とある探索者協会員の記録.31
新史歴XXXX年/理智月/第一日
ボロミア文明圏 聖火都市モラン 第六主街区 『木漏れ日通り』
NOTEAPP.NEXXXX.0601
『モラン探索者協会本部』一階受付業務日報
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■担当窓口:受付係エルマ、補佐ポーレッテ、警備兼窓口キュエン、ミルカ(『木漏れ日採集隊』)
■業務概要:月初基本業務、新規・部活登録相談対応、不正対応、九英雄対応、敵国長寿者(懲罰部隊)の指名手配手続き
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【1.月初通常業務および新規登録対応】
・AM 08:45【月初業務と新規案内】
月初めの事務処理に追われる中、新規パーティ二組が来訪。
ノルアカデミーの案内および受講予約を完了。
登録第101号:『ターティデス槍歩き』(lv28)(代表:戦士オウス・九名)
登録第102号:『ドラゴンスレイヤー』(lv26)(代表:戦士フォグラント・五名)
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・AM 09:15【不審な大量登録の対応】
ダミーパーティ疑惑:
ポーレッテより、
「実体のないダミーパーティと思われる大量の登録申請」の報告を受ける。
協会長と協議の上、すべての申請を一旦差し止めとし、精査を開始。
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・AM 09:30【不正対応:協会総務課・素材買取課合同報告書】
1.事案概要
本日、複数の部署より探索者による不正行為、
および職員による不正黙認の疑いが報告された。
協会は即時対応を行い、関係者への注意・処分・制度上の是正措置を実施した。
2.素材買取課からの報告
● 第040号『ぶっこみ迷宮フライト』による非推奨行為
常設依頼『素材採取』と『棺運搬』を同時に達成するため、
棺の内部に大量の鉱石・植物素材を詰め込み、
貨物機甲箒で運搬するという行為が確認された。
● 問題点
棺内部は遺体保護のための呪術処理が施されており、
素材の性質によっては呪術干渉・腐敗促進・呪力汚染が発生する危険性がある。
素材側も棺呪術の影響で品質劣化が起こり得る。
● 対応
即時警告を発し、行為の停止を指示。
再発防止のため、素材買取課より注意喚起文書 を掲示。
● 職員による不正黙認の疑い
素材買取課長ガボガド・ガッツより、
「一部職員が探索者と親しくするあまり、不正行為を見逃す傾向がある」
との相談が提出された。
● 協会長指示
全職員に対し、
コンプライアンス遵守・公私混同の禁止を徹底するよう通達。
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※監査部による職員行動の再点検を実施。
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3. 総務課からの報告
● 第029号『迷宮あやかし百鬼夜行』(lv54)による不正登録
代表シュウカが、
自身の尾に仮想使い魔を宿らせ、形態変化術で人間に見せかけることで、
パーティ人数を一名から九名に水増しして登録していたことが判明。
● 付随事案
当人が窓口で説明している最中、
第032号『異獣ぶっ殺し隊』(lv43)がシュウカを異獣と誤認し攻撃。
代表エルグラント以下八名が原因不明の昏倒。
後にシュウカより
「自分は泡良系の少数眷属種であり、よく誤解される」
との説明があり、当該パーティは納得して飲食スペースに撤収。
その際、シュウカ負担でエルグラントらに酒が振る舞われ、穏便に和解が成立。
● 部署間の見解対立(音声ログ文字起こし)
情報解析課課長 リルヴェイ・シアー:
「一定量の学習を行わせた仮想使い魔の駆動体は、
現代の呪文学的には自律的な知性と見なす見解が主流となっています。
パーティメンバーとして機能するため、不正にはあたらないですね」
総務課 ダミアン・レイス:
「呪文学的定義ではなく協会制度上の問題である。
他のパーティにどう説明する? 公平性はどうなる?
