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探索者協会物語  作者: 最近


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2/24

とある探索者協会員の記録.2



新史歴XXXX年/金錐月/第二日

ボロミア文明圏 聖火都市モラン 第六主街区 『木漏れ日通り』

NOTEAPP.NEXXXX.0502

『モラン探索者協会本部』一階受付業務日報

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■担当窓口:受付係エルマ

■業務概要:セキュリティ緊急点検、九英雄使節の対応、第七階層勝利に伴う臨時窓口設置

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【1.昨夜のセキュリティ異常に関する緊急調査】

・AM 08:15【セキュリティ監査】

 昨日PM10:30に登録された第006号『ゼドの盗賊団とかそんなんでいいだろ』の件について、ヨグウム社の技師および協会警備責任者バーグ・リトが立ち会いのもと監視宝珠・金庫呪文鍵の総点検を実施。

 結果:「器物の破損も呪的侵入痕跡も一切なし」。書類の筆跡は完全に窓口担当者エルマのものと一致。警備責任者は青ざめた顔で「見なかったことにしろ、あるいは高位の概念干渉術式だ」と述べるのみ。本日よりセキュリティ呪印を二重化。

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【2.窓口対応・その他案件】

・AM 09:00【祝砲:『松明の騎士団』第七階層決戦勝利】

 第八騎士修道会『松明の騎士団』より緊急打電。

 総長アルメ=カテドラル0番・グラムにより鈴国軍総司令官ヌウォンが撃破され、敵主力部隊を撤退に追い込むことに成功。並びに『開拓の聖女』ピュクティエナ=ゼウィオソ2855番・アルフェリム率いる聖女親衛隊が第七階層掌握者である刑罰長寿者『焦熱の巨王』の討伐完了。地獄勢力に甚大な打撃を与えた。


 『地獄解放』事件以来の歴史的快挙により、第一〜六階層までの「安全保障区画」が完全に確定。街全体が歓喜に包まれると同時に、一儲けしようとする探索者が協会へ殺到。正規登録率が順調に伸びる見込み。


・AM 10:00【常設依頼の正式告知・新規の優先依頼の告知】

 【優先依頼】:『第一・第二階層:衛生拠点設営・大型資材の搬送警護』

 内容:『モラン環境衛生組合』の補助・護衛。新しい安全地帯に重量級の『耐呪性浄水タンク』や『錬金術式変成トイレ』を設置する作業の護衛。

 ※音や工事の振動で魔獣が群がってくるため、技師が設置を完了するまで長期間の防衛を行う。継続依頼達成パーティに対しては探索者協会から功績点を付与。


【常設依頼①】:『危険生物駆除』

 内容:『呪毒虫』や『腸喰いスカラベ』、『腐毒蠅』などの駆除。

 ※特に協会設営拠点やキャンプ地、トイレ設備周辺を重点的に確認すること。


【常設依頼②】:『環境モニタリング』

 内容:協会指定の測定器を使用しながら各階層の決まったポイントを巡回、呪波汚染の状態や大気中の呪力密度といった各種データを記録。


【常設依頼③】:『指定素材の採取』

 内容:協会指定リスト内の素材採取。詳細はリスト内の『薬草・呪毒嚢・触媒霊花』『龍脈水・宝石魚・魔獣肉』『呪石・伝承鉱石』項目を確認。協会推奨のアプリでも確認可能。


【常設依頼④】:『放置遺留品・破損装備の回収と清掃』

 内容: 戦闘で残された壊れた武器や防具の破片、散らかった荷物を回収し、二次災害を防ぐ。


【常設依頼⑤】:『不浄物回収・汚泥濾過タンクの地上搬出』

 内容:トイレに溜まった『呪性汚泥』の密閉タンクを地上へ回収・搬出する作業。

  ※運搬中にタンクが破損すると、広範囲に呪的汚染と強烈な臭気が拡散して周囲の魔獣が狂乱化する恐れあり。


【常設依頼⑥】:『地上・迷宮間の棺運搬』

 内容:地上からダンジョンの指定区画へ『マウザ葬儀社』の棺を運搬し、遺体を回収する作業。可能であれば遺品回収も行う。


・PM 01:00【九英雄の到着】

 『九英雄』のうち、新たに三名(ボロミア槍術連盟理事ニトリス・ボウス、ボロミア州軍特務精鋭隊筆頭ピュクトー・アーニスタ、モラン武術大会八傑ラムナバ・エルボロム・シャザン)が同時にモランへ到着。それぞれがクロウサー家の大血族、マウザ、ゾラ、エジーメの後援を受けたパーティとのこと。

