とある探索者協会員の記録.23
新史歴XXXX年/金錐月/第二十三日
ボロミア文明圏 聖火都市モラン 第六主街区 『木漏れ日通り』
NOTEAPP.NEXXXX.0523
『モラン探索者協会本部』一階受付業務日報
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■担当窓口:受付係エルマ、補佐ポーレッテ、警備兼窓口キュエン、ユイル(『木漏れ日採集隊』)
■業務概要:悪質業者・悪質探索者事案への対応、遭難パーティの救助と解体・吸収の認定、暫定レベル制度の運用開始、未帰還英雄の捜索情報収集
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【1.窓口対応・パーティ状況】
・AM 09:30【『探索者貸します』への苦情殺到】
不足している探索者人材の派遣業を謳う『探索者貸します』から人員を補充したパーティより苦情が相次ぐ。
・被害内容:メンバー受け入れ直後、備品の紛失、事前に計画していた狩場の横取り・占有、他パーティからの妨害工作が発生。同業者の嫌がらせまたは工作活動の疑いがあり、調査を開始。
・AM 09:45【解散済みパーティの動向】
解散済みパーティ三団体より、学術調査依頼を受領。
・『遺跡研究会』
・『獅子王研究会』
・『世界槍研究会』
各団体が保有していた研究計画の継続調査依頼。
内容はモラン大学をはじめとした学術機関からの依頼と性質が近く、学術調査カテゴリとして整理の上、クエストボードへ登録。
また、解散済みパーティ『借金返済クラブ』の元メンバーより、
「第一階層(パレルノ山以外)における荷物持ち人員募集の有無」
について問い合わせを受領。
現時点では荷物持ち募集依頼は確認されていないが、希望者には協会登録の再取得および短期講習への参加を推奨した。
・AM 10:00【増員募集と合併希望】
これまで『探索者貸します』との共同探索を行っていた複数パーティより、
戦力強化を目的とした増員募集の申請が提出された。
また、増員募集に関連して、
パーティ合併希望・内部対立による分裂希望が複数発生しているため、
協会にて調整を行った。
【増員募集パーティ一覧】
以下のパーティは継続してクエストボードに募集掲示を行う。
・第015号『槍頭戦団』:最大四名(うち一人は治療士必須)
・第038号『明日への灯火』:戦士一名
・第058号『洞窟荒らし』:戦士一名、治療士一名
・第060号『時空泡調査団』:戦士一名
・第069号『青銅の槍』:最大五名(戦士以外を募集)
・第071号『風切りの羽根』:戦士一名、治療士一名
・第080号『賢人眼鏡団』:術士二名(大学卒業資格必須)
・第082号『ペルネー女装戦士隊』:最大二名(男性のみ)
・第091号『紀南探索同盟』:最大四名(誰でも歓迎)
・第093号『銀杯の誓い』:戦士一名
・第096号『安全圏専門団』:一名(誰でも歓迎)
※増員募集に際し、
第019号『ローナン傭兵団』より契約提案があったが、
金銭交渉において折り合いがつかず、破談となった。
【第030号『一攫千金バスターズ』】
金錐月二十日に代表コーバットを含む三名の欠員が発生。
戦力維持のため、協会へ合併希望を提出。
上記募集パーティとのマッチングを行い、
第091号『紀南探索同盟』と合併することで双方合意。
【第034号『シャト軍団』】
十八日の決闘騒ぎにより、代表シャト・ロウマン氏が負傷。
パーティ構成員三名が脱退希望、または代表者の追放要求を提出。
入院中のロウマン氏を含め、リモート協議を実施。
協議の結果、二名と三名に分割し、別パーティへの合併を行う方針 で合意。
合併先の選定および詳細調整は後日、協会にて継続対応する。
・AM 10:30【『金宝珠』への表彰】
以前より継続的に行われてきた『地獄解放犠牲者の遺骨回収』に対し、モラン市役所より協会に対して感謝状が届く。
また、陣頭指揮を執った九英雄・第084号『金宝珠』代表バウエルス・トライス氏に対して市長より表彰状、遺族会より謝礼金が渡された。
トライス氏は『異獣との聖戦で散った英霊たちに敬意を示すため』として九つの『黄金の棺』を用意。
『金宝珠』パーティは高級棺を用いて遺骨を丁重に扱うことを約束した。
