ワンコの新生活 ⑤
もう一夜が明けました。
ワンコの様子に変わりはありません。
ご飯は食べず、お水をなめる程度です。
鳴きもせず、かといって特別苦しがるわけでもなく、ハウスの中でずっと丸まっているだけです。
その背中がプルプル震えるので、五月先生もめいとさんも気が気でなりません。
「どうしましょう、五月様。このまま何も食べずにいたらガリガリに痩せて、弱って……ふぇ〜ん」
「おいおい、縁起でもないこと考えるな」
「わたくしが何度も箱の穴から指突っ込んだからでしょうか」
「そうかもな」
「ひぇっ!」
「しまいにゃ箱から出しちまうしな」
「ひぇっ!」
「そーとーストレスだったんじゃないか?」
「どうしましょう、どうしましょう、五月様ぁ〜」
「病院、連れて行こうか」
めいとさん、ワンコをそっと抱いて、バスタオルでくるんであげました。
「なんだか軽くなってます。お尻のお肉も落ちてるような……」
「そりゃそうだろ。二日も何も食べてないんだから」
「早く連れて行ってあげましょう、五月様」
「ん」
ヨシミ動物病院の獣医さんは、優しそうな女医さんです。
病院と併設して、ペットホテルもありました。
「初診ですね。今日はどうされましたか?」
「あのぉ……かくかくしかじか……」
「女の子ですね。お名前は?」
「わたくし、めいとと申します」
「いえ、そうではなくて、ワンちゃんのお名前……」
「あ……」
めいとさん、赤面です。
五月先生が説明しました。
「それが、まだ名前付けてないんです。血統書の名前はレナとなってますが……」
「チロです! この子の名前はチロちゃんですっ!」
「え……」
「え?」
めいとさん、突然名付けてしまいました。
五月先生とヨシミ先生は目が点です。