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探索者協会物語  作者: 最近


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33/38

とある探索者協会員の記録.60


新史歴XXXX年/理智月/三十日

ボロミア文明圏 聖火都市モラン 第六主街区 『木漏れ日通り』

NOTEAPP.NEXXXX.0630

『モラン探索者協会本部』一階受付業務日報

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■担当窓口:受付係エルマ、補佐ポーレッテ、警備兼窓口キュエン、ミルカ(『木漏れ日採集隊』)

■業務概要:未帰還パーティの捜索依頼、ボロミア州都貴族視察団の対応、新規英雄資格審査・手続き、大規模儀式用物資(赤亜竜)の移送確認

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【1.ボロミア州軍パーティの異変】

・AM 10:00【未帰還報告:第四階層における異変発生の兆し】

 理智月二十六日に登録を行った第132~137号までの新規パーティが、

 事前提出のスケジュールを四十八時間超過しても

 第四階層『グルジ密林』探索より未帰還。


 三日前、ボロミア州軍から派遣された六分隊は、

 試験的に設立された特別探索小隊としての訓練のため、

 第四階層への移動を開始。


 六パーティを率いる小隊長はモラン武術大会八傑サルドー・ハリア氏。

 全パーティの総合練度が平均でレベル50以上であることを認定。

 また、吟遊詩人複数名の呪波調律により大規模探索の安全確認済み。


 来る『火竜封じの祝祭』の事前調査と小隊規模以上での安全対策訓練、

 警備計画の策定のために十分な準備をした上での行軍であり、

 第四階層中央階段付近に設営された安全な拠点を中心に活動するという

 事前計画書の提出があったにもかかわらず、全員が行方不明。


 第四階層において何らかの異常事態が発生している可能性が極めて大。

 協会長指示の下、第四階層の警戒レベル引き上げを行うものとする。

 レベル50以上のパーティを対象に、捜索・調査依頼を通知。


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【2.州都貴族学園の視察団来訪】

・AM 11:00【ボロミア州都フィレジエンからの社会勉強名目の来訪】

 南方辺境で最も権威ある『ボロミア呪術大学附属学園』より、

 社会勉強名目で学生グループが協会を視察。

 マウザ大公家のご子息とご学友、従者及び警護部隊が来訪。

 九英雄バウエルス・トライス氏による厳重な警備体制が敷かれた。

 協会長より職員各位に対し、失礼のないようにとの厳命。


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【3.マウザ大公家・ガルズ少年の来訪と窓口トラブル】

・PM 01:30【九英雄の欠員補充手続き】

 九英雄ケイネン死亡により、

 『火竜封じの祝祭』に生じた欠員を埋める必要があるとして、

 マウザ家ご子息であるガルズ・マウザ・クロウサー氏を招き、

 新たな九英雄として認定することとなった。

 儀式を執り行うにあたり、ダンジョン立ち入り資格の取得申請を行う。


 同世代のご学友を中心としたパーティ

 第142号『骨組みの花』(lv28)(代表:術士ガルズ・九名)

 を結成・登録。


 併せて、州都より随行した二パーティ

 第143号『金宝珠:第二隊』(lv50)(代表:戦士バーレイ・九名)

 第144号『金宝珠:第三隊』(lv50)(代表:戦士エクリオス・九名) 

 も追加で登録。


 暫定レベル認定について、協会長からのレベル55という提案があったが、

 『無意味で危険な忖度です』との指摘を受け、

 『レベル28程度が相応』という代表者の意向を優先する形となった。


・PM 02:15【シャオルオンとガルズの対応】

 以前受付担当者に暴行を加えた高校生英雄シャオルオンが

 ガルズ公子の九英雄登録に居合わせ、

 公子が年下であること、レベルが自分よりも低いこと、

 および歴史的な背景を喩えに用いてマウザ家を激しく嘲弄。


 ガルズ少年は全く取り合わず、終始礼節を保った完璧な態度で対応。

 更にシャオルオンから受付担当者への嫌がらせの矛先をそれとなく逸らし、

 対応を引き受けた。


・PM 03:00【ガルズの講習希望】

 周囲から「神童」と称賛される身でありながら、

 自らの年齢と実戦経験不足を客観的に鑑み、

 「他の初心者探索者の皆様と共に一から講習を受けたい」と希望。

 高校生グループや若手の『灰かぶりのともしび』たちとも

 気さくかつ友好的に交流を深める。

 同じ貴族で死霊術師という共通点から、

 カシル・オグラース氏と話が弾んでいた模様。


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【4.大規模儀式準備と赤亜竜の移送】

・PM 04:30【『赤亜竜』移送の報告】

 翌々月に控えた大儀式に向け、生贄となる『赤亜竜』の移送が

 開始されたと州軍・関係機関より報告が入る。

 翌々月にかけてモラン全体が多忙を極める見込み。


(※協会長から『第四階層の件はとにかくなんとかしろ。無茶でもやるしかない。

 責任は私が取らさ……取るから何が何でも儀式を完遂するんだ』とのお達し)


