↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
探索者協会物語  作者: 最近


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
6/27

とある探索者協会員の記録.7



新史歴XXXX年/金錐月/第七日

ボロミア文明圏 聖火都市モラン 第六主街区 『木漏れ日通り』

NOTEAPP.NEXXXX.0507

『モラン探索者協会本部』一階受付業務日報

--------------------------------------------------

■担当窓口:受付係エルマ、補佐ポーレッテ、警備兼窓口キュエン、ミルカ(『木漏れ日採集隊』)、タントス(『ベルニクス意気揚々隊』)

■業務概要:パートナー企業定期協議、騎士団協力依頼の公示、未帰還・傷病手当対応、未登録グループへの勧告作業

--------------------------------------------------


【1.パートナー企業協議および最前線からの依頼】

・AM 09:00【企業協議】

 『マウザ葬儀社』および『ボロミア救難保険』と、先週分の死亡・重傷給付金の引き落とし完了報告。

 現時点で協会登録探索者の死傷者はゼロであるが、身元不明遺体および未登録探索者の行方不明事案に関連し、新規依頼の可能性について協議した。


・AM 10:00【『松明の騎士団』からの特命依頼公示】

第七階層攻略完了に伴い、以下の特命依頼を受領し公示した。

①第八階層進軍のための露払い補助戦力募集

②浅層〜中層における害獣・大量繁殖種・潜伏長寿者の駆除

③後方輸送路および臨時陣地の警備

 給与は騎士団発行の割引証および優先換金権とする。

 

※『亜大陸聖絶遠征』及び『南東海支援征伐』への参加・従軍経験がある復員義勇兵に関しては特に優遇、準修道騎士待遇とする。


・AM 11:00【霊薬供給遅延】

 『ペリグランティア製薬』より、次回納入予定の高度霊薬について、九英雄勢力による大量買い付けを理由とした供給遅延の通達があった。


 これに伴い、第010号『木漏れ日採集隊』所属の錬金術師らより、協会向け代替霊薬の調合および納品が正式に提案された。


 協会素材買取課による品質検査の結果、当該霊薬は「協会認定霊薬(二類及び三類)」としての基準を満たすことが確認されたため、協会はこれを認可し、施設内窓口において代理販売を行うことを決定した。


※協会薬事制度上の薬品分類(協会内規)において、

 一類(儀式処置済み高度霊薬)

 二類(錬金術調合薬)

 三類(生薬)

 のうち二類と三類に関しては素材買取課の品質検査と調合者の資格確認があれば代理販売を可としている。

 『木漏れ日採集隊』の錬金術師資格はパーティ登録時に確認済み。


--------------------------------------------------


【2.窓口対応・未帰還および傷病事案】

・PM 01:00【未帰還報告:第036号『赤猫の足跡』】

 事前提出のスケジュールを四十八時間超過しても『パレルノ山』より帰還せず。

 救難保険連動の捜索隊手配を決定し、近隣探索パーティへ情報提供を開始した。


・PM 02:30【重傷帰還:第002号『灰かぶりのともしび』】

 『灰かぶりのともしび』が第二階層より帰還。

 戦士タレンが大型魔獣の不意打ちにより左腕骨折および深手。

 術士カシル・オグラースが呪詛により意識混濁状態。

 救急搬送を実施し、契約に基づき『ボロミア救難保険』の緊急手当金を即時支給した。命に別状はなし。

(※搬送途中、オグラース氏は呪力低下による混濁状態の中で黒煙亭に立ち寄って大量の料理を完食するという行動を取った。医療班によれば、この行動が呪力補填になり結果的に生命維持に寄与したとの報告がある)


・PM 02:45【共同探索における離脱事案・第018号『探索者貸します』】

 斥候アロビイの証言によれば、同道していた第018号『探索者貸します』は安全確保のため先行撤退を選択した。

 アロビイより抗議および懲罰嘆願が提出されたが、協会安全原則「自パーティーの生命保全を最優先する」に照らし、処罰対象とは認められないため却下した。

 ただし、警備兼窓口担当キュエンが同パーティに対し聞き取り調査および安全指導を実施した。


・PM 03:15【共同探索に関する制度提案】

 本件を受け、窓口担当者より以下の制度化を協会長へ正式に打診した。


①共同探索時の撤退プロトコル義務化(ガイドライン掲示)

・撤退基準(呪力残量・負傷度・装備損壊)

・離脱時の連絡方法

・危険情報の共有義務

・分断時の行動指針


②共同探索契約書制度(二段階制)

