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紅翡翠  作者: 量産型ザコ
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思考停止

また投稿遅れた!

 河口鉱区の山道沿いに流れるのは三道川だ。この道沿いは、今でこそ車で通れる程の広さが有るが、この頃は完全に獣道さながらの道と呼べる程の物では無い。ただ当然中原に出るにはこの山間の道を通らなければならず、天下縦横のマップで見る程の生優しい道では無い。

 現在俺たちは3000の軍を引き連れて居るが、当然今襲われたら数の優位など消し飛んでしまう程の長い縦列になって居る。



 




「3000の軍隊? ここに向かって居るのか!?」


「目的地がこの砦かどうかはわかりませんが、恐らく我等を捕らえる為に差し向けられたきゆう軍だと思われます」


「流石にちょっとやり過ぎたのでは有りませんか?」


「そう言うガロードさんだってノリノリだったじゃないですか!」


「まあ確かに…..そろそろ潮時ですかね、まあまた別の所でやれば良い事ですし」


「確かにやめられませんな、バーチャルとは思えないあの立体感は忘れられんでござる」


「ただ此方に向かって居る軍だけは片付けねばなりませんね」


「運営が言っていた先に来ているプレイヤーは本当に関わらなくて良いでござるか? 勿論僕は時間も金も無いんで、垢は要らないでござる」


「僕も良いですよ、暇も無いし、とりあえずこの世界で遊ぶだけ遊んで行きましょう」


「そうですな!」




 彼等は知らなかった。自分達がやって居る事が、人殺しで有り、本来人が犯してはならない事だと言う事をだ。運営からバーチャルだと言われ、目の前で悲鳴を上げていようが、血が吹き出ようが、死亡しようが、それはバーチャルで有り、架空の作り物だと信じきって居た。

 目の前で涙を流しながら許しをこう女性を無惨に自らの欲望の道具とし、必要無くなれば殺す。これを彼等は繰り返して居た。バーチャルなのだからと疑いもせず、目の前で起きて居る事実を調べようともせず、疑いを持とうとしない、これが今の現代人であった。

 政府が言う事だから、テレビで言っているから、大企業が言って居る事だから、医者が言うから、専門家が言うから。嘆かわしいがこれが現実だ。自ら疑問を持ち、それを調べようともしない。自身よりも、友人よりも、親兄弟よりも、他人の言う事が正しい。この様に洗脳されてしまって居る。本来人間が持って居た筈の、自らの直感と言う物を完全に無くしてしまった姿がこれだった。




 


 

「隠れ家が? 見つかったか」


「は! この山道を真っ直ぐ暫く進むと、右手の山間に古い廃村が有ります。そこに駐屯している全身金属で出来ている甲冑を付けた者多数見かけました」


「よし、現場付近に着いたら散開、廃村を取り囲む。ドラの合図で一斉攻撃を開始する。抵抗する者は切り捨てて構わない。一人も逃すな。行け!」


「承知!」


「場所がわかったのか?」


「ああ、一応この辺りはりょうえき州になるから、本来は捕らえてりょうえきに突き出さなければならないが、戦闘の場合はその限りじゃ無い。今回向こうとそれで話が付いてるから、無理して捕らえず、危険だと思えば殺ってしまって構わない」


「巫女さん達はどうするんだ?」


「兵500に将軍クラス一人を付けて扶風に先行させる。林檎ちゃんはそっちに混ぜた方がいいんじゃないか?」


「俺もそうしたいのは山々なんだが、言っても聞かないよ」


「だろうな、ならシャオリン、お前が守れよ」


「わかってる」



 15分程進むと、荒れた獣道の様な側道が出て来た。その側道が廃村へと続く道らしい。側道を進む途中で、セイヨの指示で兵達が廃村を取り囲む様に散開して行った。廃村へ入るには、この側道を真正面から行くか、張り巡らされた魔物避けの柵を壊して入るしか入れない様だ。周囲は山に囲まれて、道はここしか無い。だが無理して道なき山間部を駆け抜ければ逃れることは出来る。今回それすらも逃さないと言うセイヨの気迫が伝わって来る。周囲を囲むのは、その対策だろう。



