『モラン探索者広報 vol.3』
発行:モラン探索者協会本部・広報係
・『階層注意報』
◆ピックアップ:第二階層『グレジェルミラン大岩獄は深追い厳禁』
今回も引き続き第二階層の主要区画『グレジェルミラン大岩獄』と、その奥に広がる危険地帯の最新注意報をお届けします!
大岩獄の危険と『妖神蜘蛛』攻略のコツ:
『グレジェルミラン大岩獄』は、クモの巣のように複雑に枝分かれした狭く暗い洞窟。このエリアを、厄介な固有種『妖神蜘蛛』が巡回しています。
「正面から鉢合わせすると非常に危険ですが、妖神蜘蛛の移動ルートは固定されています。必ずしも戦う必要はありません。巡回パターンを事前に調べ、逃げ込める横穴や安全地帯を把握することが生存のカギです!」
――受付係・エルマ
絶対立ち入り禁止&深追い厳禁区域:
『苦役の檻』:明らかに人間の手に負えない超危険な怪物が幽閉されています。
絶対に近づかないでください!
『閉鎖墓所』〜『堕神教神殿』:
協会が正確な地図を作製済みのエリアは『閉鎖墓所』まで。
狭くて薄暗い『閉鎖墓所』のさらに奥地は情報が非常に少ない危険地帯です。
噂では、錬金術で生み出された化け物を神として崇める邪教集団の本拠地であり、錬金生物を無尽蔵に生み出す『巨大な怪物』を祀っているとのこと……!
提出された調査資料によれば、怪物は『邪神キュトス』というコードネームがつけられていたとか。まさか本物なわけはないですが、わざわざ不死の邪神の名前をつけるからにはそう簡単に討伐できる相手ではないはずです。
十分に警戒し、まずは情報収集をお願いします!
その他の各種洞窟:いずれも非常に狭く、視界も悪く、未帰還者が続出しています。手間に見合った「旨味」も少ないため、深追いは厳禁です!
・『輝く星々! 注目の探索者インタビュー』
◆第三回:登録第002号『灰かぶりのともしび』
(新進気鋭の仲良し幼馴染三人組パーティ)
(メンバー:戦士タレン/斥候アロビイ/術士カシル・オグラース)
第三回は、貴族家の没落という危機を乗り越えるため、幼馴染三人で力を合わせてダンジョンへ挑む注目の若手パーティ『灰かぶりのともしび』の皆さんです!
――まずは自己紹介と、パーティ結成のきっかけを教えてください!
タレン(戦士):
「俺とアロビイはいわゆる『帰還世代』ってやつで、疎開先だった州都の隅っこにある集合住宅育ちなんですけど、そこでカシルとちょっとしたきっかけで仲良くなって。なんかボロミアの貴族様って知ってびびりました! 雲上人って腹減って泣くんだなって! 仕方ないから奢ってやったら俺の財布すっからかんになるまでバクバク食べて『こいつ面白い!』ってなりました!」
カシル(術士):
「……もー、すぐそういういじわる言うー。その話はもういいでしょ。
改めまして、術士のカシル・オグラースです。貴族といっても、何代か前にボロミア紛争で領地をなくして、おまけに今度は『地獄解放』で会社も町工場も丸ごと失って、とうとう両親が借金を残して蒸発してしまったんです。
でも私、どうしても叶えたい夢があって。そのために『ボロミア呪術大学』に通って学問を修めたかったんです。学費を稼ぐ手段を探していたら、幼馴染のタレンとアロビイが『じゃあ三人でモランのダンジョンで稼ごう!』って言ってくれて……」
アロビイ(斥候):
「カシルは昔から勉強が得意だったからな。夢を諦めてほしくなかったんだよ。それに俺らもでっかく稼がないと。『灰かぶりのともしび』全員で成功してやろうぜ!」
カシル:
「ふたりとも……本当にありがとう。学費が溜まったら、今度は私がふたりに美味しいものをたくさん食べさせてあげるから。ポルターガイスト発電やゾンビ工場の手法を蘇らせて、南辺工業区を昔みたいに再興する! 呪術でみんなが豊かになれるように、勉強がんばるよ!」
――なるほど、そういう事情があったんですね。ですが少し気になる点として、皆さんは三人という少人数パーティでの探索をどうお考えでしょうか? 新人探索者としては、かなり人数が控えめだと思いますが……。
タレン:
「はい、そこは俺たちも『やっぱりもっと募集かけた方がいいのかな』って思ったりしたんですけど、すぐには見つからなくて。とりあえず行ってみて、戦力足りないなって思ったら他の人数少なめパーティに声かけて一緒にやったりできたらなって」
アロビイ:
「そうそう。『木漏れ日採集隊』とか『三男坊の団』とか、わりと一緒になるよな。モラン大の人たちからも今度組まないかって言われてるし、こないだとかポーレッテちゃんと組んだらめちゃツヨでビビった~」
カシル:
「確かによく心配されるけど、いちおう私も『安らぎ』の沈痛術とか『修復』で打撲や創傷治癒くらいはできるんです。なにより、私たちにはもうひとり、心強い仲間がいるので」
――もうひとり? 登録は三人のはずですが……?
