王都圏
賽は投げられた!
その後も会議は続き、明日もう一日青熊さんを探し、洛陽周辺に居なければ、やはり移動したと考え、魯陽にはるんさん捜索に移行する事になった。
「洛陽が有るのだから王都圏のマップで間違い無いと思う」
「確かあのマップでは、洛陽を中心にして、北に汜水関、東南に虎牢関、南西に武関、北西に函谷関と言う配置だった筈よ?」
「凄え! よくそこまで覚えてるな、かあ、リリィ」
「まあね! アフロさんが来る前は私がメインの軍師だったんだから」
「リリィさん、ある程度で構いません、概ねの配置図は書けますか?」
「そうね、大体の配置図は書けるわ」
「なら….シャオリン、悪い」
「パシリかよ!? まあ仕方ねえ、大きめのメモとボールペンで良いな?」
「ノートが有ればそれが一番良い」
「シャオリンさん、僕も一緒に行きましょう。何か飲み物やつまみがあった方が良いでしょう」
「ではすみませんがすみれさん、こっちが有ればそれを」
「ビールですねガッキーさん、了解です、私もそれが実は目当てでして」
俺とすみれさんはコンビニに買い出しに行く事になった。
「はるんさん無事なら良いけど」
「大丈夫ですよ」
「わかるんですか?」
「あの子はああ見えて結構しっかりしてる子です。私などより余程ね」
「そうですか」
どうにも子供っぽい所しか覚えがない。
「あの子は母親を早くになくしましてね、依頼、私の食事はいつもあの子が作ってくれて居ました」
「そうなんですか! だから料理関係の話題に食いついて来てたんですね」
「ええ、あの子が嫁に行く時、正直その後はどうしようかと思いましたよ」
「再婚は?」
「考えて居ません、あれは本当に良い女だった」
やばい、何か暗い話題になって来た…….
「なら俺も今は大した事は出来ませんけど、はるんさん捜索に全力を尽くしますよ」
「ありがとう、シャオリンさん」
ノートとちょっとした飲み食い出来る物を購入し、母さんはノートに王都圏の地図を書き込んだ。
「これは凄い、よくここまで覚えてられましたね」
「ちょっとこの辺りの城の配置が怪しいけど、大体はこれであって居る筈よ」
「行く場所が魯陽と虎牢関なんだから、それは問題にならないわ。先ずは虎牢関に行きましょう。ここから東南に行けば良いんでしょう?」
「それに虎牢関には、こっちに来てるとすればヨウヘイさんもいる筈だ。はるんさん捜索に協力して貰う事も出来る」
「でも方角がわからないだろう?」
「この世界が地球と同じなら、ある程度の方角はわかるね。太陽は東から登る、夜には北極星が見える、それらの方角から考えれば、大凡の位置は掴める筈だね」
「成る程、北極星と太陽の登る方角を加味すれば、確かに大体の方角は掴める」
そして俺とアフロは夜、天体観測に入った。北極星と月の位置を認識し、朝には太陽が登る方角を確認した。ノートに北極星と太陽の登る方角を書き加えると、今の位置が概ね理解出来た。
「よし! 今日もう一度青熊さんを探す。すみれさんが合流した事で、捜索範囲を広げられるしな」
「俺が何かやっておく事は?」
「シャオリンには買い出しを頼む、虎牢関までどの程度食料が必要かはわからないが、かなり買い込んでも問題ない。変化すればかなりの量俺達は運べるからな」
「了解だ」
最近ずっとパシリ役だが仕方ない、誰かがやらなきゃならないし、俺は今の所戦闘では役立たずだ。こう言う役でもやれば気が紛れる。
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話はシャオリン達がこの世界に転移して来た日に遡る。実はこの世界に翡翠の中で一番初めに転移して来たのは、青熊とはるんだった。アフロからの指示で、青熊は洛陽の削り役、はるんは魯陽の削り役を任されて居た。アフロが露払いと呼ぶこの削りと言うのは、攻城時間が限られているこの攻城戦では、時間切れと言う物が存在する。どんなに強力なキャラで攻めたとしても、所謂弱キャラを一グループ倒すのに役1.5 秒の時間を要する。つまり弱キャラを時間の分だけ防衛に配置されると、強力なキャラでも時間切れで落城させられないと言う事態が発生してしまうのだ。
また強キャラも、40倒すと防御力が0になってしまうと言うルールも存在して居た。そこで防衛側も攻撃側も、相手の強キャラに対して、弱キャラを39相手にぶつけ、その後強キャラで仕留めると言う戦術を取って居た。
そこでどの同盟の軍師も、相手の防衛に配備されている数、インするであろう人員と、総合的にこれから配備されるであろう防衛キャラ数などを全て考慮して、味方の主力が時間内に落城させられる様、攻城戦が始まった時点で配備されている防衛キャラを前もって倒してしまうのだ。それを削り、とか露払いなどと呼ぶ。