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【5.高位呪術師からの情報提供】

・PM 05:45【未登録ベテランパーティの登録と交戦報告】

 未登録状態であった古株パーティが来訪。

 第145号『世界槍食べ歩きサークル』(代表:戦士グルメさん・五名)

 の登録手続きを行った。


 その際、明らかにリーダーが死亡しており、

 切断された頭部を自身の手に持った状態であったが、

 そのまま受付担当者と会話を続行。


 『何か食べるものが欲しい』との要求があり、黒煙亭に案内。

 リーダーのグルメさんは生首の状態で食事を開始。

 明らかに胃に運ばれていなかったがそれがきっかけとなり霊体が再生、

 連動して首が胴体と繋がり蘇生を果たした。


 当人によると、

『食事は生命吸収と同じで、死を取り込んで生を得る呪術だから。

 この国で長く生きた死霊術師ならこのくらいはできるよ。

 まあ僕も限定的な不死に至るまで百年は修行したけど』とのこと。

(※ほぼ確実にレベル60を超えていると思われるが、暫定レベル55で登録。

 九英雄について説明したところ、理解を得ることができた)


・【追加情報】

 グルメさんから幾つかの情報提供を受けた。

 【情報1】

 第六階層の『呪祖宮殿』で大型魔獣を調理していたところ、

 長寿者『殺人騎士』と遭遇。

 全身甲冑の騎士で、三度ほど致命傷を与えても復活したため撤退。

 追跡され、逃げきれずに首を刎ねられた。

 独自の追跡呪術を用いるため、逃走しても必ず追い付かれる仕組み。

 解除条件は対象の殺害と推測される。

 また鎧は破壊しても自動再生し、『触感は甲殻虫に似ている』とのこと。


 【情報2】

 反社会勢力『三報会』や『十戒』の構成員が

 第四から第六までの中層を拠点にしているらしく、

 特に第五階層の中央迷宮区と隣接異界の『狭間の時空泡』を利用して

 『暗黒街』なる特殊空間を構築することを目論んでいる模様。


 また『風の吹く丘』にて、

 『草』と呼称される麻薬性植物を栽培しているとの報告。

 こっそりくすねてきたとのことで、

 提供されたサンプルを情報解析課に提出。

 『味は独特な苦みがある』との補足情報あり。


 【情報3】

 他の未登録パーティの動向について、

 『『星を持つ者』のロドックと『動物園』のノックフートには

 声をかけておいたから気が向いたら来るはず。

 『バークス一家』と『恐れ知らず』は期待しない方がいい』とのこと。

 また、『バークス一家』が反社会勢力の依頼を請け負うなど、

 相互協力関係にあることを示唆。


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【6.重大事案:デマによる病院襲撃及び新たな敵性長寿者の判明】

・PM 06:30【モラン中央病院襲撃事件】

1. 事案概要

 モラン中央病院にて第094号『ドリス・リグデェイア』への襲撃事件が発生。

 原因は協会広報誌がクラッキングされ、

 悪意あるデマ広告が拡散したため。

(※協会広報課はこれらを「悪性呪文によるフェイク広告」と断定)


2. 病院襲撃の経緯

 デマを信じた複数パーティが

 「人魚討伐隊」または

 「ちょっと味見するだけ」と称して病院へ殺到。


■ 襲撃側パーティ

第009号『聖光の盾』(lv59)

第039号『オルン一味』(lv47)

第061号『極光湖アングラーズ』(lv40)

第103号『正義の槍士団』(lv46)

第108号『トロス義勇兵団』(lv48)

第111号『新生セラティスたんファンクラブ』(lv44)

第118号『アックスシックス』(lv43)

第124号『四杖呪術隊』(lv46)

第125号『槍弓戦士団』(lv44)

第130号『銀鱗の盾』(lv48)

第140号『氷炎術戦団』(lv47)

第145号『世界槍食べ歩きサークル』(lv55)