(※探索者協会の主要支援者であるため、失礼のないようにとの協会長指示)


 だれが最初に協会へ足を踏み入れるか、お供の騎士たちがエントランスで武器を抜きかける大揉めに発展。受付のパーテーションが二つ破壊される。最終的に「三名同時登録」という特例措置で手打ち。


・PM 03:00〜PM 08:00【窓口のパンクと一般登録の渋滞】

 第七階層勝利のニュースを聞きつけた新規登録希望者が『木漏れ日通り』の端まで長蛇の列を作る。

 九英雄ラッハース氏の再来訪による対応と九英雄同士の口論の仲裁に追われていたこともあり、待ち時間は最大で四時間超え。暴動寸前となったため、急遽『黒煙亭』の出前を配って鎮静化を図る。本日だけで新規パーティ二十八組が登録(処理しきれず半数は明日へ持ち越し)。

 一部探索者が登録を待たずに第一階層『琥珀賢者の変動要塞』へ突入したとの報告があり、注意喚起を行う。


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【新史歴XXXX年/金錐月/第二日登録パーティ】

登録第009号:『ボロミア槍術連盟』(代表:戦士ニトリス・九名)

登録第009号:『猛火義士軍』(代表:戦士ピュクトー・九名)

登録第009号:『聖光の盾』(代表:戦士ラムナバ・九名)

登録第010号:『木漏れ日採集隊』(代表:術士ミルカ・六名)

登録第011号:『鉄の血潮』(代表:戦士バラク・八名)

登録第012号:『炎上戦士団』(代表:戦士ドミーロ・三名)

登録第013号:『モラン無敵隊』(代表:戦士無敵王と呼びな・六名)

登録第014号:『ヒャッハー団』(代表:戦士ハンティト様・九名)

登録第015号:『槍頭戦団』(代表:戦士ナプラス・五名)

登録第016号:『南辺呪術団』(代表:術士マリノアだよん(らぶ)・六名)

登録第017号:『獣友会』(代表:術士バーサーミン・六名)

登録第018号:『探索者貸します』(代表:戦士シャーヤイン・九名)

登録第019号:『ローナン傭兵団』(代表:斥候ローナン・九名)

登録第020号:『栄光の槍』(代表:戦士ルサイ・四名)

※他、第021号~第034号以降は簡易登録、明日以降に持ち越し。



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【担当者所感・業務裏メモ(※個人暗号化ログ)】

「無理。人手不足すぎる。人事を呼んで。

 ってか今すぐ受付担当を増やして!!!

 仮想使い魔とかでいいから……いや、物理的な人手が欲しいな。

 やっぱ時代はフィジカルAIだね。

 さっさとバーンステイン社の自動人形を導入して下さい。

 ……協会長に言ったら『人間の方が安い』だってさ。

 はあ。


 今日は今日でほんとーにたいへんだった。

 出勤してすぐ、夜勤のサフィーリアさんから引き継ぎ。

 口調とか佇まいは落ち着いて見えたけど、夜のあいだに変な酔っ払い対応とか登録手順を覚えるための動画研修とかでまあまあ大変だったみたい。端末の操作とか書類の書き方とか色々質問攻めにあっちゃった。


 いや、協会長そういうのは事前に教えといてよ……この状態のサフィーリアさんひとりで放り出したの……? 夜に登録希望パーティ来たけど対応できなくて仕方なく予約整理券を渡したとか不安そうに言われちゃった。

 よしよし、次からはおねーさんに頼っていいからね。

 聞けば二つか三つ年下ということなので、完全に部活の先輩モード入って連絡先交換しました。一緒に頑張って行こう。あとクッキーありがとう!


 でもって、サフィーリアさんを見送ったらすぐ次。

 例のあれ。ゼドの件で取り調べです。

 その直後、警備のバーグ・リトさんがガタガタ震えながら、

 『あのね、私の天眼はゴーストだって感知できるんだよ。なのになんもわかんなかったの。そこにいる地縛霊とかはちゃんと見えてるのにね』

 とかもっとこわいこと言ってくるし、本当に生きた心地がしなかった。


 そこに『松明の騎士団』大勝利のニュース!

