ライバル登場
林檎の危機!
盗賊団を撃退したシャオリン達は、ガロードとぴょん吉を捕らえ、扶風の警備兵に突き出した。この世界でどう彼等が裁かれるのかは知らないが、処刑になるならなれば良い。そうシャオリン達は割り切って居た。それだけの命を彼等は弄んだのだ。どうせこの世界で死んだところで向こうで死を迎える訳では無い。だがここでの死の体験は、向こうで疑似体験としてトラウマとして残る、この部分はアフロもフジも否定して居ない。つまり彼等は向こうでその精神的トラウマを抱える事になる。そこまで面倒見てやる必要も無いし、またそれくらいの罰は受けるべきとシャオリン達は考えている。
「馬車?」
「ああ、ここからは馬車でブイまで行こう。その方が早いし、楽だろう?」
「でも馬車なんて何処で手に入れるんだ?」
「いやあ、扶風の警ら隊が盗賊団壊滅のお礼をくれるって言うから馬車を頼んだんだ。かなり立派な物をくれるらしいぜ!」
その日は宿に泊まり、翌日用意してくれた馬車を見ると、まるで大臣が乗る様な大型の馬車だった。
「こりゃ凄えな!」
「母さん! お兄ちゃん、クッションだよ! 椅子が凄く柔らかい!」
「本当ね、これなら馬の鞍でお尻痛める事もないわ」
2人とも風船にしか乗ってねえだろう……..と言いたいが、まあ仕方ない。
馬車の旅は快適だった。馬4頭で引く大型馬車は、非常に高速で、ブイにその後3日で到着した。俺たちはその翌日から龍神の祠へ挑戦する事になった。今日は冒険者ギルドや地元の冒険者達に、龍神の祠について情報収集を行った。初めて入るダンジョンでは、持ち込む物資などを決めるのに、必ずやっておかなければならない事だそうだ。
「地下120層!?」
「そうだ、そこが今の所最下層到達地点だな。グランブルって言うパーティが現在その最下層到達記録保持者だ」
「そりゃぶっちゃけ俺たちだけでは正直キツいぞ?」
「何で?」
「おいおい、大丈夫か? 流石にこのあんちゃん素人過ぎるぞ?」
カチンと来たが、確かに素人だし、ここは我慢だ。
「あんちゃん、じゃあ俺が先輩として教えてやるよ。先ずダンジョンには3種類があってな? 今回あんちゃん達が潜る龍神の祠って言うダンジョンは、地底都市型って言うダンジョン何だ」
「他にはどんな種類があるのかしら?」
「地底基地型と、鉱山型だ」
「地底基地型って言うのは前回俺たちで潜ったダンジョンだ」
「ああ、あの迷路みたいな奴か、確かにあれは基地だ」
「じゃあ基地型の説明は要らねえな、まあ基地型ってのは階層もそこまで深くは無いが、迷宮になってるって意味では難易度は高い。次に鉱山型だが、これは兎に角深い、最深部では地下500階とか言うのはザラだ」
「マジか!?」
「ああ、だが鉱山型って言うのは迷宮にはなってねえ。内部で枝分かれしては居るが、全て一方通行だ。だから深いだけで少人数でもどうにかなる。問題は地底都市型、つまり龍神の祠だ。
地底都市型ってのはその名の通り、ダンジョン自体が巨大な都市になって居るんだよ」
「何故それで人数が必要なんだ?」
「にいちゃん、例えばこのブイの町をにいちゃん一人で全部探索する事は出来るか?」
「あ!? ………無理だな、絶対に迷う」
「そう言う事だ。仮にどんなににいちゃんが戦闘で強くったって、一人で町全体を探索するなんて不可能何だよ。このブイの町は比較的小さな町だ。数日かければにいちゃん一人でもどうにか探索出来るだろうよ。だが地底都市ってのは一つ一つの階層がやたらとデカい。それに建造物だって10階建ての建造物なんてのがゴロゴロ有る」
「ビル!? 中に高層建築物が有るのか!?」
「だから言ったろ? 地下に有るからダンジョンて呼ばれてるが、地底都市何だよ。ブイみてえに小さな町じゃねえ、それこそ主要都市みてえにデカい町が今の所150階まで探索出来てるって事何だよ」
確かにこれは俺たちだけでどうにか出来る規模じゃ無い。覚醒の手がかりがブイの先の祠、それしか無い以上、全ての階を探すしか無い。マップは100階までの分は売って居ると言うが、俺の覚醒に必要な物が何なのか? それすらわかって居ないのだから、臭い所は全て当たってみるしか無い。
その日の夜、俺たちは根本的に作戦の見直しに迫られた。
「一度戻るしかないんじゃない?」