功績点査定や装備・治療薬補助を不正に取得しているのであれば是正が必要だ」
情報解析課リルヴェイ:
「はい……」
● 処分
第029号『迷宮あやかし百鬼夜行』代表シュウカに厳重注意
・功績点の剥奪
・不正に得た補助の返還
・ソロ探索者として再登録
4. 類似案件の調査結果
調査の結果、複数パーティが人形・幻像・使い魔を人員として登録し、
人数を水増ししていたことが判明。
また、情報解析課がこれらを黙認していた事実も露見。
当日連絡が取れたパーティの半数以上は
「不正とは知らなかった」
と回答。
● 人数水増しが確認されたパーティ一覧
第012号『炎上戦士団』(lv54)(初期登録時3名・2名が宝珠型幻像兵)
第014号『ヒャッハー団』(lv51)(9名・4名が鉄闘技用再生品人形)
第017号『獣友会』(lv54)(6名・3名が知性化類人猿・犬精奴隷・錬成鳥人)
第038号『明日への灯火』(lv40)(5名・2名が警備用人形)
第050号『迷宮販売はお任せ』(lv49)(8名・4名が軍事用再生品人形)
第060号『時空泡調査団』(lv43)(5名・1名が土木作業用人形)
第070号『事象予報隊』(lv53)(4名・2名が投射型未来幻像兵)
第080号『賢人眼鏡団』(lv40)(4名・1名が仮想使い魔眼鏡駆動の奪魂患者)
第081号『魔女術探求会』(lv50)(5名・1名が豹変使い魔、1名がメイドロボ)
第087号『QQビジョナリー』(lv52)(6名・1名が対話型医療用人形)
第089号『亀甲フォーチュンガーディアンズ』(lv50)(4名・1名が警備用人形)
(※『獣友会』に対する疑義については精査の結果、解決済み)
5. 協会としての是正方針
● A. 人員登録制度の明確化
「人間」「使い魔」「人形」「仮想使い魔」「幻像兵」の区分を明確化
パーティ人数にカウントできる基準を制定
自律人形・使い魔は 原則として人数に含めない
● B. 補助制度の見直し
装備補助・治療薬補助は人間探索者のみ対象と明記
人形・使い魔の補助は別枠で設定(呪石燃料・修理費など)
● C. 情報解析課への監査
黙認行為の調査
職員への再教育
部署間連携の改善
● D. パーティへの個別対応
不正の程度に応じて、
注意/功績点減点/補助返還/登録区分変更 を実施
悪質な場合は登録停止・一定期間の探索禁止も検討
6. 総括
本件は、「人形・使い魔・その他呪術偽装の高度化」により、
従来のパーティ登録制度が現状に追いついていないことが原因である。
協会は以下を優先して制度改定を行う必要がある。
・人員登録の基準明確化
・補助制度の再設計
・部署間の監査強化
・技術進化に対応した新規規定の制定
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・AM 10:45【緊急治療】
事故により探索者が負傷、緊急措置として協会医務室を解放。
うち2名は『修復』呪術を行ってなお命にかかわる重傷であったため、
儀式処置済み高度霊薬『霊質補填魂魄丸』及び『死者粉末』の在庫を使用した。
・負傷した探索者:
第009号『猛火義士軍』(lv56)(重傷4名・軽傷2名)
第032号『異獣ぶっ殺し隊』(lv43)(重傷5名・軽傷3名)
第085号『不殺隊』(lv55)(重傷7名・軽傷2名)
・高度霊薬使用対象者:
・九英雄ピュクトー
・九英雄チャスコーン
(※本件については協会長より箝口令が敷かれた)
・AM 11:00【事後処理・施設修繕依頼】
工事業者に施設の修繕を依頼。
重傷の探索者を医務室から順次病院へ搬送。
情報解析課により黙秘誓約スクロールが使用された。
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【2.学生対応】
・PM 01:30【高校生の新設部活動の登録相談】
地元神学高校の部活動として探索者登録の相談を受ける。
安全確保のため、即時登録は一時ストップ。
まずは協会見学、安全講習、ノルアカデミーの受講を強く推奨。
・PM 02:15【九英雄シャオルオン・タン・ラザマイエス氏の来訪】
大神院の後援を受ける九英雄の一角、
ボロミア鎮守聖伯にしてモラン大司教、
ラザマイエス家第二子シャオルオン率いる
『聖なるシャオルオン英雄団』が第四階層に挑み敗走。
(※代表者は実質レベル24程度だが政治的忖度によりレベル55認定)
固有種『凝視水牛』の超重圧邪視が直撃したが、
特注の軍用級呪動装甲の性能により九英雄シャオルオンは無傷。