今回削り役は、洛陽に青熊、魯陽にはるんが出張って居た。そして真っ先に転移したのがこの2人だったのだ。
当然青熊もいきなり転移した時には最早錯乱寸前だった。だが持ち前の分析力、そして切り替えの速さで現状を把握した。そこで青熊は、自らの能力が、カエサルと同じだと言う事に気がつく。そしてもしかして、自分以外にも、同盟員達がこれからこの場に転移して来る可能性が有る事を予想した。
本来ならここで動かずに、味方が来るのを待つのがマストだろう。だが青熊はそれをしなかった。何でかわからないが、城に近づくと高速で矢が飛んでくる。それも凄まじい数だ。城門に近づくと、敵兵がわんさか出て来る。そこで青熊は、もしここで、味方の同盟員が転移して来た時、自分と同じ様に錯乱して取り乱してしまう可能性を考えた。
どうやらこれは現実らしいし、もしかしてここでの死は本物の死になってしまう可能性も極めて高い。
ここで青熊はアフロの指示を思い出す。はるんが魯陽の露払い、そして自分は洛陽。その後全力で洛陽を落とし、時間と駒が余れば魯陽攻撃に移る。
つまりもしこの後味方の同盟員が来るとすれば、ここ洛陽に翡翠の主力が現れる。だが魯陽ははるん一人だ。この後誰も魯陽には現れない。そして今自分はカエサルの能力を持って居る。
カエサルは登場シーンで、高速で上空から現れる描写が有る。そしてそれはそのまま青熊の能力になって居た。なら今自分が取るべき行動は、はるん救出である。ここには何と言ってもアフロが現れる可能性が高い。更にリリィやシャオリン、ガッキー、林檎と言った主力が多数来る可能性も高い。
だが魯陽ははるん一人だ、アフロなら、自分がはるん救出に出た可能性もきっと見出してくれるだろう、青熊はそこまでアフロの軍略を信じて居た。
「頼みますよ、アフロさん! はるんさん、無事で居てくれ! 今助けに行く!」
そして高速で天高く青熊は翔て行った。
「太陽は向こう、そしてその方向に斜めに走る道、あそこは虎牢関に繋がる筈だ、そしてその先に魯陽は有る。もし僕の感が正しいなら、虎牢関にはあの人がいる筈だ!」
現在翡翠が占領している主城、虎牢関、そこには翡翠のメンバー何人かが駐屯して居た。更にこの虎牢関には、一食同盟が宣戦していたのだ。
「ちょっと危ないじゃない! あんた達状況見えてるの!? 私は一日一食同盟のあさぎ! 今争ってる場合じゃないでしょう?」
「違う! 俺は翡翠のヨウヘイだ! これは俺達がやってるんじゃない! 矢塔に兵が居て、そいつらが射って居る! 止める様に行っても聞き入れない! 危ないから近づくな! 城門にも兵が居る! 君達を入れろと言ってもダメだ! とりあえずここは引いて貰いたい!」
あさぎの文句に対し、ヨウヘイは矢塔から答えていた。
「嘘をついてる様では無いわ、ここは一旦引きましょう」
「でも情報共有はするべきじゃない?」
「なら呼びかけてみましょう。あれを翡翠のメンバーに開けられるのなら、でしょうけど」
一日一食同盟の盟主、猫娘が見た先には、巨大な城門の扉があった。
「なら貴方達の誰か、外に出れないの? 今は情報共有が必須よ!」
「わかってる、だがどうやっても城門の扉が開かないんだ!」
「やはりね、恐らく私の感が正しければ、兵はAIによって動くアンドロイドの様な物。そんな物が有るなら、敵が近づいて来た時にはオートロックもかかるでしょう」
「確かに宣戦したのウチらだもんね、そりゃ敵認定されるわよね」
そこに上空から青熊が現れた。青熊は先ずあさぎと猫娘を見つけ、そこに着地した。
「誰!?」
「翡翠の青熊です」
「はあ…..私は一日一食同盟のあさぎ、こっちが猫よ」
「成る程、思ってた通りの人ですね」
「それより良い所に来たわ、貴方カエサルの能力持ちよね? 何人か上空から向こうのメンバー連れて来れる?」
「わかりました、でも今は少し待ってください、急ぎでやらなければいけない事があります」
「手伝える事ですか?」
「僕はよくて運ぶのは一人が限界です、ですからすみませんが、ここで少し待って居て貰えませんか? それと、魯陽に今リアタイメンバーは駐屯してますか?」
「……今魯庸にうちのメンバーはいない筈です、翡翠の誰かが攻めてるんですね?」
「はい、今はるんさんが一人であそこを攻めてる筈です」
「なら応援を連れて早く行ってあげてください」
「ありがとうございます」
青熊は虎牢関の城に入った。当然翡翠のメンバーには矢は飛んで来なかった。
「翡翠の青熊です! ヨウヘイさんは居ますか?」
「青熊さん! ヨウヘイだ」
「良かった、ヨウヘイさんは何か能力は」
そこでヨウヘイは左腕を上げて、力を込めた。
ガシャン!
