出せる。


 近寄らせることはまずなく、近寄ってきてもアルがいる。

 アルの防御技術の前には360度の包囲であっても対応できてしまう。当然ながら盾1つでは無理なので障壁魔道具を駆使した防御法だ。

 でもその防御法もまだ1回も使われていない程度には捌けている。


 雑魚以外にもそこそこ強いヤツ――マッドベアーなど――が来てもオレ達の戦闘力があれば十分対応できる。

 索敵もアルがいるので問題ない。

 むしろすでに1,2度、マッドベアークラスの魔物が引き寄せられて来ているがレーネさんによって瞬殺されている。



「あははは! それそれー!」



 MPタンクにはまだまだMPがあるのでバカスカ魔法を放ちまくる。

 次々に押し寄せる魔物に吸い込まれるように後続の魔物ごと打ち倒し、そのまた後ろの魔物に踏み潰される前に被害が甚大な魔物の死骸は消滅していく。

 こうしてほとんど魔物の死骸が残る事はなく、魔法とスキルの連射によって予め作られた戦場は拡大していき、見通しもよくなっていく。

 そうなればますます射程が長いオレの独壇場になっていった。







◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆







 キャンプファイヤーから昇るピンクの煙が薄れてくる頃には押し寄せる魔物の量も激減し、ここで戦い続けるのも限界が見えてきた。



「終わりかなぁ~?」


【そうですね。さすがにスタミナ回復ポーションも残りが少なくなってきましたし、終わりですね】



 魔誘香の煙が完全に消え、その効力がなくなったのを確認してから近場の魔物を殲滅して解体作業に入る。

 とはいってもついさっき殲滅した分くらいしか死骸が残っていないのでそれほど時間が取られる事もない。


 引き寄せた魔物の分は度重なるスタンピードと魔法とスキルの威力により消滅してしまっている。

 実にもったいないとは思うがその分超効率で経験値を得ることが出来たので満足している。



「最終的に今日だけで私のBaseLvは37ですよ! 魔法使いも27まで上がりました!

