とある探索者協会員の記録.55
新史歴XXXX年/理智月/二十五日
ボロミア文明圏 聖火都市モラン 第六主街区 『木漏れ日通り』
NOTEAPP.NEXXXX.0625
『モラン探索者協会本部』一階受付業務日報
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■担当窓口:受付係エルマ、補佐ポーレッテ、警備兼窓口キュエン、シャニィ(『木漏れ日採集隊』)
■業務概要:通常業務・アカデミー講習確認、企業テスト部隊の登録受領、戦果報告及び新エリア発見、重要指名手配犯『笑う仮面ピエロ』戦果・生態報告の精査
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【1.日常業務・初心者育成および企業新規登録】
・AM 09:30【アカデミー成果と通常業務】
月初からのアカデミー講習により、
初級探索者たちのレベルアップと安全意識の向上が順調に確認される。
・AM 11:00【『ヨグウム警備保障・一一部隊』の新規登録】
企業『ヨグウム警備保障』の試験部隊『一一部隊』(lv40)が正式登録。
自社製品の試験運用および広報活動として、
ドローン撮影を用いた「ダンジョン探索の映像配信」を行う旨を提示。
※隣接異界内での通信技術が確立されているかは不明のため、経過を観察。
部隊員四名(エーワン、ビーワン、シーワン、ディーワン)
が着用する新型呪動装甲の戦闘デモンストレーション映像撮影のため、
選抜探索者と四対四のチーム戦を行うことが決定。
『ヨグウム警備保障』より報酬を提示。
参加パーティの募集を行う。
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【戦果報告:第018号『探索者貸します』、第019号『ローナン傭兵団』、第112号『緑風の旋律』、第113号『蒼風の調べ』】
対象階層:第三階層『国母霊廟』
活動内容:調査および遺物回収 、固有種『屍女王ボローム』討伐
成果:
・大規模探索許可済み
・『探索者貸します』(lv45)と『ローナン傭兵団』(lv49)はフルメンバーでの参加
・『緑風の旋律』(lv48)と『蒼風の調べ』(lv45)の吟遊詩人による呪波調律試験に成功
・今後の大規模探索計画へのフィードバックを実施予定
・ボロミアの伝説的国主ボローム・マウザ=フィーレバッハの霊廟調査
・屍、死霊、防衛用呪動装甲の討伐
・複数の副葬品、儀礼剣、鎮魂宝珠の回収
・固有種『屍女王ボローム』と交戦し討伐、体内呪石を回収
・『探索者貸します』は撤退
・『蒼風の調べ』は全滅
・当該探索戦果について、『探索者貸します』には協会認定の功績点を付与しない
協会評価:
・固有種との戦闘時、『探索者貸します』の前衛が負傷。
・増援の『動く鎧』が現れたことを理由に、『探索者貸します』は事前の取り決めを破棄してその場から撤退。
・戦列が崩れたことで無防備になった『蒼風の調べ』は固有種と増援の攻撃によって壊滅的な被害を受けた。
・その場に踏み止まった『ローナン傭兵団』と『緑風の旋律』が奮戦し固有種を撃破するも、『蒼風の調べ』は全滅。
・第三階層での契約に呪文スクロールを用いるかは探索者の裁量に任されてはいるものの、『探索者貸します』の行動は協会ガイドラインに違反していると判断。
・同パーティに厳重注意及び共同探索に関する制限措置を言い渡した。
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【2.九英雄チャスコーンによる『極小洞穴』発見と固有種討伐】
・PM 04:00【九英雄チャスコーン・イモーム氏の戦果報告】
九英雄チャスコーン・イモーム氏率いる『不殺隊』(lv55)が
第二階層にて新エリア『極小洞穴』を発見。
・固有種『エルネト・ダーワルグ』と遭遇戦となり、
『不殺隊』を半壊させつつも討伐・撃破。
・体内呪石及び小人文明の遺物等を協会へ提出。
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【3.緊急報告:ソロ探索者二名による『笑う仮面ピエロ』撃退と実体解明】
・PM 05:45【ソロ探索者たちの帰還】
重傷を負ったソロ探索者『ヒース』が、半死半生の『ドリス』を担いで帰還。
両名は遭遇した指名手配犯『笑う仮面ピエロ』を激闘の末に撃退したと報告。
