【天皇賞春2024】前編
※この物語はフィクションです。実際の人物、固有名詞、その他とは一切関係がありませんし馬券を18歳未満も購入することができるという世界観です。
俺、馬木地博徒が目を覚ますと、知らない天井が目の前にあった。
「………」
どうやら俺はベッドで寝ていたらしい。
一体どうしてこんなところに……?
「ん……」
隣で知らない誰かの声が聞こえた。
ま、まさかこのパターンは……!
嫌な予感がして、俺は声のした方へ顔を向けた。
「……っ!?」
そこには、黒髪ロングで色白の美少女がいた。
美少女はけだるそうに眼を開け、言った。
「あ……おはよ、博徒」
こいつの名前は自由島深紅。
学校一の美少女と名高く男子から大人気の女子高生で、俺の幼馴染でもあり、毎週500万円の借金を作っては怪しい黒服のおじさんたちに追いかけ回されている借金魔でもある。
そうか、ここは自由島のアパートか。ちなみに自由島は一人暮らしをしている。
というかどうして同じベッドで自由島が寝ているんだ?
さっきから自由島が呼吸をするたびに息が耳元にかかって変な気持ちになる。
落ち着け、俺。
そして落ち着け、俺の下半身。まあ、朝だから仕方ないといえばそうなのだろうか。
「ああ、おはよう。なあ自由島、質問なんだがどうして俺はこんなところに――」
言いかけて気づく。
俺、全裸じゃね?
というか隣の自由島も―――と、彼女の首から下を凝視する。
白い首すじが見えている。鎖骨が見えている。当然、何かを着ているような気配はない。
外では鳥が鳴いている。
えっと……。
待て待て、落ち着け。
落ち着け、俺。
こんな唐突なR18展開があるだろうか。
いや、まったく記憶がないんだが。
俺また粗相をしてしまったということなのか!?
「昨日は」
「ぅえっ!?」
自由島の声に、俺は思わず変な声を出してしまった。
が、彼女はまるでそれが気にならないように言葉を続ける。
「昨日は惜しかったね。まさか途中でダメになっちゃうなんて」
途中でダメになる!?
いったいどういうことなんだ!?
教えてくれ池江さん! 俺は一体何をしたっていうんですか!?
「いや……すまん、自由島。説明してくれ」
「え? 何を?」
「何も覚えてないんだ。どうして俺、お前の部屋で寝てるんだ?」
そしてどうして俺たちは何も着ていないんだ?
「えーっとねえ……昨日はねぇ」
と、自由島が身体を起こす。
布団が捲れ、白い双丘が―――
「あぶねえ!」
俺は反射的に布団を両手で押さえ、自由島の胸が見えるのを防いだ。
ふう。
これで公序良俗的な何かは守られた。
「ど……」
目の前では、自由島が顔を真っ赤にして口をぱくぱくさせている。
「危なかったな、自由島。でもこれでお前のおっぱいは守られたぜ!」
「ど、どどど、どこ触ってんの、博徒!?」
「え?」
両手を見る。
なんということだ、俺の右手と左手はそれぞれ自由島の弾力と存在感ある両胸をホールドしていた。
「す、すまん!」
慌てて手を離す。
しかし、自由島の両胸の感触は俺の手にしっかりと残っていた。
くそ、落ち着け俺! 馬っ気を出すな!
「やっぱり博徒も……男の子なんだね」
妙に熱っぽい口調で言う自由島。
頬が上気しているような気がする。
「い、いや、今のは不可抗力というか。す、すまん。どうしたら許してくれる?」
「え? 許す?」
自由島はぽかんとした表情を浮かべた。
俺、何か変なことを言っただろうか。
そのまま少し時間が経って、自由島は再び口を開いた。
「ええと……そうだ、じゃあ、こうしない? 明日までに1000万円用意してよ。そうしたら全部許してあげる。でも、もし出来なかったら罰として博徒が私の言うこと何でも聞いてくれるっていうのはどう?」
い……1000万だと!?
毎週のように自由島が借金している金額の倍!?
しかしそれですべてが許されるのだとすればそうするしかない。
俺は覚悟を決めた。
「分かった。明日、京都競馬場に来てくれ。1000万用意してやる」
「……え?」
なぜかは分からないが、自由島は拍子抜けしたようか顔をした。
※※※
2024年4月28日、京都競馬場。
俺は自由島と二人でレースが始まるのを待っていた。
「言われた通り競馬場に来たけど、どうするつもりなの?」
自由島が俺に訊く。
「いいか自由島。今日は天皇賞春だ」
「天皇賞春って?」
「4歳以上馬で行われる3200mのレースだ。最近だとタイトルホルダーの逃げ勝ちが印象深いな」
「へえー」
「このレースで1000万、準備してやるからな」
「う、うん……」
大きなリボンのついたブラウスにフリルのスカートというゴリゴリの地雷系ファッションをした自由島は、なぜか不満そうに頷いた。
が、こっちは粗相を帳消しにできるかできないかが掛かっている。自由島の反応を気にしている場合ではない。
「いいか、今回の本命はシルヴァーソニックだ。2022年から天皇賞春に出場していて、昨年度は6番人気ながら3着に入っている。実力は十分だと思うぜ」
「へえー、すごいねえ」
「シルヴァーソニックの単勝は34.1倍。ここに俺の所持金40万をぶち込む!」
「40万の34.1倍――つまり1364万円になって返ってくるわけね」
「ああ。必ず1000万用意してやるからな、自由島!」
「ね、ねえ博徒。別に私はお金が欲しいわけじゃなくて……」
「いや、一度決めたことは最後までやり遂げる! 一度ゲートが開いたら、ゴールするまで走り続けなきゃならないんだ!」
理由は分からないが、自由島は残念そうにため息をついた。
いや、今はそんなことを気にしている場合じゃない。
果たして俺の運命は? 後編へ続く
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