 街は総長アルメ様や聖女ピュクティエナ様の話題でもちきり。

 吟遊詩人たちの武勲詩が、『白馬に乗った聖マフスハノンが修道騎士たちに聖なる加護を授けるべく駆けつけた』みたいないつもの調子のいい奇跡譚じゃなくて、実在人物の活躍を伝えるものだったから真実味があってみんな大騒ぎだった。


『麗しくも勇壮なる我らが聖騎士長は、右手に輝ける聖槍『松明』を、左手に緻密にして自在なる唱器『鋳鋼』を携え、忌まわしき異獣どもを蹴散らし、遂には地獄の総大将ヌウォンとの三度目となる一騎打ちに……』


 ……戦いのことはわからないけど、わくわくするような英雄譚が現在進行形で繰り広げられているっていう興奮がモランを熱狂させているみたい。

 私たちは勝てるんだ、故郷を完全に取り戻して、地獄の異獣を追い返せるんだって思ったら、胸がきゅって締め付けられるみたいになって、ちょっとだけものすごく小さかった頃を思い出しちゃった。

 ほんとうにおぼろげな、泣きたくなるような肩車の記憶。

 お父さん、天の御殿で見ているかな? 

 きっと、お父さんたちが頑張ってくれたおかげで今があるんだよね。


 祖父と母から聞かされた『地獄解放』の悲劇からずいぶん経っている。

 義国圏の南方辺境であるボロミア州はかつての平和を取り戻し、私もようやく故郷に帰ってくることができた。

 私のような『帰還世代』にとって、このモランという大都市は故郷という実感に乏しい。なにしろ住んでいたのはほんのちっちゃい頃だ。それでも嬉しかった。

 父は故郷を取り戻すために戦い、この地で果てたという。


 祖母の実家を頼りに西方辺境に疎開して、ずっとあの場所で生きていくと思っていたけれど、情勢は変わっていくものだ。モランでの勝利とは反対に、私に起きた変化はあまり良いものではなかったけれど。

 後ろ向きな逃避だったし、祖父の決断に相乗りする形だったけど、私もようやくこの場所に辿り着けた。

 こうしてモランで働き、父をきちんと弔えるようになったのも、『松明の騎士団』による国土回復運動のおかげだ。


 世界槍――地獄へ貫く巨大な古代遺構。その戦いが終わるまで、あと少し。

 今やモランは人類の橋頭保にしてクルセイダーステイツだ。

 民間人でしかない私たちにも、最前線で戦う『松明の騎士団』の背後を守ることくらいはきっとできるはずだと思いたい。

 

 ……世間で『準徴兵制』とか『日雇い肉壁』とか言われてたのは知ってるけど。

 戦況が良くなって、風向きも変わってきた。

 とはいえ、最終的には古代文明の遺跡を巡るお金儲けの話になっちゃうのはどうしようもない。世の中って経済活動で回ってるものだから。

 探索ラッシュで経済が潤えば、『松明の騎士団』や義国連合軍の助けになるはず。

 私は私にできるお仕事を精一杯やろう。


 なにはともあれ、すっかり世間は戦勝ムード。

 ここまで勝ちが確定的になれば、もうダンジョンは『戦場になるリスクがあるかも?』より『急いで探索して稼がないと損!』っていう感じになりつつある。


 そんなわけで街中がお祭り騒ぎ。お祝いの紙吹雪が飛んでくるのは綺麗だったけど、その直後に『安全な浅い階層で稼ぐぞー』って殺気立った探索者たちが怒涛のように押し寄せてきて地獄絵図。地獄の軍勢は追い返したんじゃなかったの?


 極めつけは九英雄の御三方。なんで同時に来るの!?

 なんで『我こそが先陣!』ってエントランスで派手な呪術を構え出すの!?

 協会長は胃を押さえて吐きそうになってるし、私は『屋内での詠唱はお控えください!!』って喉がちぎれるほど叫ぶハメに。

 パーティションの修理費を出せばいいってものじゃないだろ!


 でも、昨日ローンを組んで出撃した『灰かぶりのともしび』の三人が無傷で、しかも珍しい黄金イノシシの魔獣肉を抱えてホクホク顔で戻ってきたのはちょっと安心した。翼猫印の体内呪石もきっちり取り出せたらしい。おかげで臭かったけども。

 ところでカシルちゃん? あなたモグモグしてたけど、まさかそのまま食べた?

 いやまさかね……。


 それはそれとして、明日もこの調子なら、私はトイレに逃げ込みます」


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 『編集部』宛ての追記事項

 個人ログチェック中に思ったのですが、情動回路を調整した方がよいですか?

 当NOTEAPPの仕様上、パーソナリティ立ち上げのために一定範囲内での揺らぎが生じることは避けられないかと思われますが、早期段階であれば対応は可能です。

 プランの修正がある場合、七日以内を目途に連絡をお願いします。

 この記録に、囁きの天使の加護がありますように。

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