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学校一の美少女と呼ばれる幼馴染を借金取りから守るため、競馬で一発逆転を狙う健全な男子高校生の話  作者: 抑止旗ベル
学校一の美少女と呼ばれる幼馴染に粗相をしてしまったようなので、それを帳消しにするため競馬に挑む健全な男子高校生の話

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【天皇賞春2024】後編

「外れたか……」


 天皇賞春2024、俺の本命シルヴァーソニックは1着ではなかった。


 というかラスだった。


 俺の目が狂っていた。狂いすぎていた。そもそも2023年度2レースくらいしか走ってないじゃん。


 それにしてもラスはねえ……。そこまでとは思わなかったけどねえ……。


「あーあ残念だったね博徒。じゃあ1000万円の代わりに私のお願いごと、何でも聞いてくれる?」

「……いや、まだだぜ!」

「え」


 あからさまにがっかりしたような表情の自由島。

 なんでだろう……。


「いいか、俺は今回コシルヴァーソニックの単勝に加えて、京都3R、「3歳未勝利」の3連単「6―9―3」を3000円買っておいた。――払い戻しは12120600円! これで俺の粗相はチャラにしてもらおうか!」

「ま、マジ?」

「……え、1000万円欲しいんじゃなかったの?」

「いや、それはまあ、欲しいけど……」

「じゃあチャラだな!」

「チャラ……うん、まあ、そういう約束だから……」


 あーあ、と自由島がため息をつく。


 どうしてだろう。俺は完ぺきに的中させたのに。


 女の子の気持ちというのは不良馬場に似ている。安定しない。


「というか、昨日のことだけどさ」

「え? 昨日?」

「俺なんで裸だったの?」

「ああ、それ?」


 と、自由島はこともなげに言う。


「大雨でずぶぬれになっちゃってたんだよ、博徒。それで私が家に上げて服を脱がせてあげたの。覚えてない?」

「あ……」


 なんとなく記憶が蘇って来た。


 週末、笠松競馬場でタコ負けした俺は正気を失い、激しい雨に打たれながら慟哭していたのだった。


「わけわからない状態になってたから、仕方なくベッドで寝かせてあげたの」


 頬を少し赤らめながら、自由島は言った。


「そうだったのか……世話掛けちゃったな。でも、途中でダメになったっていうのは?」

「ええとね、最初は会話も通じてたんだけどだんだん日本語が怪しくなって、謎の言語を話し始めた辺りからもう会話できなくなっちゃって」


 ああ。

 なんだ。

 そういうことか。

 人間、ギャンブルに負ければそういうこともある。


「じゃあ、看病してくれたお礼に今日は俺の奢りで焼肉でも行くか!」

「えーっ! 嬉しい! いこいこ、博徒!」


 自由島が俺の手を握る。


 なんだか甘い良い匂いがした。


 しかし自由島は俺の手を握ったまま、立ち止った。


「どうしたんだ?」

「ねえ博徒、税金とか大丈夫?」

「ぜい……きん……!?」


 なんだそれは。


 美味いのか?


「競馬の払戻金は、一時所得扱いだから、利益が一定の金額を超えると確定申告をして税金を納めないといけないんだよ。まあ、年間50万円の利益を超えない限り、確定申告をする必要はないんだけど、博徒の勝ち額はそんなわけないからね」

「ちょ、ちょっと待て! そもそも馬券は購入時に10%の国庫納付金を支払っているんだ! 二重で金を毟ろうっていうのか!?」

「ちなみに今回のレースだと、12120600円から馬券購入額3000円を引いた12117600円が課税対象ということになるよ」

「ええ!? 笠松競馬場でウン千万円負けたのに!?」

「……やっぱり知らなかったのね」


 俺は素直に頷いた。


「ど、どうしよう。税金を納めろと言われても勝ち分は競馬で使い切っちゃってほとんど残ってないんだ」

「そんなあんたらに良い話があるぜ!」


 突然会話に割り込んできた男がいて、俺たちは思わずそちらを振り向いた。


「……あんたは!」


 それは、いつもよく見かけていた借金取りの黒服だった。


「久しぶりだな。元気か?」

「それはこっちの台詞だが……一体俺たちに何の用だよ。あんたらからは一銭も借りてないはずだぜ」

「いや、今回は俺があんたたちを助けに来た」

「助けに、だと?」

「ああ。実は俺、もう借金取りはやめたんだ」

「え?」


 黒服(元)はにやりと笑い、スーツの内ポケットから灰色の紙束を取り出した。


 その表紙には、『競馬エイト』と書かれていた。


「な……どういうことなんだ!?」

「あんたに倣って、競馬で稼ぐことにしたのさ。毎週のように何百万も稼げりゃあ、借金取りなんてやる必要ねえからな」

「……ああ、そうかよ」

「今日も京都3R、「3歳未勝利」の3連単「6―9―3」で稼がせてもらったぜ」

「そりゃよかったな……え?」


 その買い目、聞き覚えがある。


 まさに俺が買った通りの3連単じゃないか。


「どうやら気づいたらしいな」

「まさかあんた……!」

「そうさ。この数週間、俺は競馬場に現れたあんたの買い目を覗き見てその通りに馬券を買っていたんだ。おかげで大当たりさ」

「……そりゃおめでとう」


 くそ、なんか悔しいな。


「そこで、だ。良い話ってのはここからだよ。今の俺にとってあんたは命綱だ。今、脱税とかで姿を消されちゃ困るんだ」

「……何が言いたい?」

「俺が責任もって、あんたたちを国税局から逃がしてやる。だからその代わり、週に一度俺に馬券の買い目を連絡してくれ。あんたたちの逃亡資金もその価値額から出そう」

「信じろっていうのか?」

「疑われるのも仕方ねえ。だが、こいつを見てくれ」


 男は袖を捲り、肩を露出させた。


 そこには最近大人気の競馬美少女育成ゲーム、『ウ◎娘』のライスシ◎ワーが彫られていた。


「そ、そいつは……!」

「俺は金貸しから足を洗い、まっとうな競馬ファンとして生きるためにこいつを身に刻んだ。俺が仁義に悖る行いをしようとするたびに、腕のこいつの声が聞こえるんだ。『お兄様』ってな……!」

「あんた……!」

「信じてくれ! 俺に任せてくれ!」


 俺は自由島の顔を見た。


 自由島が頷く。


 俺も覚悟が決まった。


「よし……分かった」



※※※



 というわけで、俺と自由島は今、ドバイにいます。


 ドバイワールドカップの時期が来たら、また会いましょう。


 もしくは、税金の消滅時効である5年が過ぎたら……。




馬券は20歳になってから、ほどよく楽しむ大人の遊びです。

20歳未満の方は競馬法第28条により、馬券の購入だけでなく、馬券を譲り受けることも禁止されています。

また、公営競技はその性質上、必ず利益を得られる催しではございません。

20歳以上の方でも、馬券投票など金銭の授受を伴う公営競技への参加は無理のない範囲でお楽しみください。

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