また『金宝珠』の指揮下で遺骨回収に協力した多数のパーティに対しては、後日協会長より功績点の付与が行われる。
・AM 11:00【『南辺呪術団』遭難および『炎上戦士団』による救出】
【戦果報告:第012号『炎上戦士団』】
対象階層:第三階層『バオルオン平面図世界』
活動内容:行方不明となっていた『南辺呪術団』救助
成果:
・『南辺呪術団』所属の戦士カルモス、戦士ノダン両名の死亡を確認。両名の存在痕跡は魔導書上の文字情報記録のみ。物質的肉体は回収できず。
・双方の合意に基づき『南辺呪術団』の解散を承認。生き残りのメンバー四名は『炎上戦士団』への加入を希望。合意により吸収合併を認定。
・『炎上戦士団』代表・戦士ドミーロの申し出により、死亡したカルモス、ノダン両名の情報を自費負担の魔導書に転写し、疑似人格を再現した仮想使い魔として運用することとなった。協会は両名を登録使い魔・知性装備として扱うことで承認した。
・これらの知性化魔導書は元『南辺呪術団』代表・術士マリノアに贈与された。
・騒動:
元『南辺呪術団』代表・術士マリノアより『炎上戦士団』代表・戦士ドミーロに対し、一対一の決闘申し込み及び求婚の要求が行われた。
協会内での決闘を禁止するとして警備担当者キュエンが仲裁に入るが、術士マリノアは『断られた場合は自殺する』と発言しキュエンが行動不能となる。
その後、戦士ドミーロが求婚を受諾。両者の婚約が発表され事態は解決した。
・PM 01:30【『鉄の血潮』による襲撃・ハラスメント事案】
第一階層『獅子王の遺跡』にて、第010号『木漏れ日採集隊』が第011号『鉄の血潮』から襲撃を受けたと報告。
・経緯:以前より『鉄の血潮』から『木漏れ日採集隊』への悪質な付きまとい、セクハラ行為が常態化していた。
・現状:幸いにも負傷者は出ず無事帰還。協会より『鉄の血潮』代表バラクへ出頭命令および厳重注意を発令するも、応答なし。欠席裁判での処罰を検討。
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【2.『暫定レベル制度』の運用開始と育成事業】
・PM 03:00【暫定レベルの一律・個別判定】
内部で紛糾していたレベル制度について、当面は協会の独断裁定により以下の通り一律設定し、そこから個人の実力・パーティの総合力を鑑みて個別に微調整する方針を決定。
・初級パーティ:レベル30台(小型魔獣討伐・標準呪術運用・戦闘研修修了)
・中級パーティ:レベル40台(中型魔獣討伐・高位呪術仮習得・従軍経験相当)
・上級パーティ:レベル50台(大型魔獣討伐・高位呪術習熟・従軍/武芸有段者)
・PM 04:00【訓練所・道場の斡旋と協会講習構想】
・育成支援:判定レベルが「30未満」とみなされた初心者・不慣れな者に対し、協会推奨の道場、訓練所、呪術塾への斡旋を開始。
また、第一階層や第二階層といった浅層の推奨レベルや初心者向けのガイドラインなどを掲示し、講習などで周知していく方針も決定。
・協会での育成:警備補佐のキュエンより「他所に任せるだけでなく、協会独自で訓練所や指導講習を直接運用すべきだ」と強い提案があり、前向きに検討を開始。
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【3.戦果報告】
・PM 05:00【戦果報告:第017号『獣友会』、第048号『死地修行会』、第094号『ドリス・リグデェイア』】
対象階層:第四階層『流体国家ゲラ』
活動内容:『死地修行会』救助、遺跡調査、固有種『不死軟泥』討伐
成果:
・行方不明となっていた第048号『死地修行会』を探索者ドリスが発見・救助。
・周辺の流体型魔獣を複数討伐し、安全圏を確保。
・帰還中、第四階層固有種 『不死軟泥』 と接触。
・ドリスが単独で撃破するも、即時再生を確認。一時撤退を決断。
・調査に訪れていた第017号『獣友会』と合流。
・ドリスの召喚獣および『獣友会』の使い魔による陽動を実施。
・乾燥した陸地に誘導し、『死地修行会』を含む三パーティによる総攻撃で撃破。
・回収した大型体内呪石が爆散。
・『死地修行会』の斥候ムーラビが重傷を負い、治療士ヒディアスによる『修復』を試みるも死亡。