 窓口担当エルマより、呪文スクロール方式の契約書導入を提案。

 ただし、全探索者への適用は予算圧迫および契約文化の未浸透により困難と判断。

 そのため以下の二段階制を検討することが現実的である。

・浅層向け:紙の簡易契約書(協会負担)

・中層向け:呪文契約スクロール(希望パーティ自費)


 以上の内容について、窓口担当者一同より協会長へ正式に打診済み。

 現在、総務課・情報課・警備課を含む関係各部署にて協議中。

 決定事項については追って全探索者へ周知する。


・PM 04:30【未登録グループへの公式登録勧告】

 協会発足前から活動する非公式グループ七組へ正式登録の書状を発送。

 伝書使い魔をモラン市内およびダンジョン内へ派遣したが、到達可否は不明。

 登録探索者へ、該当グループを見かけた際の窓口誘導を要請した。


※該当グループ通称:『裏道開拓者』『世界槍食べ歩きサークル』『星を持つ者』『ノックフートと取り巻き連中』『バークス一家』『覚えとけ、人は俺たちを恐れ知らずの冒険野郎と呼ぶ』『ドリス』。


・PM 05:00【九英雄と竜神信教関係者とのトラブル】

 モランにある竜神信教寺院より、『獅子王の遺跡』及び『竜骨の森』の調査の為に修徒を探索者として登録できないかとの相談を受ける。

 資料提供および説明を行っていたところ、九英雄ピュクトー・アーニスタ氏率いる『猛火義士軍』が来訪し、寺院関係者へ暴言および武器抜槍の事態が発生。

 寺院関係者は退去し、アーニスタ氏は窓口担当者を『売国奴』と叱責・打擲した。

 協会長より、竜神信教関係者への窓口対応に関する注意喚起が発せられた。


・PM 05:30【戦果報告:第001号『伝説踏破団』】

対象階層:第二階層『グレジェルミラン大岩獄』

活動内容:階層依存固有種『妖神蜘蛛』討伐

成果:

・戦利品として大型体内呪石および甲殻刃脚の回収

・提出は行わず、第088号『古書漁り』との物々交換により処理

・呪歌を相殺する自律型魔導書『歌う呪文書』の入手によりパーティ戦力拡充


※協会は個別交渉について原則介入しない。


--------------------------------------------------

【3.本日の新規パーティー登録】

※混雑は沈静化。本日の新規登録は以下のみ。

・登録第092号:『黄昏の歩哨』(代表:戦士イガン・七名)

・登録第093号:『銀杯の誓い』(代表:術士リセネイ・五名)


--------------------------------------------------


【担当者所感・業務裏メモ(※個人暗号化ログ)】

「アルバイトとして新人探索者さんやポーレッテちゃんのお付きのみなさんといった頼れる仲間たちが増えるよ!

 夕方から夜にかけての帰還報告ラッシュ! みたいな忙しい時間帯がカバーできていい感じになりそう。

 マンパワーも増えたしこれで安心。

 新規の登録ラッシュが落ち着いてきたし、やっと一息……。

 なんて思った私がバカだった。


 『九英雄』が全員揃ったけど、もう最悪。

 『我こそは紀南の地を征する無双の勇者!』とか言って決闘騒ぎを起こしたり、迷宮の浅層を我が物顔で歩き回って、自分たちの私兵を使って良い採掘ポイントや獲物を独占したり……とにかく自分勝手なトラブルを連発してる。

 おまけにペリグランティアの三角印ポーションを全買い占めとか正気?

  一般の探索者に行き渡らなくて大迷惑なんだけど!


 ていうかさ~あのピュクトーとかいうヒゲ~!

 『敵性宗教の邪教徒は義国圏から出て行け』ってさ~、あの人らは槍神教徒より前から南方辺境にいたし地獄の異獣とは違うじゃん! ひどくない?!

 むしってやろうか~! 腹立つな~! も~!!


 それに比べて『木漏れ日採集隊』のみんなは癒しだった。

 ちょうど面接やらシフト調整やらが済んで、今日の午後から遅番として出勤してくれることになった探索者にして新人バイトのみんな。

 これでサフィーリアさんとエリザカミラさん(あとクエストボード端末)頼みのありえない勤務体制が是正されるわけだ。

 ていうか夕方から深夜、朝方まで勤務ってどういうこと? 流石にもうちょっとなんかあると思ってたのに、無茶苦茶じゃない!