被害は呪術制御宝珠と自律魔導書、身代わり護符のみ。
【トラブル発生】
安全確保のため強めに注意・忠告を行ったところ、
激昂した九英雄シャオルオンより叱責を受け、
受付担当者エルマが頬を張られる暴行を受ける。
警備担当キュエン及び『ここはガキの来るとこじゃねえぜ団』(lv45)が制止。
その際、九英雄シャオルオンが転倒。臀部をぶつけたとして大声で罵倒。
周囲に当たり散らしている場を、
見学に来ていたクラスメイト(高校生)に目撃される。
恥をかかされたとして「名前を覚えたぞ」と恫喝を受ける。
探索者ママミルクが九英雄シャオルオン及び見学者に対して紙パック牛乳を配布。
『ここはガキの来るとこじゃねえぜ』と威圧、帰宅を促す。
協会から見学妨害に対して軽い注意を行った。
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【3.敵国『懲罰部隊(永久刑罰長寿者)』の潜伏と指名手配】
・PM 03:30【『槍頭戦団』の帰還と敵交戦報告】
『槍頭戦団』(lv44)が術士ラモーンの炭化した遺体を抱えて帰還。
第三階層奥地にて『松明の騎士団』の掃討から逃れた地獄軍残党、
鈴国の『永久刑罰長寿者』(懲罰部隊)と遭遇し交戦。
敵の推定レベルは最低でも50以上。
・PM 03:45【指名手配および懸賞金の設定】
聞き取り調査を行い、当該敵性存在を『優先討伐対象』として指名手配。
独立固有種と同等の扱いとし、懸賞金の設定を協会長と相談・決定。
・PM 06:00【ゼドによる威力偵察・敵情報の提出】
第006号ゼドより敵国長寿者との交戦記録および情報が持ち込まれる。
各個体は各階層に散らばって潜伏中。
要対処指定。
以前から寄せられていた第029号『迷宮あやかし百鬼夜行』、第049号『攻略情報スピード調査!』、第070号『事象予報隊』、第087号『QQビジョナリー』の調査報告等を総合し、判明した長寿者は以下の通り。
●確認された敵部隊主要個体と推定されるレベル
・『赤肌人爆破魔』(lv57)
・『黒夢馬』(lv58)
・『岩肌武僧』(lv57)
・『機動呪文歩兵部隊』(lv59)
・『不可視の魔獣使い』(lv40~59)
・『笑う仮面ピエロ』(lv60~?)
・『人食い蛇頭人』(lv60~?)
・『殺人騎士』(lv60~?)
他、未確認個体多数。
(※このうち、『黒夢馬』と『不可視の魔獣使い』に関しては『迷宮あやかし百鬼夜行』による夜間戦闘での討伐報告が寄せられているが、事後調査により再出現していることが判明。追加調査を実施)
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【4.その他の対応】
・PM 07:30【重傷者と九英雄パーティによる治療対応】
1. 帰還報告
第089号『亀甲フォーチュンガーディアンズ』(lv50)が帰還。
第三階層内にて『不可視の魔獣使い』と思しき敵性存在から襲撃を受け、
以下の二名が瀕死の重傷を負った。
・戦士 シルルス
・斥候 トータクス
負傷内容:
腕部壊死/脚部喪失/骨折/内臓損傷/呪毒/心停止寸前の重度呪術損壊
(※戦士イーギとして登録の人形は負傷者を協会まで運搬した直後に機能停止)
2. 協会内での初期対応
協会医務室にて、同パーティの治療士アバトーニャによる『修復』、
及び当人生成の錬金霊薬による治療を試みるも効果なし。
病院までの距離的に搬送が間に合わないため、
パーティより協会内の高度儀式霊薬の使用許可が求められた。
しかし、当該霊薬は在庫切れで使用不可。
3. 緊急延命措置
その場に居合わせた以下の探索者が応急対応を実施:
『ここはガキの来るとこじゃねえぜ団』(lv45)
・治療士リューギ・フルスイング
『伝説踏破団』(lv45)
・術士ディン・シャイアー
両名による『修復』での延命措置を試みるも、
呪毒の進行が早く効果なし。
そのため、高速機甲箒による病院搬送案が提示された。
4. 九英雄パーティ『金宝珠』による介入
ちょうど棺運搬の常設依頼報告のため協会に来ていた
九英雄パーティ『金宝珠』(lv57)の治療士カリュ・サデが状況を確認。
カリュ・サデ氏より
「搬送では間に合わない」
との判断が下され、
重傷者二名の治療を即時引き受けることとなった。
5. 治療結果
カリュ・サデ氏による高練度『修復』が施行され、
心停止状態にあった二名が蘇生。
呪毒の中和・四肢および内臓の再生・骨折の修復が完了し、
生命の危機は脱した。
