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【完結】株式会社SETA異世界派遣部~眠れる魔王と勇者の子孫~  作者: BIRD
第3章

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第28話:属性変換魔法

「えーと、先にこっちを起動して…、こっちを被せる…っと」

研究室で、また新しい魔法実験をするエリシオ。

その肩の上に乗った仔猫ルシエが、興味深そうに眺めている。

エリシオの左手が金色の燐光を放ち始める。


最上級回復魔法(エクストラヒール)、解放待ち(スタンバイ)


それはまだ「溜め」の状態にしておいて、空いている右手に別の魔法を起動して被せる。


属性変換魔法(チェンジエレメント)、付与(プラス)


左手の燐光の色が変化した。

太陽光に似た金色から、蛍の光のような緑色へ。


「ほお、闇属性に変わりつつも回復性能を維持しておるな」

ルシエが感心したように言う。


「ザグレブ、いい?」

「はい」

自身の準備が整ったエリシオが声をかけると、5番目の従魔となった者が現れる。

カツサンドに始まり、好物のボア肉を使ったグルメの数々に陥落したザグレブだ。

彼は自らの腕にナイフで切り傷をつけて、その腕をエリシオに向ける。

エリシオはその傷口に緑の燐光を放つ片手をかざした。


闇属性回復魔法:夜空の癒し星(ルシフェラーゼ)


ザグレブの腕の傷を緑の燐光が覆った直後、傷は痕跡も残さず癒えた。


「驚いた。闇属性魔法で治療なんて初めて見たわ」

猫ロミュラが紫の瞳をまん丸にして言う。

「凄い、これなら大怪我しても安心ですね」

同じく目をまん丸にしたチビ黒竜クーロも言う。

「だからって安心して怪我したらダメだからね?」

白雪がクーロにツッコミを入れた。



「これは、ペンタイア家にとって福音となりそうだね」

エリシオから新複合魔法を見せられたクロスケは、嬉しそうな様子で微笑む。

彼は無属性のポーションの他に、属性のある魔法薬も作っている。

つまり、エリシオの魔法を込めた魔法薬を作る事も可能なのだ。


「魔法薬を作って届けに行こう」

クロスケの提案で魔法薬を作り、2人はカートル神殿へ向かった。


「ペンタイア家の人に使える魔法薬?」

「はい。昨日のポーションよりも回復効果は高い筈です」

「まだ間に合うか…? すぐ届けに行ってくれ」

話を聞いたペリアルは、一緒に話を聞いていた神官に命じた。

「新薬なので、俺とエリも付き添います」

ペンタイア家に向かう神官に、クロスケとエリシオも同行する。



ペンタイア家の屋敷は大きいが、古びていて使用人もそれほど多くはなかった。

壁にはツタが絡まり、広い庭はあちこち雑草が生えている。

(…真夜中に見たらお化け屋敷と間違えそう…)

エリシオはコッソリ思ったりした。


屋敷では、使用人たちが慌ただしく動き回っている。

神官が薬を持って来た事を伝えると、3人はすぐ屋敷の中に通された。


「ミランさん!」

神官が呼びかける。

大怪我を負っているその人物は、成人して間もない歳と思われる青年。

昨日のポーションでどうにか生き延びている状態だった。

最上級回復薬(エリクサー)に近い効果を持つポーションは、生命力を大幅に回復させるが、損傷した細胞を再生させる効果は低かった。

青年は苦しそうな呻き声を漏らしている。


「ペンタイア家の現当主だよ」

クロスケが小声でエリシオに教えてくれた。


「こちらが昨日のポーションを作った研究者の方々です」

神官が使用人たちに同行者を紹介する。

「新薬を持って来ました。すぐ飲ませてあげて下さい」

クロスケが瓶に入った魔法薬を差し出す。

「ありがとうございます!」

薬を手渡されたのは、青年の傍らにいた侍女と思われる女性。

彼女は青年に声をかけつつ慎重に抱き起して、その口に魔法薬を流し込んだ。


体内に入った魔法薬はすぐに効果を発動し、緑の燐光が体表に湧き出てくる。

直後、瀕死に近い怪我が急速に治癒してゆく。

体表面で目視出来る傷も、体内の内臓損傷も、全てが正常な状態に再生した。


「これは?!」

「闇属性の最上級回復魔法(エクストラヒール)を込めた魔法薬です」

「闇属性の…?」

「はい。光属性ではなく、ペンタイア家の方にも使える新薬です」

驚く女性や周囲の人々に、クロスケが落ち着いた口調で説明した。


「エバ…ここは…?」

青年が目を開けて、しばし視線を彷徨わせた後、侍女に気付いて問いかけた。

「お屋敷ですよ。ミラン様は領地の視察中に事故に遭われたのです」

エバと呼ばれた女性が答える。

「あちらの方が薬を下さって、命を助けて頂きました」

状況を教えられ、青年ミランはクロスケを見た。


「ありがとうございます。助けて頂いたお礼をさせて下さい」

ミランに言われ、クロスケは隣にいるエリシオに視線を向ける。

「今回の薬は新薬で、こちらの仲間が研究に協力してくれました」

クロスケは手柄を独り占めする気は無く、包み隠さず伝える。

「彼が開発した闇属性回復魔法を薬に使っています」

「闇属性回復魔法?!」

ミランは自身を救った薬について聞き、驚きの声を上げた。


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