とある探索者協会員の記録.40
新史歴XXXX年/理智月/十日
ボロミア文明圏 聖火都市モラン 第六主街区 『木漏れ日通り』
NOTEAPP.NEXXXX.0610
『モラン探索者協会本部』一階受付業務日報
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■担当窓口:受付係エルマ、補佐ポーレッテ、警備兼窓口キュエン、マルク(『ベルニクス意気揚々隊』)
■業務概要:館内暴行・違法薬物事件の対応、違法集団撃滅と緊急避難認定、九英雄表彰の政治的処置、失踪事案の受付
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【1.治安トラブル対応】
・AM 09:00【『異獣ぶっ殺し隊』による暴行および薬物疑惑】
『異獣ぶっ殺し隊』(lv43)が協会本部クエストボード前にて
『賢人眼鏡団』(lv40)へ暴行を加える事件が発生。
警備担当者バーグ、キュエン、
ポーレッテ以下『ベルニクス意気揚々隊』(lv45)により制圧。
『異獣ぶっ殺し隊』数名から基準値を超える霊薬反応を検出。
ダンジョン内に出回る「違法薬物」の使用疑惑として警察へ引き渡し。
・AM 11:00【『ボロミア槍術連盟』による不法呪詛事案】
『ボロミア槍術連盟』(lv58)が『ローナン傭兵団』(lv49)への警告呪詛と称し、
相手側の治療士を負傷させる事件が発生。
即座に呪詛の解除治療を行い、
『ボロミア槍術連盟』に対し厳重処分を通告。
※協会長判断により厳重処分は撤回。注意勧告のみとする。
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【2.探索者間の技術交流の提案】
・PM 02:00【魔女術探求会による呪術講義及び勉強会の提案】
第081号『魔女術探求会』(lv50)より、
初心者育成施策に加えて、
中級探索者向けの技術交流会・勉強会の開催を協会へ提案。
代表ウィッチクラフツマンは、
自身を講師とした以下の講義を希望している。
『地母神と魔女術:大地や月を神と見なす西方異教思想』
『あやかしと付喪神:自然や器物が意識を獲得する東方異教思想』
『今さら聞けない新常識:仮想使い魔ってナニ?』
『誰でもわかる仮想使い魔運用と人形自律制御』
『実践! 民生用・警備用人形にダンジョンで戦士や斥候をやってもらおう!』
『大神院のファザーシステム『啓示告白』と聖性AIってどう違うの?』
『フィジカルAIと包摂アーキテクチャ:ヨグウムドローンから見る目的志向』
またウィッチクラフツマンより、
「講義一コマにつき、どの程度まで授業料を徴収してよいか」
との質問があった。
協会としては「営利目的の過度な料金設定」を避ける必要がある。
そのため、協会長及び総務課と協議の上で返答することとした。
ただし、現時点の協会長判断としては
中級探索者の技術底上げは、階層事故の減少につながることから、
協会は開催を許可し、後援名義を付与する方針。
また、協会が後援名義を付与する場合、以下を条件とする。
・参加者名簿の提出
・講義資料の事前確認
・協会職員の立ち会い
・料金の透明化(掲示義務)
・別講座、団体等への勧誘禁止
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【3.緊急事案:『木漏れ日採集隊』襲撃と『灰かぶりのともしび』の正当防衛】
・PM 03:45【『鉄の血潮』の討伐】
『木漏れ日採集隊』(lv28)、
『灰かぶりのともしび』(lv30)、
『三男坊の団』(lv31)が帰還。
『鉄の血潮』(lv40)の代表バラクの遺体について、事情聴取を実施。
【経緯】
『木漏れ日採集隊』が協力関係にあった『三男坊の団』に呼び出され、
『獅子王の遺跡』奥地へ向かったところ、
待ち伏せていた『鉄の血潮』の襲撃を受ける。
『三男坊の団』はメンバーを人質に取られ、協力を強制されていた。
【打開】
『灰かぶりのともしび』の斥候アロビイが隠密行動により人質を救出。
直後に灰かぶりの三名が『鉄の血潮』と交戦を開始。
『木漏れ日採集隊』と『三男坊の団』も『灰かぶりのともしび』に加勢。
【結果】
『灰かぶりのともしび』が『鉄の血潮』の戦士バラクを討伐(殺害)。
他メンバーは負傷して逃走。
三パーティは重軽傷を負うも、死傷者はなし。
【協会裁定】
