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沖牟中奇譚  作者: 大蛇山たんと


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22/24

春、守神の社にて。社の中と稽古試合

里守集会の後、姫華は御木千代達に案内されるままに守神の社の敷地内を案内してもらった。


応接室。


「ここはツガネ様やオロチ様が沖牟中市長や県知事、市警や県警のお偉いさんとの応接をする所だよ。沖牟中市や県の偉い人には当然話を通すし、別の県や九州外の里守やそれに似た職業の人達との連携の為に呼んで話をする事もあるんだ。人が多い時はさっきの集会所を使ったり、別の神様や妖の方々を呼ぶ時は守神の社の本殿で対応するんだけどね。」

「市警とか市長さんはまだ分かるけど……他の県の人や、他の神様とか妖を相手にもするって凄いんだね、やっぱりツガネ様とオロチ様って……。というか、やっぱり他の神様とか妖怪とかも居るんだね……。」

「この日本には八百万の神々という言葉もあるんだ、身近な神様も居るし、妖怪や妖にも人を守る良い妖も居るって事だよ!」


今まで触れる事が無かった神々や妖の世界。

それを想像して、姫華はつい心が踊るのであった。


食事室と台所。


「ここはツガネ様とオロチ様が食事する食卓と台所よ~。基本的には里守の誰かが食事を作って奉納するんだけど、ツガネ様も食事を作れるし、オロチ様もたまに食事を作る事もあるのよ~。」

「意外と家庭的なんですね、ツガネ様って。」

「ああ見えて結構食事を作るのは楽しんでるみたいなの。オロチ様はお酒のおつまみが欲しくて食事を作る事が多いわ~。あとは、里守の何人かで食事を作る事もあるから、お姉ちゃんも時間があったら姫華ちゃんに作ってあげるわね。」

「玉姫お姉ちゃんの料理……楽しみですっ。」


玉姫のような美人の女性に食事を作ってもらえる……。

姫華は同性だがそれでも凄く嬉しいと思っている。

きっと、異性なら尚更嬉しく感じるのだろうな、と姫華は思った。


着替え室。


「ここは、里守の為の衣類を入れている大部屋ですね。基本的には皆個人管理で服は持っているんですけど、それとは別に急ごしらえで出撃したりする時の皆使える汎用の里守服を複数管理したり、後はそれぞれの里守服を改造したり修繕したりする衣類全般を取り扱う部屋ですね。……実は個人個人に合わせた里守用の服のデザインを、大部分を私がやっているんです。」

「ああ、御木千代くんが言っていた、デザインをしている子って光ちゃんだったんだ。というか、凄いね、一人一人に合わせたデザインを作れるなんて、光ちゃんって凄く器用だったんだっ。」

「え、あ、いや、あの……デザインしているのは私の我儘というか、私がやりたいからやっているだけというか……!その、趣味が高じて、やっているだけなのでぇ……!」


光は赤くなるが姫華は光を褒め続けた。

そういえば、離界に居た時の光も軍服チックなミニスカートの黒い服が、スタイルの良い光に似合っていたな、と思いながら。


浴室。


「ここはツガネ様やオロチ様、あと里守や客人が入るお風呂だよー!沖牟中市の温泉の技術を取り入れてもらってる上に三ツ池神社の霊水をお風呂にしてるから、身体を清めたり傷の湯治にも使ったりするんだよー!」

「ちゃんとお風呂も男湯と女湯があるから、ツガネ様とオロチ様以外に住んでないのに何でだろう……って思ってたけど、なるほど、治療や身体のお清めにも使うんだね。」

「御木千代お兄さんみたいな美人さんだったら女湯に入ってもバレないかも~……というか、御木千代お兄さんだったら私は一緒に入るの大歓迎だけどね~。御木千代お兄さんを日出と二人で誘惑しちゃったり~……なんちゃってー!」