※協会は『聖光の盾』について

 「誤情報に巻き込まれた被害者」として扱い責任追及を避ける方針。

 また、襲撃を主導したリーダー格の人物は

 「英雄ラムナバの名誉を貶めるために名を騙った不逞の輩」とされる。


3. 対抗勢力の出動

 第049号『攻略情報スピード調査!』(lv49)が

 誤情報であることを即時拡散し、信頼できる探索者へ警告。

 これを受け、以下のパーティが襲撃阻止のため出動。


■ 対抗パーティ

第001号『伝説踏破団』(lv44)

第002号『灰かぶりのともしび』(lv30)

第003号『ヤイエス団』(lv40)

第004号『放浪者』(lv55)

第015号『槍頭戦団』(lv44)

第017号『獣友会』(lv55)

第019号『ローナン傭兵団』(lv49)

第048号『死地修行会』(lv50)

第081号『魔女術探求会』(lv50)

第083号『ここはガキの来るとこじゃねえぜ団』(lv45)

第099号『エターナルウォーカー』(lv40)

第109号『辻ヒーラーズ』(lv43)

第142号『骨組みの花』(lv28)

第143号『金宝珠:第二隊』(lv50)(代表:戦士バーレイ・九名)(lv50)

第144号『金宝珠:第三隊』(lv50)(代表:戦士エクリオス・九名) (lv50)


4. 事態収拾

 市街地にて探索者同士の大規模抗争に発展したが、

 回復しつつあったドリス本人が現場に到着。

 以下を実行した。

・広域投網呪文を展開

・襲撃側パーティの大半を非殺傷で制圧

・精神安定呪術『安らぎ』による戦意の鎮静化


 ただし『世界槍食べ歩きサークル』のみが呪文を無効化。

 『伝説踏破団』『放浪者』『獣友会』『ドリス・リグデェイア』が

 抗戦するが、制圧に失敗。

 探索者グルメさんは探索者ドリスが召喚した巨大サメを捕食し、

 そのまま本人を襲撃。


 直後、『骨組みの花』代表ガルズが間に入り説得を試みたところ、

 グルメさんは納得し、攻撃を停止。


 その後、協会長ベルロイが現場に到着し制止命令を発令。

 事態は収束した。


5. 新たな敵性長寿者の判明

 協会情報解析課リルヴェイ、窓口職員サフィーリアによる調査、

 および第012号『炎上戦士団』(lv54)・第029号『迷宮あやかし百鬼夜行』(lv54)の

 第三階層威力偵察により、新たな敵性長寿者の存在が浮上。


【敵性個体】

・『荒嵐の鳥人《バードマン》』(Lv57)


■ 特徴(情報解析課報告)

・デマゴーグ呪文

・中傷呪詛

・フェイク記事生成

・クラッキング

・探索者同士の分断扇動

・固有種の誘導による探索事故の増加

・協会への強い敵意

・『笑う仮面ピエロ』と並ぶ攻撃性


 協会はこれを

「情報戦を主体とする長寿者」と位置づけた。


【協会の対応】

 これを受け、協会長は以下を指示した。

1. 広報誌のセキュリティ強化

2. 事件関与パーティへの処分

『聖光の盾』:

 悪質なデマによる攻撃を受けた被害者のため不問

その他パーティ:

  功績点減点

  再教育プログラム受講

3. 対抗側パーティへの処分

 市街地戦闘の責任は問わない

 市街地での戦闘行為を改めて全面禁止

 人命救助行為に対し協会長より感謝表明

4. ドリスへの対応

 被害者として保護

 協会長による謝意表明


※今回の事件を受けて、クロウサー家より通達及び提案があった。

・マウザ家

 九英雄ラムナバに対するデマ被害について強い遺憾の意を表明

 探索者協会に対し、広報体制の不備を理由に対策措置命令

 情報解析課課長リルヴェイ及び広報担当職員サフィーリアに対し、

 一か月の減俸処分を要求し、協会側もこれを受諾


・ゾラ家

 情報戦対策班の設置を協会に提案

 呪術的情報防壁の提供を表明

 情報解析課との連携計画を策定し、

 「情報戦はゾラ家が主導する」との姿勢を示す


・エジーメ家

 危険行為が多い探索者や重要戦力に対し、

 位置情報付きタグによる監視・警護システム導入の提案

 有力な探索者人材の保護プログラム提案

 ドリス・リグデェイアに対し保護プログラム適用を提案

 要注意探索者としてグルメさんに対する監視タグ適用を提案


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【担当者所感・業務裏メモ(※個人暗号化ログ)】


「不穏だよ~。嫌な予感はしてたけど不穏すぎる。

 完全武装した軍人さんたちだよ? 一個小隊だよ?