証言と現場状況に基づき、灰かぶりの行為を協会規定の「緊急避難」と認定。
大神院や警察の事情聴取にも応じる姿勢を確認。
『鉄の血潮』に関しては解散・除籍扱いとし、
元メンバーは規定に従い優先捕縛及び討伐対象とする。
なおこの対応については探索者間の私闘ではなく、異獣討伐扱いとする。
『三男坊の団』に関しては事情聴取継続中だが、
人質の命を優先したこと、救出後の戦闘で加勢したことを踏まえ、
免責とする方針。
代表のイワンは『木漏れ日採集隊』への謝罪と賠償を行いたいとの意向。
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【4.九英雄の動向および敵国懲罰部隊の被害】
・PM 04:30【九英雄ラムナバの表彰決定】
『聖光の盾』(lv55)が持ち帰った未確認長寿者の遺体を確認。
死霊術検死にかけたところ、無関係の行方不明者と判明。
【政治的判断】
しかしマウザ家の『詳細な追加調査』により鑑定結果が覆され、
「賞金首討伐の功績」として処理。
ラムナバ・エルボロム・シャザンを「九英雄筆頭」と認定し、
その功績を称えて表彰することが決定された。
・PM 05:30【『銀の轍』の消失と『笑う仮面ピエロ』の目撃報告】
第二階層で『銀の轍』(lv42)が消息を絶つ。
共同探索を行っていた『明日への灯火』(lv39)の報告によれば、
突如『笑う仮面ピエロ』が出現した直後、
戦士ハルートを含む『銀の轍』の六名が一瞬で消失したとのこと。
生存は絶望的。
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【5.新規登録対応】
・PM 06:00【新規登録】
新規登録パーティ二組を案内した。
『連帯』、『国際呪術連』、『ボロミア呪術師協会』、『義国吟遊詩人協会』
からの紹介登録。簡易講習のためノルアカデミー担当者に引継ぎ。
翌日より、段階的に広域戦闘試験を実施予定。
第112号『緑風の旋律』(lv48)(代表:吟遊詩人グレイディナ・九名)
第113号『蒼風の調べ』(lv45)(代表:吟遊詩人アエディマ・三名)
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【6.流言飛語・誹謗中傷の確認】
・PM 06:30【中傷呪詛による攻撃被害】
アストラルネット上で、一部の協会職員及び所属探索者に対し、
根拠のない誹謗中傷が行われている事実を確認。
第071号『風切りの羽根』が『敵国との内通疑惑』について
協会長ベルロイに真偽を問いただし、掴みかかる事案が発生。
警備担当者バーグにより仲裁。
協会長は疑惑を否定。
また、第017号『獣友会』(lv40)に対する襲撃事件が発生したとの報告。
第103号『正義の槍士団』(lv46)及び第108号『トロス義勇兵団』(lv48)が、
「指名手配の長寿者『不可視の魔獣使い』の正体は『獣友会』である」
との流言飛語を信じたことが原因。
『正義の槍士団』は代表の戦士スラッド以下九名、
『トロス義勇兵団』は代表の戦士ガディヤイン以下九名が、
骨折、打撲、創傷などにより撤退。
『獣友会』に負傷者はなし。
再発防止のため、協会より通知。
・根拠のないアストラルネット上での中傷呪詛や流言飛語の流布・便乗禁止
・ダンジョン内での探索者同士の私闘を禁止
・生命保全のための緊急避難・正当防衛に関してのみ戦闘行為を認める
また、人数不正に伴う罰則として獣友会のレベルを引き下げていたが、
今回のような実力誤認による事故に繋がるため、
『獣友会』のレベルを54まで引き上げることが決定した。
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【担当者所感・業務裏メモ(※個人暗号化ログ)】
「今日は色んな感情がぐちゃぐちゃになって、胸がいっぱいだよ……。
本当に私的なことで、仕事にこの悪感情を持ち込むのはよくないんだけども。
昨日の色々がずーっと頭の中で反響してる。
まったく、次から次へと大事件がやってくるんだから!
エリザさんと『精霊賜教会モラン支部』のハキムさんたちがいなかったら『踏破団』のみんなは今頃……ほんと、危なかった。
『世界槍の現地住民』に関する謎は増えたけどね!
あのちっさくて超強い女の子はなに?! 弓と蹴りだけでヒースさん並みに強かったように見えたけど、あれがヒースさんの恩人?