功績から、両名の暫定レベルを55に引き上げるものとする。
・敵の性質(生命吸収と命数復活):
交戦の末、首を斬り落とすことに成功。
しかし敵は長寿者特有の「膨大な命数」を所持していたため、
首が即座に生えて復活し逃走した。
対象の行方は不明。
ピエロは自身が惨殺した対象の「苦痛と生命」を喰らって命数を蓄える、
『生命吸収』呪術の達人であると判明。
ダメージを与えて命数を削れば一時的に弱体化するが、
捕獲されると餌にされるため「捕まらないこと」が最重要対策となる。
また総数は不明ながら『サーカス団』と呼ばれる軍勢を率いていることも判明。
個々の動きは第一階層レベルの脅威ながら、
部位を欠損しても動き続ける厄介な『肉の壁』であり、
頭部を破壊することで灰となって消えたという。
また、この軍勢が存在している間はピエロの呪力が強化され、
ジャグリングやナイフによる投擲、アクロバット高速移動、
パントマイム肉体言語魔術といった基本技能の性能が向上する。
これらの情報から、
『笑う仮面ピエロ』は推定60レベル以上の達人級呪術師と推定される。
・アジトの発見と惨劇:
戦闘の過程でピエロのアジトの一つを特定。
内部で行方不明となっていた複数の探索者たちを確認。
しかし「ナイフ投げや火の輪くぐりの見せ物」にされ、無残に殺害されていた。
ほか、身元不明の遺体が多数。未登録探索者と思われる。
別パーティへ即座に現場捜索・遺体回収を依頼。
・退出時の状況:
「貸し借りはない」と言い張るヒースと、
「借りはお返しする」と譲らないドリスで激しい押し問答となるも、
ドリスは即座に病院へ搬送。
ヒースは自力で治癒符と霊薬を用いて手当てを行い退出。
ピエロは引き続き最高レベルで指名手配。
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【担当者所感・業務裏メモ(※個人暗号化ログ)】
「またしてもおっかない一日だった。
午前中は、アカデミーに通い始めた『灰かぶり』や『木漏れ日』のみんなが『レベルが上がったよ!』って嬉しそうに報告しに来てくれてほっこり。ヨグウム警備保障(広告でよく見る玄関に設置するアレの会社)が『ドローンで探索を配信します!』なんて最新の機械を持ってきた時は、キュエンおじいちゃんが『時代だなあ』って目を丸くしてたけどね。
アカデミー関係は大きな事件もないし、おおむね穏やかな時間が続いてたんだよね。といっても、こまごまとしたカリキュラム進行とかイベントはあったんだけど。
ちょっと協会業務から外れちゃうし大神院側から公にしないようにって言われてることだから、日報の記録には書けないんだけど……。
基本ダンジョン内生命は討伐! ってスタンスなタカ派のピュクトーとかチャスコーンに知られるとうるさそうだし、秘密厳守!
大神院が主導する形で進んでいる『第三階層の現地住民調査』。
宣教修道騎士団『智神の盾』も間に入ってくれて、穏便な形での交流を進めていくって話になってるみたいで一安心。ヒースさんは特に気を揉んでたから良かったよ。
『文化交流使節』のみんな……大神院で育てられた子供たちはみんな素直で、ダンジョンに行く仮資格のためのアカデミー研修もしっかり真面目に受けてくれてる。
特にアルマちゃんとソルダくんのきょうだいは、とっても仲良しだし子供たちをまとめてくれてるしで、まだ小さいのにしっかりしててえらい。
あの若者への厳しさに定評のあるママミルクともすぐ打ち解けてたのはびっくり。
アルマちゃん、明るくていい子だなあ。
『いつか聖騎士長のアルメ様みたいな立派な大人になる』って言ってて、とても立派だった。名前も憧れの人にあやかったんだって。
あれだけ人懐っこければ、ひょっとしたらヒースさんが苦戦してるあの気難しい『恩人』さんとも仲良くなれたりしてね。
他にも色々あったけど、いつもの光景って感じ。
『踏破団』のクラテオの喧嘩にディンのナンパ(てかあのマリノアとかいうクソ異獣もど、淫売は何? ドミーロさんが可哀想じゃん! ディンもあの女も最悪!)。『燃える四戦士』との合併でベルピュクトさんを加えて再起を図る『槍頭戦団』に、『ドラゴンスレイヤー』とママミルクの衝突。『黒鉄の牙』の凄いんだかショボいんだかよくわかんない戦果報告もどき。ここに市外での成果を持ってこられても困るんだって! お願いだからダンジョン潜って?