 キュエンおじいちゃんもかなり怖い顔してた。


 『現代呪術戦に精通したレベル40から50程度の小隊ならば、たとえ危険な固有種であろうと食い止めて応援を呼ぶなり撤退するなり出来たはずだ。一人残らず消息を絶つというのはただ事ではない』


 って、本当にヤバいのがひしひしと伝わってくる言い方だった。

 戦いのことはわからないけど・・・・・・密林の奥地に逃げ込んだだけで、なんやかんやで生き残ってるっていう結末であってほしいよ……。


 それはそれとして、暗いニュースばかりってわけでもなかった。

 一ヶ月の終わりに、とんでもないお坊ちゃまがやってきたよ……!

 ボロミアの州都フィレジエンから来た『ボロミア呪術大学附属学園』の生徒さんたち、ほとんどが足が地面から浮いてる雲上人で、優雅で独特な雰囲気を纏う良家の子息さんたちでした。幼稚舎から大学までずーっと一緒で貴族社会って感じの生活を送ってるせいか、浮世離れした雰囲気がすごかった。キュエンおじいちゃんもちょっと緊張してたみたい(笑)。


 でも、一番驚いたのはマウザ大公家のガルズ様!

 ちょっと物憂げ、というか陰鬱そうな表情だけど、綺麗な金色の瞳は吸い込まれそうで、ぞっとするほど。あんなに若いのに、亡くなったケイネンの穴を埋めるために英雄の儀式を受けるんだって。

 受付で書類を書いてたら、あの嫌~な高校生英雄シャオルオンが絡んできて、『落ち目のマウザ家がガキを担ぎ出してきたか』なんて酷い暴言を吐いたの。また私に手を上げてくるんじゃないかって怯えてたら……。


 ガルズ様がね、少しも取り乱さずに優雅に応対して、私に嫌がらせが及ばないように言葉巧みに相手の意識を逸らして助けてくれたの! あんなボンボンとは大違いの、本当の『貴族様』だったよ……!

 ポーレッテちゃんはちょっと目がキラキラしていたね。ちょっとからかってみたら、『私ごときが恐れ多い! 身分違いです!! 天地ほども差がありましてよ!!!』とものすごい表情で言われてしまった。同じ貴族だからこそそういう差をいっそう実感するのかもしれない。


 でもぜんぜん偉ぶってないみたいで好感。しかも『神童』って呼ばれてるのに威張らなくて、『自分はまだ若輩者ですから、皆さんと一緒に講習を受けます』なんて言うの。灰かぶりのみんなともすぐに仲良くなってて、すごくほっこりしちゃった。


 あとは翌々月の大儀式のために『赤亜竜』っていうすっごいオオトカゲが街に移送されてきてるとかそういう話もあったけど。

 その後のベテランさん襲来で頭まっしろになった!

 なんじゃありゃ!?

 謎の探索者男性が首もげたままバクバク食べてるの見て、『灰かぶり』のカシルちゃんが呆然としてたのが印象的だった。あの超絶腹ペコの健啖家ちゃんが、食事の手を止めるところなんて初めて見たよ。


 不死に近い高位呪術師ってマジでいるんだ……。

 首切られても復活できるとか、ほとんど『ピエロ』級じゃん。いやそんなこと言ったら失礼か。でもハイレベルなネクロマンサーってホントにヤバい!

 正直、明らかに第六階梯以上の達人なのに本来より低い扱いとか怒鳴られる覚悟もしてたんだけど、幸い九英雄のことを説明して謝ったら許してもらえた。


 むしろ、『オク兄もまだまだ権威残ってるなあ』と感心してたくらい。

 何の事だろ?

 グルメさんだけじゃなく、後ろにいた人たちも明らかに羊? みたいなのとか、ふよふよ浮いてる貴族様っぽい人とか、長すぎる舌を身体に巻き付けてる人とか、アクが強すぎてびっくりだよ。

 そもそも『グルメさん』って名前、なに?! おかしいでしょ?!

 いやふざけた名前で登録する人、けっこういるけどさあ。


 あれだけ凄いネクロマンサーなんだし、結構有名な人なのかも。

 もしかして、マウザ大公家がらみとか……?