ヨウヘイの左腕に、黄金の盾が現れる。
「アウグスですか! これは心強い!」
「そう言う青熊さんはカエサルですね、ただ、今の状況」
「話は後です、もう間違いない、恐らく今魯陽には、はるんさん一人の筈です」
「俺もそれがあって何とかこの城から出ようとしてたんだが、この城はまるでゲームの傾国と同じ仕様で、一度駐屯すると塩漬けになって出れないみたいなんだ。城門が一切開かない」
「そうなんですか、実は僕も洛陽に一人で飛ばされました、だけど恐らくあそこにはシャオリンさん達が来る筈、だから僕はカエサルの能力を使ってここまで飛んで来たんです」
「英断だ! なら魯陽に急ごう」
そして、ここ魯陽では、完全に錯乱状態のはるんが、現実を受け入れられないで居た。
「ねえ! 誰か居るんでしょう? 答えてよ!」
シュ!
「ヒイ! 何よこれ! 何なのよ! 何でこんなことするの!? 誰か答えてよ!」
誰も居ない孤独感、そして門に近づけば目を血走らせた敵兵の大群。はるんは今の状況が全く受け入れられず、ただ走り回って逃げ惑う事しか出来なかった。
キャラ能力としては、水鏡と言う完全な攻撃系キャラでは無い物の、雑兵数十など軽く蹴散らせる能力が有るにも関わらず、ポケットの紅翡翠を見つける事すら出来ず、ただただ逃げ惑う事しか出来ないで居た。
だがそんな事を何時迄も続けられる訳では無い、はるんの体力はもう限界に来て居た。足はもつれ、呼吸は乱れ、心臓は早鐘の如く脈動を繰り返す。
あ、もう無理…….
遂にはるんの足は言う事を聞かなくなり、その場ですっ転んでしまう。敵兵が剣を振りかぶり、はるんに今にも襲い掛かろうとして居た。
「居た! あれはるんさんじゃ!? ヤバい!」
「青熊さん! 俺を今すぐ思い切りあそこに向かってぶん投げてくれ!」
「そんな、この高さですよ? 死んじゃいますよ」
「大丈夫だ、死にはしない! アウグスには復活と聖護援護が有る! 加えて硬さは折り紙付きだ!」
「いやでも?」
「早く! このままでははるんさんが殺されるぞ!」
「ち! わかりました、痛くても恨まないでくださいよ!」
青熊は高速で飛びながら、振りかぶり思い切りヨウヘイを投げた。高速飛行プラス、カエサルの能力を持つ青熊の全力投球。ヨウヘイはまるでピストルの弾丸並みの速度で吹っ飛んで行く、そこでヨウヘイは我に帰る。
俺….死んじゃうかも?………..
はるんに襲いかかる大量の雑兵、はるんはここで死を覚悟した。そんな時、目前で凄まじい大爆発が巻き起こる。
「え? 何?」
そこに立つのは、黄金の鎧を見に纏い、黄金の大楯を持つ一人の男の姿だ。勿論ヨウヘイである。はるんには、自らを救いに来たナイト、そう映った。
だが当然これははるん目線である。等の本人は、冷や汗ダラダラで、顔面蒼白状態、更に涙目の半べそ状態で有った。それもそのはずで、ヨウヘイは着地と共に、三途の川に入ったのだ。何と味方である筈の青熊に、三途の川へ叩き込まれたのだ。だがそこはアウグストゥス、死んでもより頑丈になって、しかも聖護援護状態で蘇る。
マジで死ぬかと思ったぜ……てか青熊さん、本気で全力で投げなくても…と、今はそんな場合じゃねえ。
「はるんさんですね? 翡翠のヨウヘイです、もう大丈夫、立てますか?」
「ヨ、ヨウヘイさん!? う、うわ〜ん! ヨウヘイさ〜ん!!」
はるんはやっと知ってる者にあえた安心感から、大泣きしてヨウヘイに飛びついて来た。そこに青熊が追いついて来る。
「ヨウヘイさん、僕が最初はるんさん救出を言い出したのに、良いとこ総取りとか、ズルく無いですか?」
「え?…..まあ、危険手当てって事で……そんな事より、コイツらを何とかしよう。俺ははるんさんを守りながらだから思うように動けない」
「はあ….わかりました」
青熊が武器の槍を構える
「知ってるか? ユリウスカエサルの言葉、賽は投げられた。これは彼が回帰不能点まで軍を進め、もう後退は無いとして、攻撃のみをその実状として語った言葉だ。お前達は僕の大切な仲間を殺そうとした。そして僕の心情は今、その極限状態に有る! 死の淵でその目に焼き付けろ! 賽は投げられた!!」
強烈な速度で槍をを連続で突き刺して行く青熊、その槍速は一条の光にしか見えない程の速度であった。それはカエサルのスキル、賽は投げられた、であった。




