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沖牟中奇譚  作者: 大蛇山たんと


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春、沖牟中研究同好会

転生悪役令嬢の方でも書きましたが、更新が遅くなってしまいすみません……。体調不良とストレスで一時お休みしていました。これからまた連載していこうと思いますので、どうかよろしくお願いいたします。

「姫華ちゃん、改めて~……。」

「「「ようこそ、沖牟中市研究同好会へ~!」」」

「……よ、よろしくお願いします、玉姫お姉ちゃん……いや、今は、玉姫部長……?玉姫姫……?」

「もう、玉姫お姉ちゃんでずっといいのよ~。」

「な、なら、玉姫お姉ちゃん……。」


玉姫達の歓迎に少し気恥ずかしそうにしながらも、姫華は部室の中に入る。

大々的に歓迎された事につい照れながらも、なんだかんだ嬉しくは思うのであった。


姫華は辺りを見まわす。

里守の秘密の作戦会議室……というのが先に聞いていたので、てっきりそういう関係の本や資料ばかりかと思っていたが、どうやらその逆で、表向きである沖牟中市の研究を発表する地域に根付いた同好会、としての資料の方が多く見える。

沖牟中市の人口や企業、学校についての研究資料や、沖牟中市の空き地に対する有効利用のプランの資料、沖牟中市の港の他県や外国との交易の資料や、沖牟中市の遺産などの研究資料など。

これを今まで、この同好会に入った人達が書いたのだろうか……と考えて、姫華は果たして自分に出来るのだろうかと少し不安になる。

その様子を見て気づいたのか、軽く姫華の方に手を乗せて玉姫は微笑む。


「大丈夫よ、これはあくまでも表向きの活動だから。それに姫華ちゃんは姫としてもまだまだ初心者なんだから、少しずつ慣れるといいわ。」

「は、はい……ありがとうございます。」

「さて……まずは説明からした方がいいんじゃないかな、玉姉さん。」

「ふふ、そうね、不安そうな新入会員に説明をした方が良さそうね~。」


楽し気に笑う二人、その間に光は備え付けの緑茶セットでお茶を淹れている。


「まずはそうね、表向きの活動の内容から行きましょうか~。」


玉姫はファイルの一つを取ると、開いて机の上に乗せる。

そこに書かれていたのは過去の同好会としての活動記録……内容は、『沖牟中市の名物とこれからの新しい名物について』という、随分可愛らしい物であった。

みかん、饅頭、ラーメン、カツ丼……沖牟中市の名物や、沖牟中市が推しているB級グルメなども載っていて、沖牟中市の名物は何か、沖牟中市の名物の良さは何か、沖牟中市のこれからの新しい名物には何が良いと思うか……のような、ある意味本当に地域の研究会というか同好会らしい内容の資料が書いてあった。


「こういう風に、沖牟中市の事を調べて資料を作って、色々なタイミングで発表するのが表向きの主な活動になるわね~。」

「なるほど……どういう時に発表するんです?」

「そうねえ……文化祭なんかが一番の大きな発表の機会だけれど、例えば校内新聞のミニコーナーに小さな報告を書いたり、後は市が行うイベントに参加して資料を発表したりする事もあるわね~。」

「市のイベント……ですか?」

「市外の人に向けたイベントだったり、逆に市内の人に知ってもらいたいような事を知ってもらうイベントだったり、そんな所かしら~……どうしても時間が間に合わなかったり、新しく発表するような資料が無い場合は過去の資料を使いまわしたりすることもあるから、毎回毎回書いているわけではないのだけれど~。」

「結構そういう所は緩い感じです……?」

「でも、その資料をステージの上で発表してPRするような機会もあるから、そういうのは緊張するわね~。」

「えっ……そういうの、私不安なんですけど……。」

「主に話すのは私だから、その手伝いをしてくれたら十分よ~。それに御木千代くんも光ちゃんも姫華ちゃんも可愛いから大丈夫よ~。」

「それを言うなら玉姫お姉ちゃんも……っていうか、それで大丈夫なのかな……。」


そう言いながら玉姫と姫華が話していると、二人の近くにコトン、と小さく音が鳴った。


「お待たせしました。お茶菓子は炭鉱饅頭です。」

「ありがとう、光ちゃん~。」

「あ……ありがとう、光ちゃん。ごめんね、一人でやらせて、手伝わなくって。」

「い、いえ……私の好きでやったことですし、それに……姫華さんは、新入会員ですし……。」

「光ちゃん……ありがとう。」


姫華はぺこり、と頭を下げて改めてお礼を言う。

光はどこか照れくさそうに、赤い頬をお盆で隠してもじもじしながら言う。

パタン、と音が鳴ると、玉姫がファイルを閉めていた。

玉姫は立ち上がると、今度は別のファイルを取りに行く。

……そのファイルはよくある普通のプラスチックのファイルとは違い、分厚く頑丈な素材で作られたファイルであり、更に厳重に鍵まで掛けられていた。

玉姫は机……恐らく、部長専用の机なのであろう、机の棚から鍵を取り出す。

そして、そのファイルを姫華の前の共用の机の上に乗せた。


「そして、これが私達の裏の活動……そして、私達の本来の活動内容。」


玉姫がそう言いながら、鍵でガチャリ、とファイルのロックを開き、そしてファイルを開く。

すると、ぶわああっ、と光がファイルの中から溢れだした。


「きゃっ……!?」


驚きと眩しさに目を瞑る姫華。

パラパラとページが開かれる音が聞こえ、やがて少ししてその音は止んだ。

姫華はゆっくりと目を開ける。

すると……。


「わっ……!?」

「ふふ……ようこそ、本当の沖牟中市研究同好会の真の部室に。」


御木千代が少し自慢げな雰囲気で言う。

だが、その言葉は確かに、真の姿、というのに相応しかった。


今までの部室の大きさよりも明らかに広い空間には、出撃用の里守の服……恐らく光の物らしい軍服チックな服と、御木千代の物らしい和装の服、そしてその黒い二人の服とは対照的にやぶつばきの華が美しい鮮やかな和装が何着か用意してあった。

また、刀や大鎌が幾つか飾ってあり、すぐにでも離界に出れるような道具セットの準備もしてあった。

壁には今までの地域の研究資料ではなく、離界の地図と思われるもの、離界に居る蛇達の研究資料などが壁やホワイトボードに張られている。


きょろきょろと姫華が辺りを見まわしていると、御木千代が軽く方をぽん、と叩いた。


「これが真の姿……『里守基地 沖牟中学園支部』さ。」


そういう御木千代の頭には、黒を基調とした軍帽が被られていた。

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