おさんぽ大好き ①
ワンワン、ワンワン……。
おや、チロさん、大きな声で鳴いています。
五月家へ来たばかりの頃は、うんともすんとも言わない鳴かないワンコだったのに。
数ヶ月間、このまま一生鳴かないのかと、五月先生もめいとさんも心配するほどでした。
きっかけは庭を横切るニャンコでしたか。
おりゃあ、なーに勝手にひとんちに入ってきとん……いえいえ、チロさんは可愛らしい女の子ですから。
一緒に遊ぼうよとでも、誘っていたのでしょう。
ワンワン、ワンワン……。
ジタバタ、ジタバタ……。
「チロは何をそんなに鳴いているんだ?」
「五月様。申し訳ありません、うるさくしまして」
「ほらほら、抱っこしてあげような」
ウワ〜ン、ワン。
ジタバタ……。
「痛……。いや、休憩中だからかまわないが、ご近所さんには迷惑かもな」
「ほらチーちゃん、もう落ち着いてくださいませな」
ウニャ〜、ン、ワン。
うへ、ニャンコ?
「で、何を騒いでいたんだ?」
「それが、うっかりあの言葉を言ってしまったのです」
「あー、それで。なんて言っちゃったんだ?」
「それはでございますね……ごしょごしょ」
めいとさん、五月先生に耳打ちします。
「なるほど」
ウンニャ〜、ワンワン、ワン!
ジタバタ……。
「痛……」
〈あの言葉〉って、いったい何でしょう?
チロさんがこれほどになるのですから、よっぽどの言葉なのでしょうか。
「ほらほらチロ、ほね持って私の書斎に行こうな」
「お願いいたします」
「ボールも持っていくか?」
ウニャ〜ン、ワン!