・呪石爆散後、『不死軟泥』が再生。
・『獣友会』の錬金魔獣二体が捕食される。
・『獣友会』代表バーサーミンが、「流体国家ゲラによる使い魔への呪力供給」が
『不死軟泥』の再生ロジックであるとの仮説を提示。
使役経路の割り出しに成功し、エリアからの呪力供給を遮断。
・『獣友会』が時間を稼ぎ、ドリスが極大呪文を詠唱。
・独自技法『海竜滅呪』により大量の海水を召喚。
・浸透圧ショックにより『不死軟泥』は急速に脱水・収縮し、呪力勾配が崩壊。再生ループが一時停止。
・呪力供給遮断後、体内呪石をドリスの投網呪文で封印し、対象固有種を無力化。
・戦闘の衝撃により、流体層下から古代ゲラ文明の石板・柱片が露出。
壁面に人工的な円形空洞(隠し部屋入口)を発見。
以下の資料を回収:
- 古代ゲラ文明の遺物片(石板・柱片)
- 流体地形の変動記録(念写・地形図)
- 流体魔獣の体組織サンプル
協会評価:
・固有種『不死軟泥』の特性について周知し、暫定危険度の引き上げを行う。
・地形変動により露出した遺跡片等の資料はモラン大学へ提供。
・流体地形の地図を更新。階層特性と共に協会で共有。
・三パーティへ功績点を付与。
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【4.緊急事案:九英雄ケイネンの未帰還】
・PM 05:30【『爆炎呪戦団』ケイネンの失踪】
パレルノ山へ連日通い詰め、イキュー討伐を繰り返していた九英雄ケイネン・ネトメト氏率いる『爆炎呪戦団』が、予定時刻を大幅に過ぎても未帰還。同氏の失踪により、パレルノ山にさらなる異変が発生した可能性を考慮し、情報収集を開始。
レベル55以上の探索者に対しての調査依頼を通知。
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【担当者所感・業務裏メモ(※個人暗号化ログ)】
「どこもかしこもトラブルばっかり!
かっこいい救出劇とかもあったけどね。
悪いことばっかじゃないし、いいことばっかでもない。
世の中って感じ。
まず『探索者貸します』っていう派遣屋!
『人手が足りないなら貸してあげる』なんて親切な顔して、送り込んだ先で盗みやら狩場の横取りなんかをやってるみたい。
キュエンおじいちゃんが「こういう手口には覚えがある」って険しい顔してた。
おかげでみんなが『こいつらとはもうやってらんない』ってなって……。
増員募集でてんやわんやだよ。便利なクエストボードのお陰で大丈夫そうだけど。
しかもこいつら、今度はパーティが半壊したヤイエスさんたちにも声をかけてるって話だよ。断ったみたいだけど、なんか動きが不穏なんだよね。
クラヴィスさんとの訓練(という名の喧嘩)も卑怯な手を使ったり……。
調子に乗ったシャーヤインのヤツをさくっと返り討ちにしてたのはちょっとかっこよかったです。てかあの変形武器、バラバラにもできるんだ……。
それにしても、『お前の女の身に起きたこと』って何だったんだろう?
クラヴィスさん、物凄く怖い顔してたけど……。
それから、ドミーロさんたちの救出劇は見事だったんだけども……。
マリノアさん? あの人はなに? マジで何が起きたのか理解できない。
キュエンおじいちゃんが固まってたじゃん。
ポーレッテちゃんが『恩義、責任、矜持、恋、つまりはリーダー的乙女心ですわね! よくわかりましてよ!』って叫んでたけど、わかるんかい。
私はさっぱりだよ。
まあドミーロさんが真正面から受け止めてくれたから丸く収まったっぽいけど。
すごいなあの人。よくあんなメンヘ、難しい女の人の相手できるな。
ドリスさんや『獣友会』のバーサーミンさんたちの『真の実力者』って感じの冒険譚も手に汗握ったなあ。
『使い魔の凄い人ってそういうこともできるんだ!』とか、『極大呪文のオリジナル派生できるのすごい!』とか、ハイレベルな探索者の報告は英雄譚みたい。
報告書には書いてないけど、ドリスさんが自分の極大呪文に『アルバダオバ』っていう祖国の建国王の名前を付けてるとか、色々な話も聞けてちょっと得した気分。
ムーラビさんは残念だったけど、助かった人もいて良かった‥‥‥と思いたい。
それから『鉄の血潮』のバラクたち!