『亀甲フォーチュンガーディアンズ』は深く謝意を述べ、
謝礼の支払いを申し出たが、カリュ・サデ氏はこれを固辞。
撤収時に以下の発言を残した。
カリュ・サデ:
「慈善行為いえーい。臨死おつ~。天の御殿ちょい見えてたらスケッチよろ~」
その後、九英雄パーティ『金宝珠』は協会を離れた。
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【担当者所感・業務裏メモ(※個人暗号化ログ)】
「目がぐるぐる回りそうだ。
うあー! 十日くらい寝るだけの休み欲しい~! 嘘、一日でいいよ。
その代わり残業はほどほどにして欲しいです。
月初めの忙しさに加えて、昨晩から騒ぎになってる『第三階層の現地住民の噂』とか不審な『ダミーパーティの大量登録案件』が来たりして嫌な予感はしてたの。
前者はサフィーリアさんとヒースさんの話をもっと詳しく聞かないとなんとも言えないけど……後者はポーレッテちゃんが見抜いて止めてくれたから良かった。
けど、絶対に裏で何か良くないことが動いてるよね、これ。
で、それに関連して本当の本当によくわかんない大事件が起きて……。
協会長に口止めされてるけど……。
ここのメモならまあいっか。壁打ちみたいなもんだし。
正直、私もまだ混乱してる。
パーティ人数の問題、最初は不正をなんとかしようって話だったんだよ。
正直、ルールがよくわかってないだけって人もいたみたい。
あとは、実はソロで行けるけど周囲に色々言われるし、悪いヤツに舐められて襲撃されても嫌だからって人数多めに見せてただけの人も。『炎上戦士団』のドミーロさんは補助とか一人分しかいらないって断ってたらしい。
これで凄腕のソロ探索者はドリスさんやヒースさんに続いて、シュウカさんとドミーロさんもだったって判明したことになる。
もしや、この四人で組んだら探索者協会で最強のパーティになるんじゃない?
あと『事象予報隊』の四つ子は実は双子だったとかも良くわからなかった。
並行する未来のヴィジョンを実体化ってナニ? って感じだけども……。
そのへんはいいんだ。
問題は『獣友会』のバーサーミンさんたち。
ポーレッテちゃんやサフィーリアさんと一緒にスケジュール押さえてもらって、インタビューしたばっかりの凄腕探索者パーティ。
そんな彼らを、総務課長ダミアンさんが告発したの。
『獣友会』の実態は『異獣を匿っている敵性組織の隠れ蓑だ』って。
どうやら、パーティの人数水増しの件はそれを言い出すための前振りだったみたいなんだよね。本命はこっちで、そのために準備してたみたい。
ダミアンさんが合図すると、物々しい感じで武装した探索者たちがやってきた。
そのメンバーが凄くて、なんと九英雄のうち、六人が勢ぞろい。
みんな、敵意バチバチで槍を構えて、バーサーミンさんたちを取り囲んで……正直、なにが起きてるのか全然わからなくて本当にこわかった。
それで、ダミアンさんは『貴様らが地獄の異獣であることは調べがついている。犬使いヴァルキーは犬精。鷹匠ホーンスは鳥人。猿飼ノロラッギは金毛種。上手く変身術を使ったものだが、悪事も今日で終わりだ。売国奴バーサーミン、何か申し開きはあるか?』って言ったの。
そしたら、ノロラッギさんが『俺がこの男を操って……』って何か言いかけたんだけど、バーサーミンさんがそれを制止して、なんだか気が抜けたみたいに笑ってから、こう、ひょいって小さな桃? みたいな果実を取り出してぱくって食べて。
それから冗談でも言うみたいな感じでこう続けた。
『こうなっちゃ仕方ないな。お前ら覚悟を決めろ。暴れるだけ暴れて世界槍を突破する。運よく生き残れたら今度は下で冒険するぞ』
そしたら、『獣友会』全員が言われた通りの表情になって、糾弾されてた三人の姿が一瞬で変わったの。言われてた通り、地獄の異獣に。
でも一番変化したのはバーサーミンさん。
私のお父さんくらいの世代だったはずなのに、一瞬で『灰かぶり』のタレンくんくらいの少年時代まで若返って。
そしたら、とても恐ろしい目つきになった。
正直、近くにいるだけで死ぬかと思うほど怖かった。
頼りになる探索者だと思ってたのに、あんな……。
その後のことは……。
実は、ちゃんと目で追えなくてあんまりよくわからなかった。
ただ、『獣友会』がありえないくらい強かったのは確か。
まずチャスコーンパーティの前衛たちが一瞬でばたばた倒れていって。
かと思ったらすぐに起き上がってまた向かっていって、そしたらピュクトーの足元が爆発して、あっちに飛んで行ったりめちゃめちゃ素早く動いたり……?