「母さん、林檎、セイヨは本気だ。場合によってはPK(プレイヤーキル)すら有り得る。ムールさんやフジさんの話では、ここでPKしても向こうで死んだ事にはならないって言うが、殺人には変わりない。俺はもう覚悟を決めて居るから良いけど、無理する必要は無い」


「息子にそれをさせて平気で居られる母親が居ると思うの? 罪になると言うなら私は一緒に背負います」


「母さんの言う通りだよ? 何でお兄ちゃんだけがそれを背負わなきゃならないの? 男だからとか女だからって言うの私は大嫌いだよ」


「….そうか、ならもう何も言わない。でもこれだけは覚えておいてくれ、今ここに父さんは居ない、だから重要な事は俺が決める。これは男だからとか女だからとかじゃ無い。俺が林家の長男だからだ。良いね?」


「もうあなたも17才だもんね、昔なら立派な成人なんだから、私も従うわ。林檎も良いわね? シャオリンが家の長男、今父さんがここに居ないのだから、シャオリンの決めた事には従うのよ」


「うん、それなら仕方ないね、わかったよ」


 物は言い様だな、これなら母さんも静香も俺の言う事を聞くしか無い。古来より、その家の主が居ない時は、長男がその代役を引き継いで居た。日本だけでは無い、これは世界共通の文化だ。


 


「ミンメイは兵500を引きいて裏手に回ってくれ」


「了解よ!」


「シャオリン、リリィさん、林檎ちゃん、用意は良いか? ミンメイが裏手に付き次第突入する。向こうも恐らく此方の動きに気付いてるだろう。抵抗の意志を見せたら即座に戦闘開始だ」


「わかった」


「問題無いわ」

「うん!」


 ミンメイさんが裏手に周り、花火の様な物を打ち上げた。


 ボ〜ン!


 ドラが鳴らされた、突入合図だ。一斉に兵達が廃村へ向けて突入した。だが当然各家のドアが蹴り破られ、中からフルプレートの兵が飛び出して来た。当然抜剣している。これは明確な抵抗の意志である。つまりこの時点で戦闘開始だ。


「構わん! 全員切り捨てろ!」


 当然AI兵だ、切り捨てても血も出なければ、死体も残らない。俺も母さんもそれが解るとガンガン兵達を斬って行った。林檎は象に乗りながら、シャボン玉をプー! と出して居た。間違ってはいけない、あれは遊んでいるのでは無く、林檎も必死に戦っているのだ。どう見てもそうは見えないが…..

 しかも象ではなく、貘だった、心底どうでも良い…..



「オラ!」


 ガコーン!


 セイヨは巨大な戦斧(せんぷ)を振って居た。せんぷとは、とどのつまりがバトルアックスだ。少し違う様だが、見た目はおうやしの武器が似ている。フルプレートメイルという事で用意して居た武器だろう。フルプレートメイルに小型の片手剣などは効かない。最低でもロングソードは必要になって来る。その点このバトルアックスは、フルプレートメイルには最善の武器だ。

 戦い方としては力任せに斬るほか、突き崩すなどがある。

 また突きの状態にすると、まるで小さい盾が突き出ているようになっている為、剣や槍やこん棒などの攻撃を防ぎ、受け流すことが容易で、また斧の鎌状になっている部分で、首や腕や足、相手の武器や盾などを引っかける、柄で殴る、そして斧頭を蹴るなどで素早く振り回して戦う事が出来る。重量もソードなどよりは余程重いので、ある程度パワーが有る者が扱えば、ソードより余程破壊力が有る武器だ。



 まあ、ただ俺は……


 ヒィィィィィィィン!!


 ベコ! ベコ! ベコ!


 何も無い空間からまるで鉄の大球がぶつかった様な凹みがフルプレートメイルに付く。当然このまま攻撃を喰らい続けると………


バコン!