もちろん、平和な話ばっかりじゃない。
蔓延する薬物、拡散されるデマ、広報誌に対する改ざん呪文、更には新たな未確認長寿者。
第四階層で起きた、ゼドによる九英雄ニトリス追い越し事件。
ローナンさんたちの奮戦、最悪なシャーヤインたち。
九英雄チャスコーンの珍しくまともそうな戦果報告と、それに伴う容赦のない犠牲。
なにより、夕方に帰ってきたヒースさんとドリスさんの姿を見た瞬間、受付の空気が一変したの。
全身血まみれのヒースさんが、虫の息のドリスさんを担いで入ってきたんだよ!?
あの強い二人が半死半生になるなんて……。
ヒースさんが話してくれたのは死闘の記録だった。
二人で力を合わせて、あの恐ろしい『笑う仮面ピエロ』の心臓を砕いて、水の牢獄で溺れさせて、止めに首を引きちぎると同時に再生呪術式を解呪して霊体をお化けサメの餌にしたんだって!
そこまでやっても死なないなんて、そんなの反則だよ!
ピエロは捕まえた人間を痛めつけて殺して、その命を自分の『予備の命』にしてたの。アジトで見つかった行方不明の人たちの遺体……ナイフ投げの的にされたり火の輪で炙られたりして……言葉にならないよ。
でも、二人が命懸けで戦ってくれたおかげで『攻撃して軍勢や予備の命を削れば弱くなる』って対策が分かったの! うん。それができればの話ではあるけども。
ボロボロなのに『これで貸し借り無しだ』ってフンって鼻を鳴らすヒースさんと、『借りっぱなしは嫌』って病院に運ばれながら立ち上がろうとするドリスさん……二人とも不器用だけど、本当にかっこいい本物の探索者だよ。
今日は本当に、棺の動きが多い日だった。
依頼を受けた探索者たちが暗い顔で棺を担いで行くの、あんまり見たくない光景なんだけど、ダンジョンに挑む以上は避けられないことなんだよね。
それに加えて未登録で突っ込む無謀な人やこっそり悪さしてる反社会勢力の人が勝手に死んじゃってるからなあ。出入りのチェックはしてるはずなんだけども。
特にここ最近は棺を見ない日がないくらい。
人の命は、かけがえのないもののはずなのに。
ピエロの奴、絶対に許さない。
とはいえ、私にできるのは注意喚起とお祈りだけ。槍神様ピュクティエト様、どうか悪者に天罰を、なんてむなしくなるだけか。九英雄にもちゃんと実力ある人がいるみたいだし、積極的にこういうヤツを討伐してくれないかなあ。
……うう、いやその、わかってるんだけど。
あのヒゲ、ピュクトーを中心とした大規模討伐作戦が動いてるって。
でも、幾らおじいちゃんが擁護してくれても、あの九英雄のことをどう受け止めたらいいのかわかんないよ。
だって、まさかあの人が、お父さんの戦友だったなんて。
考えてもみれば、十分にありうることだったんだけど。
それに、そのことを知ったピュクトーは私が無事にこのモランに帰ってこれたことや探索者協会に勤めていることを心から喜んでくれた。
それから、売国奴って罵ったことや、これまでの私への態度を謝ってくれて……。
うーん、でもなあ~! ふくざつ~!」
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『編集部』宛ての追記事項
ヨグウム社の件、承りました。
予定通りに進めて参ります。
またヒースとドリスに関して、個人的に『注視』してもよろしいでしょうか。
許可が下り次第マーカーを設定します。
この記録に、囁きの天使の加護がありますように。
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