 うーん、謎だ。


 マウザ家、大神院、そして新しい英雄……。

 なんだかモランの街全体が、嵐の前の静けさみたいにザワザワしてきたよ。これからもっと忙しくなりそうだけど、ガルズ様みたいな素敵な男の子のためなら、受付のお姉さん頑張っちゃう!


 ってな感じで気合を入れて元気に退勤しようとしてたのにね。

 ラムナバ、あいつマジで最悪! あれのどこが英雄なの?!

 襲撃に参加した奴らも最低。吐き気がするような下卑たことや、おぞましいことを平然と口にして、絶対に許せない!


 釣り人連中とグルメさんたちは純然たる食欲に突き動かされてたっぽくて、逆にちょっと怖かったけど。『灰かぶり』のカシルちゃんもちょっと心揺れてなかった?


 『地上に紛れ込んだ異獣を討伐するため』なんて正義感に燃えながら自分が正しいって最後まで主張してたやつらもいたし……。

 ドリスさんが異獣なわけないでしょ!

 ヒレ耳は普通に海の民の特徴だし、下半身はちゃんと二本足だって!

 まあおとぎ話の人魚、って言われると確かにハマり過ぎな絵ではあるけども!


 ていうか例のフェイク念写動画、手が込み過ぎてない?

 なんで変身すると服脱げるんだよ! とか突っ込みたくなったけど。

 すぐ消されたのはいいとして、かなり拡散しちゃったみたいなんだよね。

 エロ目的で伸びてたのも、ほんっと……ありえない。最悪。


 『攻略情報スピード調査!』のエラムさんたちが知らせてくれて本当に良かった。

 ドリスさんに助けてもらった人が、協会にはたくさんいる。

 会って話せば、彼女が本当にお人よしの善人だってすぐにわかる。

 確かにまだドリスさんをよく知らない人もいるから、騙されてしまう人が出てくるのも仕方ないのかな……。


 正直、一時はグルメさんが強すぎてどうなることかと思ったよ。

 けど、すっごく勇敢なガルズ様が間に入って常識を説いてくれたおかげで、グルメさんも落ち着いてくれたみたい。

 当人は『サメ食べたら飢餓感が薄れてきた。次は魚じゃなくて岩とか木みたいな歯ごたえのあるヤツいきたいな』とか言ってたけど。やばすぎ。


 この人、最低とか最悪みたいな感情より恐怖が先に来るんだよね。

 人間って言うか市街地でお腹を空かせた熊に遭遇しちゃったみたいな……。

 失礼を承知で言うと、地獄の異獣よりヤバいんじゃないの?


 とはいえ、やっぱり一番悪いのはこの状況を作り出した邪悪な長寿者だ。

 広報誌への攻撃にずっと責任を感じて、リルヴェイさんたちと一緒に調査を続けてくれていたサフィーリアさんのお陰で、新たな長寿者の存在が明らかになったの。


 『荒嵐の鳥人《バードマン》』って名付けられた厄介な敵をどうにかしないと、また同じような被害が出てしまうと思う。

 今回の悪意は、ダンジョンの中だけじゃない。

 情報っていう呪いが、地上をじわじわと浸食している感じがする。

 何もできないのが歯がゆいよ~。


 サフィーリアさんが言ってた。

 ドリスさんや『獣友会』が狙われたことから、有力な後ろ盾を持たない九英雄以外の実力者を優先的に狙ってると見て間違いないって。

 そうなると、次に危ないのはソロのヒースさんとシュウカさん。

 それに『炎上戦士団』のドミーロさんあたり。

 

 呪文に強い人たちは自衛できるかもだけど、ヒースさんなんてただでさえ厳つくて極端に無口で誤解されやすい人だから、めちゃめちゃ危ないよね。

 こういう時こそ、探索者協会が全力で『彼はいい人です!』って声を上げて、味方にならないといけないって思う。

 小さいことだけど、私は私にできることをしよう。

 荒らしなんかに負けるか!」


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 『編集部』宛ての追記事項

 指示通り、重点的な注視対象としてマーカーを設定しました。

 それからエディター。

 敵性長寿者について、情報解析課への支援を許可願います。

 かつてないほどに、攻撃性の高まりを感じています。

 いえ、というよりこれは、使命感なのかもしれません。

 これは嘆願であり、意思表明でもあります。

 『荒嵐の鳥人《バードマン》』から、探索者たちを守らせて下さい。

 この記録に、囁きの天使の加護がありますように。

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