「ここまで来てか?」
「何時迄もメンバーに留守を任せる訳にもいかないでしょう? あんな敵が現れてる事だし、向こうだってどうなって居るのかわかった物じゃないわ」
「確かにそうだけど、それを言うなら何時迄もセイヨ達を待たせる訳にもいかないだろう? 俺達だけじゃダンジョンには入れないんだ」
「まあ俺たちは時間がある時は手伝うからその辺りは心配するな。一応龍神の祠探索は約束だからな。だが正直一度戻るってのは感心しないぞ?」
「何故?」
「考えても見ろ、お前たちはメンバーにシャオリンの覚醒を約束して、向こうを他のメンバー達に任せて来たんだろう? 手ぶらで帰るのは、向こうで頑張っているメンバーとの約束を反故にするって事だ。それこそ向こうで頑張って居るメンバーに顔向け出来ないんじゃないか?」
「それはそうだけど、でもこうまで時間がかかりそうな物だなんて…..」
「やれる手は全て尽くせ、まだ俺たちにはやれる手が幾つか残されているだろう?」
「やれる手?」
「探索メンバーを募る、軍は入れられないが、冒険者ならば入れる。俺の軍には冒険者登録をしている者もそれなりに居る。マップは100階まで有るんだ、つまり実際に探索するのは100階より下で良いんだろう? 100階までは怪しい所を行けば良いだけで、全部を見て回る必要なんて無いんだ」
確かにそうだ、マップで怪しい所を先ず見て回れば良い。そこで俺たちは役割分担して、探索をはじめる事にした。
先ずセイヨは俺とダンジョンに潜り、地下100階までの怪しい所を回る。マップを購入したのでその中からピンポイントで巡れば良い。
次にミンメイはきゆうまで戻り、きゆう軍の中から冒険者登録して居る者達を連れて来る。そして母さんと林檎は、冒険者ギルドで冒険者の中から探索メンバーを募る役割に就く事になった。
既存のここの冒険者は当然もう既に何処かのパーティに参加しているので、俺たちとパーティを組む事は無いだろう。だがギルドの受付に聞いたら、噂だけで訪れて、難易度の高さからパーティ参加を検討する者達が結構居ると言う。既存のパーティは新人への待遇が悪いので、それなりに待遇を良くすれば、新たな探索パーティに合流するメンバーも募集出来るかもしれないと言う。
翌日、俺とセイヨはダンジョンに潜り、ミンメイはきゆうに、母さんと林檎は冒険者ギルドに行き、パーティメンバー募集の依頼を出しに行った。
そしてその日のうちに、何と二人の冒険者がパーティに加わりたいと言って来たとギルドから母さんに連絡が入った。母さんと林檎はさっそくギルドへと出かけた。
「Eランクですか」
「はい、ランクは不問と言う事でしたので。でも相当な戦力が有る様です。何と地龍やワイバーンの討伐記録も有ります。ギルドでもここまでの冒険者をEランクにしておくのはどうかと議論されて居た方なんですよ」
「地龍やワイバーン!?」
「はい、そこで今回のこのダンジョン探索で、それなりの実績を出せば、昇格させる事になりました。勿論リリィさん達が良ければですが」
「とりあえずあってみます! それだけの力の持ち主なら是非お願いしたいです」
「わかりました。2階の応接室でお待ちです。お名前はルルーシュさんと」
「ブフーーーー! ゴッホ!ゴホ!ゴホ!」
「ど、どうしました!? 大丈夫ですか? 林檎さん!」
「だ、大丈夫です、何か聞いた事が有る名前なんで、ビックリしただけです。でも冒険者に知り合いは少ないし、偶然同じなだけですね」
「はあ、変わったお名前ですが…..もう一方は、量産型あやかさんと」
「ブーーーーー!!」
「母さん汚い!!」
「ぼめん、ゴッホ! ゴホ!ゴホ!」
「だ! 大丈夫ですか? リリィさん!?」
「だ、大丈夫です….か、変わったお名前ですね!?」
「とりあえず2階の応接室へどうぞ」
「林檎? ルルーシュって人に知り合いいるの? もしかしなくてももう一人は間違い無いけど…」
「…….アニキャラよ、その人私達と同じ可能性があるわ、量産型あやかさんは、珍肉の師匠の弟子の人ね….もしかして敵かも?」
「…….もしかして!? それで思い出したわ!」
「知ってるの? 母さん」
「闘技場の順位思い出して」
「順位? ……ああ!? ルルーシュ!」
「そう、一食同盟にルルーシュって名前あったでしょう? ワルチャには殆ど顔出さないけど」