「あはは……御木千代くんはモテるんだね~。まあ、確かに御木千代くん美人さんでかっこいいのは分かるけど……旭ちゃんと日出ちゃんは御木千代くんが大好きなんだね。」

「うんっ!」


元気に話す旭に姫華は微笑む。

だが、御木千代への誘惑の話の時は旭に、

(妙に色気があるな……)と思った姫華は、将来この子は小悪魔だったり魔性の美人になるだろうな……と思うのであった。


本殿。


「ここは、この守神の社の本殿です……。社、つまりは神社なのでもちろん聖域としての側面もありますから、ツガネ様とオロチ様、後は他の神様や人を守る妖にとっての寝泊りしたりする場所にもなっています……。」

「それって、私達が入って大丈夫なの……?特に私は一般人じゃ……。」

「説明されてないですか……?里守や姫も神職の一つのような物なので、ツガネ様とオロチ様の聖域であるここなら入る許可が下りているんですよ……。もちろん、失礼な事はしてはいけませんが……。」

「そっか……私も神職、って考えると、頑張らなきゃね。」

「……姫華お姉さんは姫だけど、普通の人らしい人です。でも、普通の人だからこそ、普通の感性を、大事にしてくださいね……。」

「あはは……褒められてる、のかな?ありがとう、日出ちゃん。」


里守であり、天才剣士とも言われる日出。

その日出は、確かに神様の巫女と言われたら頷いてしまいそうな、神秘的な物静かな美少女だ。

その日出から普通を大事にして、と言われた姫華は確かに顔は可愛いがとても普通の女の子だ。

だがその普通の感性こそ、この神職にも大事なのだな、と姫華は思った。


「いやあ、なんというか、見た目より結構広いし、色々あったね。私、すぐには覚えられないかも。」

「神様の力……神威かむいで空間を広げてますからね。見た目より広いのは仕方ない事ですよ。」

「そんな事出来るんだ……神様の力ってやっぱり凄いな~。」

「それよりお兄さん!最後にあそこ紹介してないよ!」

「そうです……約束、忘れたら駄目、です……。」

「仕方ないなぁ、宮部シスターズ。じゃあ、最後の所に行こうか。」

「ふふ、相変わらず御木千代くんは愛されてるわね~。」


そう言いながら、最後に来たのは、社の隣にあった建物。

里守として、必要である力。

それを鍛える為の場所である、武道場であった。


武道場には、本殿に似た神聖な、澄んだような空気が感じられた。

少し冷たくも感じるその空気感は、しかし嫌な冷たさではなく、むしろ身が引き締まる、という感覚を覚える。


「普段は違う神社の境内にある武道場で剣の稽古をしたり、体育館を借りて稽古したり、後は山を駆け回って訓練したりしてるんだけど、ツガネ様と稽古したりする時はここを使うんだ。」

「ここでなら離界の中だから身体強化の加護を受けた状態で動けるから、全力の稽古が出来て楽しいんだよ~!」

「私みたいな鎌使いも、この守神の武道場で訓練する事が多いですね……、異能力の『飛来鎌』を使って鎌を飛ばしたりしやすいので。」

「とりあえず、まずは何本か打ち合い、しましょう、御木千代お兄さん……。」

「うんうん、御木千代お兄さん早く早く~!」

「仕方ないなあ……なら、二刀流の稽古でもするかな。」


御木千代、旭、日出は武道場の一室の準備室から木刀を持ってくる。

御木千代は二刀流と言った通り二本の木刀、旭と日出は短め……刀で言う脇差くらいの長さの木刀を持ってきた。

そして、旭と日出はまるで鏡のように二人左右に並んで剣を中段に構える。

御木千代は二刀を持って、構える。

審判は光がする事になった。


「今日は一本取るからね、お兄さん。」

「宮部は一人で一人前、二人なら五人前です……。」

「なら当代最強の僕は十人前だって所を見せなきゃね。」

「……それでは……試合、開始!」

「はあっ!」

「「やああっ!!」」


こうして、二対一の稽古試合が始まるのであった。

こっちの連載では新年初めてですね。改めまして、明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。こっちの更新はゆっくりになるかもしれませんが、それでも今年もよろしくしてくれたら嬉しいです。

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