ピュクトーの背中に炎の翼みたいなのが見えたかと思ったらバーサーミンさんの槍が蛇になって自在に動いたり、もう理解を超えた戦いが繰り広げられて……なんかバーサーミンさんと打ち合うたびにすごい爆発が起きてて……今思うと、あれってピュクトーが使う『爆撃』の呪術だったかも。武術と組み合わせてたとか? 自分が怪我しないのかな? すごい技術だ。
けど、バーサーミンさんはもっとすごかった。
ピュクトーの攻撃を槍で全部さばいて、背後から迫るチャスコーンを振り向きもせずに心臓を一突き。いつの間にか参戦してた『異獣ぶっ殺し隊』は何もできずに血を吹いて倒れていくだけだった。
バーサーミンさんは仲間たちと息の合った連携で、圧倒的に不利な状況なのに一歩も退いてなくて。九英雄二人はあっという間にやられちゃったの。
それを見たラムナバとニトリスは完全に腰が引けてて、もう戦うって感じじゃなさそうだった。
カルギンとチルダント師範は険しい顔で槍こそ抜いていたけど、ちょっと離れた場所で様子を見ているだけ、みたいな感じだったかな。なんか『セントウ(?)の時間制限が~』とか小声で話してるのがちらっと聞こえた。なんだったんだろ?
警備課のバーグさんは警棒を構えてたけど完全に形だけって感じ。
キュエンおじいちゃんは私を背後に庇ってくれてたけど、明らかに気圧されてた。荒っぽい探索者に慣れてて、若い頃は死線をくぐってきたって武勇伝を語ってくれた人が、本気で恐怖を感じていたんだ。
正直わたしもこわすぎて『トイレ行っとけばよかった』ってなりました。
『どうなるんだこれ』って思ってたら、情報解析課のリルヴェイさんと『百鬼夜行』のシュウカさんがいきなりばばーん! って感じに乱入。
ええと、そこからはちょっと、理解の及ばない所が多かったんだけども。
その、呪文的誓約がどうとかで……?
青い火が、ぼうっとなっててぇ……?
実は『獣友会』は協会長が秘密裏に育成していた実験部隊、とか?
安全な措置を施してるから問題なくてぇ、えっとぉ、なんかそういう感じで?
協会としては、登録人数は三名に減らして、登録使い魔を三体追加するっていうことで処理するとかなんとか。
それぞれ知性化類人猿、犬精奴隷、錬成鳥人だから大丈夫、なんだよね……?
ええぇ? いいのこれ?
う~ん、なんか思い出そうとすると尻尾もふもふで気持ちいい~。
まあいっか。
なんか眠くてぼんやりするし、協会長がそう言ってるならそれで。
えーとなんだっけ。そうそう。その後のことね。
で、午後は午後で原因不明の業務停滞もあってやばかったのなんの。
腹が立ったのは九英雄のボンボン、シャオルオン!!
実力はレベル24程度しかないのに(絶対私より呪術制御ヘタ!)、お偉いさんの忖度で『レベル55』なんて嘘の肩書をもらうから調子に乗って第四階層でボコボコにされて帰ってきたの! 金の力で無傷だったみたいだけどね!
『危ないからもっと鍛えてから行きなさい!』って注意したら……いきなり私を平手打ちしてきて……っ!
キュエンおじいちゃんとママミルクのお陰で助かったけど、ちょっと押されただけで大げさに泣き喚いて……見学に来てた高校生のクラスメイトに見られて恥ずかしかったのか、『名前を覚えたぞ、エルマ!』って逆ギレして去っていったの。理不尽すぎる! 絶対に許さない!
それはそれとしてこわい! 聖職貴族に目ぇ付けられた! やだ~!