カシル:
「私の守護霊が、治癒や補助のエキスパートなんです。下位眷属種の羊人ってわかりますか? 大昔に私の家に仕えてくれていた従僕で、とっても頼りになるんですよ。欠点としては、病気で亡くなったのであんまり長時間の顕現はできないことですが……。でも、この頃は倒した魔獣の死体を動かして盾にする練習とかもしているので、タレンの負担もちょっとは減るはずです」
――カシルさんは死霊術師だったんですね! 得意呪術と資格の項目に『爆撃』と『炎上』とあったので、てっきりご実家の工場の件も併せて火工術士なのかと。
カシル:
「もちろん火の呪術も得意分野です。ただ、オグラース家はボロミアで一番権威ある死霊術師家の分家の分家っていう下級貴族なので、たしなみとして一応。といっても、南アルセミア独立のときに主家であるタン=アズバ家が滅んでしまったので、大公様との繋がりなんて途絶えちゃってるんですけどね……」
――なるほど。それだけの血統があって、周囲と協力する方針で行くのなら安心かもしれません。でも、無茶は禁物ですよ!
タレン:
「はい! 前みたいに事故らないように注意します! ランクとかレベルの話もあるみたいだし、当分は第一階層で強くなるのを目標に、ってことで!」
アロビイ&カシル:
「了解です、隊長!」
――息ぴったり! 素晴らしい幼馴染の絆を見せてもらいました。ぜひ応援させてください。新人パーティのこれからの活躍に期待です!
・『コラム:受付窓口でお茶を飲みながら』
◆第三回担当:受付補佐(夜間担当) サフィーリア
『月明かりの下で〜夜間の探索者協会と深夜帰還のルール〜』
「みなさま、こんばんは。夜間受付を担当しております、サフィーリアです。
『モラン探索者広報』では企画・デザイン・編集・校正などを担当しております。知り合いの編集者の見様見真似、素人仕事で拙い所もあるかと思いますが、なにとぞご寛恕を。
さて。日が沈み、街が眠りにつく頃……夜の探索者協会は、昼間とは少し違う顔を見せます。無事にダンジョンから帰還された探索者様の安堵の表情、怪我人の応急手当、そして静まり返った館内に響く書類のめくる音。
夜間は対応窓口が縮小されますが、緊急の怪我や重大な情報提供には二十四時間体制で対応しております。ただし、深夜の帰還手続きは混雑しやすいため、無理な夜間行軍は避け、できる限り明るいうちに迷宮区からの撤退をおすすめいたします。夜のダンジョンは、昼の百倍恐ろしいですから。
特に第三階層以降に出没する魔獣の中には、私の故郷であるスキリシアの影生物が含まれているようです。我々夜の民と同じく、スキリシアの影なる生命は夜にその力を増大させます。昼は勝てた相手から思わぬ反撃を喰らうこともあるかもしれません。くれぐれもご注意を。
とはいえ、私と同様に夜こそが本領、闇こそが故郷という方もいるでしょう。
仕事終わりの副業や趣味。夜専門の探索者。己が技術を隠匿する秘密主義者。
リスクを承知で夜に挑む、そういった方々のことはあえて止めません。
ですが、得意な時間帯だからと気を抜きすぎないようにしてくださいね。
『夜探』とか『吸騎』とか『あやかし』の皆さん。あなた方のことですよ。
ダンジョンはダンジョン。深淵は深淵。
どれだけ慣れていても……我らが故郷は、どこまでも深みにあるのですから。
せめてこの場所で無事を祈らせて下さい。
どうか、夜を往く皆さまに黒衣の加護があらんことを」
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