わからん。今は考えても仕方ないか。
『事象予報隊』が知らせてくれたおかげで、『異世界転移事件』は何とか解決した。精霊界フィソノセイアから押し寄せてきた『集団クラス転移』……精霊伝承でよく歌になっている『流れの赤風』たちは、鎮めの儀式ですっかり落ち着いてくれたみたい。去り際に挨拶もしてくれた。本来は気のいい人(?)たちなんだよね。
異界の精霊さんたちはまたどこかの次元に旅立っていくらしい。
最初は誤解が積み重なって全面戦争になるところだったけど……。
『獣友会』がまた敵に回るんじゃないかって冷や冷やしたよ。
どうにか対話で丸く収まって本当に良かった~。
それにしても……。
テオドールが、クラヴィスさんにあんなに……劣等感? 鬱屈? みたいなものを抱えていたなんて知らなかった。ヒースさんとの修行は順調で、いつも通りの『オレ様最強!』って感じに見えるのに。ていうかレベル認定も上なのに、本人的には『クラヴィスに負けたくない、追いつきたい』なんだ……。
ディンとかいう奴は何か知ってそうな雰囲気出してたけど、深く突っ込むとまた嫌な流され方しそうだから無視無視。つけあがらせちゃだめ。話を訊くとしても、テオドール本人か、さもなきゃクラヴィスさんやレライエさんにします。ディンはない。
それはそれとして、ピュクトー、あの放火魔九英雄のヒゲはなんなの?
なんでおじいちゃんと一緒にいたの? 仲良さそうだったの?
復興会のみんなともあんな風に……思わず隠れちゃったじゃん!
あーもう! 休日の出来事を仕事に引きずりたくないのにー!
そんなこんなで気分はぐっだぐだ。
朝からクスリをやった荒くれ者が暴れるし、呪詛で怪我人は出るしで最悪。
協会長はほんとも~ニトリスに甘々でさ~やんなっちゃうよ!
ローナンさんたちがあいつの取材のために魔獣退治のお膳立てしてやったこと、都合よく忘れてるわけ? 恩を仇で返すとか最悪。
勉強会の話はけっこういい感じのトピックではあったけどね。そこはプラスだ。仕事が増えて忙しくなりそうだけど、みんなの役に立つ忙しさだからまだマシ。
けど、それで終わらないのがこの世界なんだよね。
帰ってきたミルカちゃんたちの話を聞いて、忙しいどころじゃなくなっちゃった。
信じてた『三男坊の団』に売られて、あの『鉄の血潮』に襲われたんだよ!?
でも、アロビイくんが人質を助け出して、灰かぶりの三人がミルカちゃんたちを守るために命懸けで戦ってくれたの! そして……ついに悪党バラクをやっつけた!
キュエンおじいちゃんも『ダンジョンではお前さんが正義だ。それでいい』って言ってた。警察や大神院の人たちが来ても、灰かぶりの三人は堂々と胸を張って事情聴取に応じてて……すごく格好良かった。あんなに最初は頼りなかった『灰かぶりのともしび』が、本当の『英雄』みたいに見えたよ。
話を聞いたママミルクが『俺が育てた』みたいな顔しててウザかったけど……まあうん、あの決闘で『灰かぶり』トリオが成長できたのは確かだし、今回生き残れたのもあいつのおかげって部分はあるのかも……?
イニロさんが『蜘蛛狩り』を名乗るようになった件といい、あいつと関わった初級探索者がいい感じに成長してるのは何かのジンクスに……いやいやいや。
……それに比べて、お偉いさんはどうしようもないね!
九英雄ラムナバのために、全く誰だか分からない遺体を『賞金首だ!』って捏造して表彰するなんて……。マウザ家が絡むと、真実すら簡単に捻曲げられちゃう。本当にくだらない!
そして、更に不吉な知らせ……。
指名手配を出したばかりの長寿者『笑う仮面ピエロ』が現れて、『銀の轍』のみんなが一瞬で消されちゃったの。
一瞬だよ!? レベルも上がってきた中堅パーティが一瞬で……!
高位呪術師が恐ろしいことは理解していたつもりだけど、ここまでだなんて。
他にも央都から華やかな吟遊詩人パーティがやってきたりしたけど、流言飛語が飛び交ってるのが嫌~な感じ。なんか悪意を感じるよ。
吟遊詩人さんたち、ぱーっと武勲詩呪文とかで悪評をやっつけてくれないかなあ。
正義を貫いて強くなる子たちがいる一方で、権力者は嘘で飾り立て、ダンジョンの奥からは本物の魔物や得体の知れない悪意が忍び寄ってくる。
……私もしっかりしなきゃ。いろいろ見せられると、少しでもまともな大人でいないとって思っちゃう。
いや、でもやっぱ不安だ~。おじいちゃん、九英雄なんかと絡まないでよ~」
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『編集部』宛ての追記事項
反社会勢力について。
一部探索者の間に出回っている違法薬物の件ですが、『三報会』及び『十戒』についての追加資料を請求します。
債務者を強制的に探索者に仕立て上げたり、迷宮刑罰者という悪しき先例をなぞろうとする動きもあるようです。これらの施策が反社会勢力と結びつきやすいことは言うまでもなく、探索者全体に悪影響を及ぼします。
こちらでも可能な限りの手を打っておくべきではないかと愚考します。
この記録に、囁きの天使の加護がありますように。
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