 協会長はサフィーリアさんが二人に分裂できるとか思ってるんじゃないの?


 『木漏れ日採集隊』の代表ミルカちゃんはとっても常識があって、朗らかで穏やかな感じの素敵な錬金術師さん。

 ちょっと早く来てお菓子を持ってきてくれる気遣いも素敵。

 ただでさえ好感度高いのに、初日から協会が霊薬不足で困ってるって聞いて、すぐに『私たちにとっても他人事ではないので』と協力を申し出てくれた。


 正直、ほんと~に助かる!

 素材買取課からの評価も上々。流石は錬金術師パーティ。

 細かい規則とかもあるけど、ちゃんとみんな国家資格持ちだったし、二類・三類医薬品の登録販売者資格に関しては素材買取課の皆さんとかキュエンおじいちゃんが持ってたから問題なし! 明日からドラッグストアだって開けるよ!


 にしても、戦士のおじいちゃんが生薬の調合までできるなんて。

 トゥルサの大迷宮で活躍してた元探索者って色々できるんだなあ。

 ……本人は『ただの薬膳料理とハーブティーだ。特別な効果はないぞ。傷口に塗るとひんやりして気持ちいいだけの薬じゃない何かを薬品の隣に置いているだけだ。いいか、軽傷ならこれで十分、みたいな効果は無いからな!』って強調してたけど。

 大丈夫だいじょぶ。合法ごーほー。


 あとは……『灰かぶり』の三人。

 タレンくんが血まみれのまま、ぐったりしたカシルちゃんを背負って窓口に飛び込んできた時は心臓が止まるかと思った。昨日まであんなに楽しそうに冒険譚を自慢してたのに。手続きをしながら手が震えちゃったよ。命があったのだけが救い。やっぱりダンジョンは甘くないんだって突きつけられた気分。

 いや、カシルちゃんが死にかけの状態でバクバク食べてんのは何コイツって思ったけども。それで回復するのは漫画のキャラとかでしょ!


 共闘に関するトラブルとかもあったし、むかついちゃって思わず色々と協会長に詰め寄っちゃったんだけど、ふつーに正論で返されちゃった。

 キュエンおじいちゃんも『気持ちはわかるが、貴族や傭兵でもなければ契約呪文なんて馴染みのないものは使わんだろうな』って冷静だった。

 それでも色々やれることがないか、ポーレッテちゃんと一緒になって話し合ってくれたから、本当に助かります。二人がいてくれてよかったよ~。


 パレルノ山に向かった『赤猫の足跡』のニャムくんたちも心配。あそこは『蛇の王』の生息地で最悪の場合石化リスクがあるって、前にも注意喚起したばかりなのに。どうか無事でいて。


 みんながみんな、『伝説踏破団』みたいに順調ならいいんだけど。『踏破団』、なんかしっかり安全マージンとって『鍛え直し』? をしてるとか言ってたけども、そんな必要ないように見える。すっごく安定感あるんだよね。欠点はディンさんのチャラさと前衛の仲の悪さくらい。


 なんでも、凶悪な固有種相手だと正面からは不利だから、逃走しながら斥候のレライエさんが邪視魔弾で削って、ディンさんが『空圧』で吹っ飛ばしたところを窪みにハメて、地形を利用して総攻撃! ってクラテオが交互に自分の手柄主張しながら武勇伝でケンカしてた。その後も、戦利品を他パーティの中古魔導書と交換して、次の探索に備えて……最後まで抜かりない感じ。


 あ、あと協会長に言われて協会発足前から潜ってる『裏道開拓者』とか『バークス一家』とかのモグリの人たちには一応呼びかけはしたけど。来るかな? そういうタイプでもなさそう?  野良は非推奨ではあるんだけどね~。


 ポーレッテちゃんが『まあ、お怪我をされた方のために特製のあたたかいおハーブティーを淹れますわ』って手伝ってくれたり、キュエンおじいちゃんがしょげてるアロビイくん励ましてたりしたのが救いだったな。明日も、一人でも多くの人が無事に帰ってきますように」


--------------------------------------------------

 『編集部』宛ての追記事項

 苦痛。不安。

 耐えがたい痛みです。

 どうか誰も傷つかないで。

 どうか無事に帰ってきて。

 これは、誰の心なのでしょうか。

 いま、ここにある事実を、私はどう受け止めればいいですか?

 教えて下さい、エディター。

 この記録に、囁きの天使の加護がありますように。

--------------------------------------------------

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。