 むふふふ~。祝福万歳ですね!」


【おめでとうございます、ワタリさん!】


「おめでとうございます、ワタリ様。さすがは我が主です」


「いやいや、ありがとう~。でも2人の祝福の分もあったから一気に上がったんだよ~。

 この祝福、PTに効果あるって言ってたしねぇ~」



 そう、シトポーの祝福はPTにも効果がある。

 ただしその効果は本人に対しての効果よりはかなり下がる。

 それでもないよりはあった方がずっとマシだし、その効果は重複する。

 レーネさんとアルも祝福を貰っているのでその効果は絶大だ。



「アルも大分上がったんでしょ? いくつになったの?」


「答えは是。BaseLv58になりました」


「……58?」


「答えは是。58にございます」


【あの……。アサルトウルフベースの特殊進化個体(モンスター)と戦う前の私が58ですのですごい上がり具合だと思います】


「レーネさんクラスになっちゃったんだー。さすがアル……」


「答えは否。経験や技量、スタイルの違いによりレーネ様には到底及びません」


【アルさんにはアルさんのスタイルがありますから、一概にはそうとはいえないです。

 現に私ではアルさんの防御を突破するのは難しいです】


【答えは否。レーネ様の本当の実力の前には私の防御は紙にも等しくございます】


【いえ……そんなことは……】



 アルの戦力評価にレーネさんは耳まで真っ赤だが、アルの評価は正しい。

 まぁアルの紙はただの紙ではないのだけれど。


 それにしてもアルのBaseLvの上がり具合が凄まじい。

 オレに授けられた祝福は特別らしいがそれでも経験値取得を阻害していた神聖な力を無効化して一般人と同等程度までに戻すのがやっとだった。

 だがPTへの効果はオレへの効果とは別物なので特別な分だけ高いのだろう。

 通常は微々たる量でしかないのが相応の効果を与えていると考えられる。その上アル自身への祝福の効果も相まってすごいことになっていると思われる。……いや、なっている。



「アルがこれだけ上がっているという事はレーネさんも結構上がっているんですよね?」


【はい、信じられないペースで上がりました。BaseLvは68。職はLv38にまでなっています。

 このLv帯は最高クラスの冒険者に匹敵するほどです】


「すご……」



 この超効率狩りを始める前はレーネさんのBaseLvは58だったのに10も上がっている。

 レーネさんクラスのLv帯になると必要経験値も馬鹿みたいに多いだろうから10上がるなんてのはとんでもないペースだといわざるを得ないだろう。


 だがこんな超効率狩りは当然ながら続けて出来るものではない。

 今回は魔物が溜まりやすい時期で、更にその時期に溜まった魔物を森の奥というとりわけ魔物の多い場所で文字通り殲滅したから出来た事だ。

 魔物が溜まりやすい時期とはいえ、ここまで溜まるまでには相当時間がかかる。同じようなことは当分できないだろう。


 それに戦闘が終わって大分冷静になったからだろう。正直このやり方はとてもじゃないがまともとは言えない。

 1歩間違えば危険すぎるのだ。

 脳内麻薬がどばどば出ていて正常な判断ができていなかったことは言うに及ばない。

 さすがに同じ事はもう少し対策をきちんと取らないとやらないだろう。


 絶対やらないと思わないところがこの超効率の魅力なのだろう。うーん、恐ろしい。



「さて、いつまでもここにいてもしょうがないし、一旦屋敷に帰りましょうか」


【はい!】


「畏まりました」



 溜まりに溜まったポイントで何をゲットしようかと広がる妄想にまた正常な判断が出来そうになさそうだなーと思いながら、帰還用魔道具(リリンの羽根)を起動した。



 ========



 名前:ワタリ・キリサキ BaseLv:37 性別:女 年齢:6 職業:魔法使いLv27

 装備:黒狼石の短剣 笹百合のミスリルの篭手[火耐Lv5 風耐Lv5] 鬼百合のミスリルの靴[麻痺耐Lv5 毒耐Lv5] 鈴蘭のミスリルの胸当て[鈍化耐Lv5 石化耐Lv5 幻覚耐Lv5] 黄百合のミスリルベルト[土耐Lv5 水耐Lv5] 月陽のネックレス 狐の木彫りのペンダント



 HP:200/200

 MP:144/144|(+7)[+7]

 筋力:35

 器用:35

 敏捷:65<+30>

 魔力:36<+1>

 回復力:49|[+14]

 運:5


 状態:健康


 所有:アル|(従者) ネーシャ|(奴隷) その他


 所持職業:町民Lv1 戦士Lv1 冒険者Lv1 治療師Lv12 魔法使いLv27


 残りポイント:117


 所持スキル

 成長率増加Lv10 スキルリセット ステータス還元

 ウイユベール共通語翻訳|(自動筆記翻訳付き) 鑑定 クラスチェンジ

 王族の不文律

 筋力増加Lv5 敏捷増加Lv5 器用増加Lv5

 魔力増加Lv5 回復力増加Lv5 HP増加Lv5 MP増加Lv10

 鈍器スキルLv1

 初級魔法:体力回復 毒回復 麻痺回復 石化回復

 初級魔法:風 初級魔法:水

 物理防御盾Lv2 魔法防御盾Lv1

 単独転移Lv1 複数転移Lv1 詠唱省略Lv3

 気配察知Lv1 アイテムボックス拡張Lv5 PT編成

今までの鬱憤を晴らすかのように凄まじい速度でのLvアップを果たしたワタリちゃん達一行。

祝福がなかったらこんなにLvは上がりません。

特にワタリちゃんにかけられた祝福は強力でアルとレーネさんの上がりっぷりはこの影響がかなり大きいです。


これで5章は終わりです。


次回予告

ネーシャを救った時には狭かった自身の手が届く範囲。

しかし今は違う。

エリザベートさんとワタリちゃんは計画を実行に移す。


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