「だとしたら!? どうするの?」
「慎重に行きましょう、一応こっちに協力的ならこの上無い味方になるわ」
応接室に入ると、ショートボブの女の子と、ロングヘアの女性2人が居た。
「初めまして、て変かな? 翡翠のリリィさんと盟主の林檎姫さんで良いのかな?」
「はい、そう言う貴女は? ルルーシュってアニメでは男の子だけど?」
「はは、こっちに来てバレちゃった! 一応僕はリアルではJC、んでこっちの人は….ホラあやさん!」
「…….あ、はい……その、珍肉の量産型あやかです…..」
「何故、珍肉のあやかさんと一食のルルーシュさんが一緒に?」
「ああ、同盟戦とか馬鹿らしく有りません? 折角こんな世界に来たんだから、楽しまなくちゃ嘘でしょう? それで僕は僕のしたい様にするって言ったら盟主がそれなら好きにして良いって言うんで、冒険者になったの。あやさんは途方に暮れて居た所を僕が誘ったんだよ」
「途方にくれて居た?」
「……その……同盟戦やるって事は、師匠とリアルで戦わなきゃ行けないんですよね? 私…..師匠と戦うなんて出来ません」
「そうか…..あやかさんザコさんの」
「はい、弟子です」
「林檎さんとリリィさんは同盟戦参加するって聞いてたけど? 何で冒険者に?」
「二人には本当の事話しても良さそうに思うんだけど?」
「そうね….わかったわ」
リリィはルルーシュとあやかに今までの経緯を全て話をした。これが全員で元の世界に帰る為の作戦で有る事も。
「なるほどね、僕は結構この世界気に入ってるんだけど、そう言う事なら是非協力させてください。同盟戦とかくだらない事やるんならと思ってたけど、全員を無事に返す為の作戦だって言うなら、協力しますよ! あやさんもそれならいいでしょう?」
「はい、でも…..師匠と敵対するのは嫌です」
「勿論同盟戦に参加しなければ良いんです、ただここでは、このシャオリンの覚醒はザコさんの望みでも有るんです。なのでお願いします」
「はい、師匠が望んでいるなら、頑張ります!」
何故ザコがここまでこの女性に好かれているのか、リリィや林檎には理解不能であった。その後数日かけて、2人は3人の冒険者を確保した。
シャオリンとセイヨは役10日程潜りっぱなしで地下100階までの怪しい部分の捜索をしたが、それらしい物は何も見つからなかった。だがこのダンジョンは、魔道具の産出量が非常に多く、2人は様々な魔道具を持ち帰って来た。
だがここで非常にややこしい問題が巻き起こってしまう。
「ちょ! シャオリンさん!? この人が!?」
「ええと…….ルルーシュさん?」
既にルルーシュは、シャオリンの腕を取って抱きついて居た。林檎はその瞬間象を出した。何と象が怒りのキムチレッドになって居る。カプサイシン満載のチリペッパーソースの様だ。シャオリンは阿修羅怒りの面をした象に恐怖を覚えた。
「ま! 待て待て! 林檎!?」
バキ!
「がはぁ!」
ガラガラガッシャーン!!
「シ…..シャオリン!?」
セイヨがいきなり象にぶっ飛ばされて吹っ飛んだシャオリンのあまりの激しい吹っ飛び方を見て、猛烈にビビって居た。シャオリンは錐揉み状態で宿の扉を突き破って闇夜に消えた。
「ちょっと林檎さん!? お兄さんに何て事するんですか!?」
「お兄ちゃんに気やすく抱き付かないで!」
「いや何でそれを林檎さんが?」
「お兄ちゃんはそう言うのまだ早いの!」
「高校生で何で早いのよ?」
「良いの!」
「全然良くないでしょう!」
ここで林檎とルルーシュさんの喧嘩が起こる。何故俺が象にぶっ飛ばされて吹っ飛んだのか理解不能だが、このままにしておくのもまずい。
母さんがなんとかしてくれると思ったが、ニタニタと二人の喧嘩を見て笑って居るだけで、全く動こうとしない。あやかさんはあたふたしているだけ。セイヨは凍り付いて居た。
「ちょっと落ち着けって2人とも、何をそんなに怒ってるんだよ林檎も!?」
「何抱き付かれてニヤニヤしてんのよ!? 変態!」
「いや別にニヤニヤ何てしてねえって!?」
「してる!」
こいつこんなに暴力的だったか? あの大人しい才女と言われた我が妹は何処に行った!?
どう収集を付ければ良いのか、シャオリンは先が思いやられる思いだった。