ミルカちゃんたち『木漏れ日採集隊』にセクハラや付きまといしたあげく、ダンジョン内で襲撃するなんて最低最悪!! 無事だったから良かったものの、呼び出しにも応じないし……次に入口に来たらキュエンおじいちゃんにボコボコに叩き出してもらうからね! ミルカちゃんのとこ、もうすっかり顔なじみだしほぼ身内感覚になってるから、余計に腹立つな~!
あとカスのディン、慰めるふりして近づくな。
安全アピールやめろ。お前はお前でタチ悪いだろ。
それ以上はバラクと同類と見なして本気で軽蔑するぞ。
こほん。
でも、前向きなニュースもあります!
レベル制度だけど、とりあえず『初心者30、中堅40、上級50』って暫定で割り切ってスタートすることにしました! 学生さんでも第二階梯資格持ってる人はたくさんいるから(かくいう私もそう)、一般的な大学卒業~学士・社会人レベルということで第三階梯をボーダーにするみたい。身体能力とかは、なんかキュエンさん、いやキュエン師匠がこう、目視と肌感覚で? 大丈夫なのかこの基準。まあいいか。
それで30未満の新人さんには訓練所を紹介するんだけど、キュエンおじいちゃんが『わしがしごいてやる!』ってすごくノリノリ。おじいちゃんのディスカレイル講習、絶対ためになると思う! こわいから私は受けたくない!
あと、九英雄のチルダント師範が中級探索者から弟子を募っていたんだけど……。
修行中のテオドールさんを巡って、ソロ探索者のヒースさんと奪い合いの三角関係に?! なんで? なにがどうしてそうなった?!
どうやら討伐隊の敗北からすぐ、テオドールさんはいろんな探索者に喧嘩をふっかけたんだって(クラヴィスさんと行動パターンが一緒!)。結果、テオドールさんは二人に負けたらしいんだけど、即座に弟子入り志願したのはヒースさんの方。
『俺に闘気の扱いを教えてくれ!』って言ってたけど、闘気ってなに?
よくわかんないけど、チルダント師範はそれが気に食わなかったみたい。
どっちが弟子にとるとか、自分とどちらが上かはっきりさせようとか……。
ヒースさんは面倒くさそうにしつつ、試合を提案したんだけど、素手の相手に槍は振るえないってチルダント師範が難色を示したの。
で、なんやかんやあって第三階層の『無神修練館』ってところで『木人』や『鉄人』っていう古代の訓練用人形と戦って、討伐数を競い合うことになったんだって。
いや、別に勝手にすればいいと思うけど。
置いてけぼりのテオドールさんが『オレ様も参加させろ!』ってなってたのはちょっとだけ面白かった。誰が勝つのかちょっとワクワクしてる。
ところでテオドールさん、『そもそも俺、長槍とか使わねえし』ってずっと言ってるけど九英雄って人の話聞かないよね。
で、一番不吉なのがケイネン。
あんなにイキューのことを『いくらでも湧く雑魚』『死んだ奴らはゴミ』って馬鹿にしてドヤ顔でパレルノ山に通ってたのに、帰ってこないの。
まさかとは思うけど、イキューがケイネンの呪文を学習して強くなったとか……あるいはもっとヤバい『何か』が出たの……?
あれだけ大口叩いておいて自分が事故ってたら世話ないよ。
あんまり人の不幸を喜んだりしたくないけど、それよりもっとこわいことが起きそうで嫌だなあ……」
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『編集部』宛ての追記事項
第三階層隣接異界『バオルオン平面図世界』に関して、再度のお願いです。
『南辺呪術団』の戦士カルモス、戦士ノダン両名の物質的な遺体ですが、私なら座標の捜索と回収が可能ではないでしょうか? 行方不明の報を聞いた時点での救出は却下されましたが、遺体であれば露見する心配はありません。
せめて完全な状態で仲間や家族のところに帰してあげたいのです。
ご一考のほど、よろしくお願いします。
この記録に、囁きの天使の加護がありますように。
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