春、影の正体と集会の終わり
「ボク達神は、複数の魂を持つのが基本だ。基本的には、恵みを与える和魂、災いを起こす荒魂。この二つに分かれている事が多くて、和魂はまあ色々あるが、この沖牟中での特に目立つ恵みと言えば魔石炭だ。そして、荒魂も色々あるけれど……基本的には、ツガネは離界を生み出すこと、そしてボクの荒魂は影の蛇を生み出す……ここまでは理解しているよね?」
「はい、御木千代くんから聞きました。」
「なら良し。さて、ここからが本題だ。ボクの神様としての魂には、最近の逸話の混流によって、ツガネが切った大蛇と、祇園信仰によって水害などから守る大蛇のボク、別の存在だった物が混ざってボクの一部になっているという事は皆に話している事だ。」
「そうですね、御木千代くんから聞きました。」
「そう。つまり、悪しき大蛇と守り神の大蛇が混ざった結果、ボクの荒魂は離界を、そして和魂の恵みを破壊しようとする存在を生み出す存在になったわけだが……その中で、僕の中の大蛇の魂は、この沖牟中での歪みを溜め込み、時折、ボクの過去の姿を取るようになった。要するに、邪気の大ボスってわけだ。」
「邪気の、大ボス……。」
「つまり、普通の蛇達よりもずっと強いって事ですね。」
「そーゆーこと、んく。」
酒を呑みながら話すオロチ様。
酒を呑みながらでも全く酔っている様子が無い辺りは本当に蟒蛇である。
「でも、この前それを御木千代くんが斬って祓いました。なら、もう出てこないって事では……。」
「……。」
「……。」
「……あ、あれ、私、変な事言いました……?」
「ああ、説明してなかったんだね。」
姫華の言葉に静まり、俯く里守達とツガネ様と、変わらずあっけらかんとした様子でオロチ様が話す。
「里守の仕事であるボクの邪気祓いは、年末になる程その年の溜め込んだ邪気を祓わなければいけなくなるから、年末になればなる程邪気は溜まり、その年の邪気が溜まりに溜まった年の末に一番強力になる。つまりこの春にボクの姿の影が出てくるという事は、今年の邪気祓いは大変になるという事だよ。」
「……えっ?」
「はあ……。」
ぽかん、とする姫華、そしてその事を聞いてため息が出る御木千代を主にした里守達。
その空気感で、何か不味い事が起きているという事を姫華も流石に察した。
「あ、あのう……。」
「姫華、僕達の年末は来年にこの沖牟中の邪気を祓って普通の人達の為にも良い来年を迎える為に、大量に襲ってくる大蛇達を斬って祓うのが役目なんだ。だから年末が近づく度にため息が出るのに……それに加えて今年はオロチ様の姿の邪気も出てくるという事なんだ。……ここまで言えばわかるかい?」
「……想像はつかないけれど、滅茶苦茶大変だって事は分かった……。」
なんという年に姫になったのだろうか、と姫華は思った。
姫としての仕事も初めてなのに今年はいつも以上に大変だという事が分かってつい姫華もため息が出た。
おまけに姫華の異能力を考えれば……果たして何度痛い思いをしなければならないのだろう。
しかし自分が耐えなければ、里守が負傷、最悪死亡する事もあるかもしれない。
そう考えると気絶すらしていられないなとも思った。
「それでオロチ様、何か対策する方法はあるのでしょうか?」
「うーん、そうだねえ。年末はボクとツガネも離界に行くとして……ツガネの方は何か考えはあるかい?」
「そうだな……腕の立つ里守にツガネ流を教える、そして、上質な魔石炭を炭鉱から収集し、刀や鎌を作り直す事も必要であろうな。」
「三ツ池炭鉱か……多分今年の番人は更に強力になっているだろうから簡単にはいかないだろうね。」
「それと、里守だけでなく姫達の能力も更に目覚めさせなければならないであろうな。」
「……あのう……。」
「ん?」
姫華はそっと手を挙げる。
ツガネ様は姫華の方を見て反応するが、内容までは察してないらしい。
「えっと、番人?とかツガネ流とか、能力を目覚めさせるとかってどういう……。」
「ああ……番人やツガネ流についてはいずれ話すつもりだが、もう一つの方には今のうちに話しておくとしよう。」
姫華の問いに、ツガネ様は姫華の方を向いて説明を始める。
「姫や一部の里守の持つ異能力は、使い方を理解したり解釈を広げる事で能力を更に使い方を広げる事が出来る。……姫華殿の今の異能力のままでは、痛みに耐えられず気絶したり、最悪命の危機になる可能性があるからな。」
「うっ……なるほど……。」
「だからその危険を無くし、更に里守達が戦いやすいように訓練してもらうという事だ。」
なるほど、と姫華は思った。
姫華が想像した事くらいはツガネ様達も想像していたらしく、ほっと息をつく。
確かに前回は一撃しか耐えれなかったうえに、対象が御木千代だけだったから何とかなったけど、複数の里守達を守る事になるなら気絶なんてなおさらしていられない。
おまけに御木千代は当代最強の里守だ。
そんな御木千代でも一撃喰らわされたり、今後更に苦戦しうる可能性がある……と考えれば、姫華も何もしていないというわけにはいかないと思うであろう。
「そういうわけだ。もちろん邪気を祓う事は我々里守の重要な使命であるが、皆を無事に守るのも我々にとって重要な使命だ。今年、今後の出撃は尚の事気を引き締めて行うように。良いか?」
「「「「はいっ!」」」」
「よし、では、本日は解散だ、御木千代、光、旭、日出、玉姫は姫華の為に残って案内や説明の続きをするように。次の出撃などについては後日通達する。良いな。」
「「「「はいっ!」」」」
こうして、今日の里守集会は終わりとなった。
説明回という物はどうしても地の文だったり逆に会話文のどちらかが多くなりがちなので長くは書きたくないですね……なので今回はなるべく短めになっていると思います。




