第27話:呪われた遺伝子
「魔法の合成はこういう面白い使い方もあるぞ」
プルミエ王立学園・研究棟。
その1室、エリシオ専用の研究室でルシエが従魔術についてアドバイスする。
「白雪、この中に氷魔法を注いでくれぬか?」
「いいよ」
ルシエの頼みで白雪は実験用の水晶球に冷気を注ぎ込む。
水晶玉の中に、雪の結晶のようなキラキラしたものが現れた。
「エリ、この氷魔法に属性変換魔法を使ってみよ」
「OK」
エリシオが魔法を被せると、水晶玉の中で氷が炎に変換された。
「面白いね、これ。文化祭の出し物に使えそう」
「逆の属性に変える場合は魔力消費がかなり大きいが、エリは余裕だな」
全く疲れた様子の無いエリシオを見て、仔猫ルシエが笑うように目を細めた。
4体の使い魔に魔力を与え続けながら、魔力消費の多い魔法も使えてしまう。
それを右手首に嵌めた魔力抑制装備に抑えられながら出来る6歳児。
大人になったらどうなるのか、ルシエたちも研究棟メンバーも興味津々だ。
「エリ、今日もカートル神殿に行けるかい?」
チャスケの誘いがかかる。
最上級回復魔法が使えるエリシオは、時々お手伝いに呼ばれていた。
「行けるよ」
快諾して、チャスケと共にカートル神殿へ向かう。
ペリアル大神官は今日もハードワークだ。
「ありがとう、助かるよ」
クロスケから魔力回復ポーションを貰いつつ、ペリアルが言う。
「前より顔色が良くなりましたね」
「ああ、光の御使い様のおかげだよ」
クロスケとペリアルの会話を背後に聞きつつ、手伝いに入るチャスケとエリシオ。
「光の御使い?」
クロスケが首を傾げる。
「全てを癒す光の雨、あの奇跡を起こしておられる天使様だよ」
聞いたエリシオはギクッとするが、周囲に悟られないように平静を装った。
「大神官様、ペンタイア家の方が最上級回復薬を譲ってほしいそうです」
「む、困ったな。 先日使い切ってまだ次の納品はきていないのだが」
報せに来た神官とペリアルが対応に困っていると、クロスケがストレージから自作のポーションを出して差し出した。
「代わりにこれを。効果はほぼ同じですから」
「すまない。届けて来るよ」
一礼して、神官はクロスケ作の薬を手に走り去る。
「助かるといいのだが…」
「僕が治療しに行きましょうか?」
心配そうな大神官に、エリシオが提案した。
が、ペリアルは首を横に振る。
「ペンタイア家の一族には、回復魔法が効かないのだよ」
「え?!」
「呪いがかかっていて、光魔法は全てダメージになってしまうんだよ」
驚くエリシオに、クロスケが簡単に説明してくれた。
(光魔法がダメージになるって、ルシエたちと同じ種族なのかな?)
治療手伝いに戻りながら、エリシオは考える。
今はエリシオとの従魔契約の影響で光魔法や神聖魔法がダメージにならないが、ルシエはかつて聖女の浄化魔法で瀕死になったという。
ロミュラの話ではルシエを探す為に多くの魔族が街へ潜伏しているらしい。
ペンタイア家はその隠れ蓑になってる家かな? と思ったりもした。
「ペンタイア家は、代々聖女を生み出す家系だったの」
就寝時、ロミュラがカートルの歴史を語る。
1000年よりも更に以前、カートル国には聖女とその一族が繁栄していた。
ある時、一族の中に光属性を持たず闇属性だけを持つ子供が産まれる。
母親である聖女はその子を忌み嫌い、養子と言う形で家から追放した。
子供は自分を棄てた母親を恨み、後に暗殺者の手を借り殺害に至る。
惨殺された聖女の血は地面を赤く染め、呪いの言葉を吐く子供は完全に闇に堕ちた。
以来、ペンタイア家では聖女も光属性も産まれなくなり、光魔法がダメージとなる呪いを保有する一族と化した。
「その闇に堕ちた子供が、後に魔王様の眷属となったフォンセ。現在は聖王国に封印されているようね」
「真珠の揺り籠に封印されて、セイラが見張ってるよ」
フォンセの名はエリシオも歴史で習っていた。
封印については王族に伝わる資料を見て最近知った。
しかしその一族の事は今回初耳だ。
「フォンセが我の眷属になった理由は、闇属性の民が支配する世界を望んでの事だったな」
ルシエも封印前に会話したフォンセを思い出しつつ言う。
「闇属性、僕も持ってるけどプルミエでは別に嫌がられないね」
エリシオは言った。
転移者や全属性持ちがさほど珍しくないプルミエ王国では、闇属性への差別は無かった。