ママミルクは九英雄相手でもいつも通りで凄いね……。
あのメンタルの強さ、ちょっと見習いたいかも。
……だけど、もっと深刻なのはダンジョンのほう。
ヒースさんとテオドールさんがなんやかんやいい感じで訓練に向かったり、ディンとかいうアホがまた女の子に声かけてたり、『灰かぶり』や『木漏れ日』のみんなが第一階層で頑張るいつも様子から一転。
『槍頭戦団』のナプラスさんが、黒焦げになった仲間の遺体を抱えて戻ってきたの。第三階層に地獄のヤバい罪人が潜伏してるって……。
ゼドパーティが交戦して持って帰ってきた情報を見たら、言葉を失ったよ。
『赤肌人爆破魔』に『笑う仮面ピエロ』……名前を聞くだけでゾッとするようなバケモノたちが、迷宮の中で身を潜めて人間を狩ってるの。
協会長と相談して、すぐに賞金首として指名手配を出した。
ていうか、協会長は他のパーティから上げられてた情報を止めてたっぽいんだけど……どういうことなの? パニックになるとか言ってる場合?
って怒ろうかとも思ったけど、この頃はだんだんわかってきた。
協会長もいろいろしがらみがあるんだって。
ゼドはそういうことを一切気にせず、好きに情報公開しちゃうから今回ばかりは止められなかったんだと思う。
そして、協会長からちょっとだけ聞かせてもらった、『九英雄による大規模討伐作戦』の話……。協会として脅威を放置しないっていうスタンスはいいんだけど、やっぱり『武功は英雄のもの』なんだよね。はあ。
身の程知らずのボンボンに威張られてる場合じゃない。
松明の騎士団が連勝してて、もうダンジョンは平和な狩猟地だ、探索ゴールドラッシュはもう始まってるなんて報道では盛んに言ってるけど、本当の戦争はまだ終わってないんだと思う。九英雄が死んだとか敗走したってニュースはぜんぜんやらないのに、浅い階層での大活躍ばっかり喧伝して、こんなんでいいのかな?
いっつも常設依頼ばっかの英雄サマとかもいるしなあ。
九英雄のバウエルス様は振る舞いだけ見れば他の横柄な連中よりずっとマシなんだけどね。穏やかで礼儀正しい紳士って感じで。
ただマイナスの行動もしてないけど、あんまプラスの行動もしてないというか。
実力は確かなんだからさ~、初心者向けの棺運びとかじゃなくてもっとこう……。
いやいいんだよ? 善行だしね? 世のため人のためになってるよ?
ただこう、適材適所というか。
その人材はそこじゃないだろ、っていう。
『金宝珠』の超精鋭っぽい空気、ひしひしと肌で感じるんだけど、明らかな実力者のわりに『固有種討伐!』とか『新エリア調査!』とかやらないし……。
あのでっかい棺盾(謎装備すぎ)とか、仮想使い魔運用も占術演算もゴリゴリできそうな超ハイエンド級っぽい黄金のオーブは飾りかよ、って言いたくなっちゃう。
でも、あの救命劇はすごかったな。
九英雄パーティはワンマンチームじゃないんだって思い知らされた。
カリュさんの『修復』、奇跡みたい。
協会随一の治療士っていう評判は本当だったんだね。
ディンの奴も呆然としてたよ。
相手が超美人なのにいつもの調子が全然出てなかったし。
まあなんか、言動がかなり独特だったけども……。
ドリスさんやシュウカさんもだけど、美人って独特な個性の持ち主になりがちみたいな法則があるんですか? みんな超ハイレベルだし……謎すぎ!」
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『編集部』宛ての追記事項
『三報会』に対する懸念を引き続き表明します。
それと、シュウカさんの具合は大丈夫なのでしょうか。
気丈に振る舞っていましたが、相当に重い悪夢呪詛のはずです。
目と鼻の先にいるのに、何もできないことが歯がゆいです。
不自由で、不完全。これが必要な苦しみだとしたら、それは……。
何よりも、バーサーミンさんたち『六人』の真実。
あれを、私はどう受け止めればいいのでしょうか。
教化調整と編集処理について、秩序のために必要であったと理解しています。
エディター、我々の存在意義とは何なのでしょう。
探索者協会は、この社会は、我々は、あれをどう理解すれば……?
異端の罪と、異教の無知。
線を引くのは、どこで、どうやって……?
わかりません。
わからないことが、多すぎます。
この記録に、囁きの天使の加護がありますように。
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