 完全に押し潰されるわけだが、それを一気に6人同時。スキル、機関行列だ。

 また公輪盤の右アームには、巨大なバスタードソードが握られている。このバスタードソードはスキル使用時のプラズマ発生機でも有るが、そのまま剣としての使用も出来る。巨大な右アームから繰り出されるバスタードソードの威力は強力で、それを振るうだけで数人一気に薙ぎ払う事が出来た。


「相変わらず無茶苦茶な戦い方だな!?」


「失礼な、スマートな戦い方と言って欲しいな? なんせ俺はここから一歩も動いて無いんだから。工匠って楽だよな? 俺はこいつに魔力みたいな物を通してるだけなんだぜ? まあどう戦うかの指示は出してるけどな」


「…….お前何も知らないんだな? よくそれでその力を使いこなせてるぜ」


「どう言う事だ?」


「お前公輪盤がどう言う存在か知ってるのか?」


「カラクリ師みたいなもんだろう?」


「これだよ、公輪盤は祭神、神の1柱だ。中華で言えば、哪吒とかそう言う存在だよ」


「公輪盤て神様だったのか!?」


「じゃなきゃそんな馬鹿げた力がある訳無いだろう? 確かに元々は人間だったが、弟子入りしたのが仙人でな、そこから神の技を学んだとされている。名は魯般(ろはん)神の1柱となり公輪盤(こうしゅはん)と呼ばれる様になった」


 これは初耳だった、祭神とは神社などに祭られて居る神を指す。つまり中国の何処かに今でもこの公輪盤を祭って居る寺院が有るのだろう。


 母さんの弓の冴えは相変わらずで、纏めて一気に複数を薙ぎ払って居た。そんな時、いきなり俺の足元から複数の槍が飛び出して来た。俺は直ぐに何か違和感を足元で感じ、飛び退いた。


「ち! 外したでござるか」


「ぴょんさんの攻撃を避けるとは、中々ですね」


 俺は見ただけでかなりイラッと来た。所謂生理的に受け付けないと言うやつだ。誰しも稀に居るだろう、そう言う感じの相手だ。今現れたこの2人は正に俺に取ってそう言う相手だった。そして即座に見ただけでわかった。こいつらプレイヤーだ。


「お前らプレイヤーだな?」


「そう言う君もそうなのでござろう?」


「その喋り方どうにかならねえのか? かなりイラッと来るぜ」


「そんな事言って良いのかな? ぴょんさんは君の何倍も強いよ? シャオリン君」


「だから? それがどうした? それよりお前らわかっててこの世界に来たのか? 一度入るとここでの死でしか外には出られないんだぞ?」


「そんなホラ話で僕達を惑わそうと考えてもそうは行かないでござるよ」


「お前るろ剣でも気度ってんのか? まあいいや、一応言っておくぞ? 信じる信じないはお前ら次第だ。この世界はリアルだ、ここでの死は本当の死だ。だけどタイムラインが違うから、俺たちの居た世界での死にはならないが、お前らが殺人を犯した事に変わりは無い。当然それをわかってて今まで多くの人を殺して来たんだろうな?」


「運営はそんな事一言も言っていない。つまり君は僕達を惑わせて勝ちを拾おうとしているね」


「与太話に付き合う必要はござらん。早いところ片付けてまた楽しむでござる!」


「そうですね、シャオリン君にはここで退場して貰いましょう」


「無駄か、わかってはいたけどな。俺だって初めは信じられなかったくらいだ。だけどよ? 例えバーチャルな世界だったとしても、無抵抗な女の人に好き放題ってのはどうにもムカつくんだよ。胸糞悪いんだよお前ら」


「偉そうに、君だって本当はやりたいんだろう? だけど家族で来たらそんな事出来ないから羨ましいんだね」


「八つ当たりも大概にして欲しいでござるな?」


 そこに猛烈な速度で高速の炎の矢が飛んできた。


「おわぁ!」


「うちの子をあんた達と一緒にしないで! シャオリンは例えここがバーチャル空間でも、絶対にそんな事はしないわ!」


 そして更に俺に聖後美夢がかけられた。


「ふざけないで!! お兄ちゃんは凄く本当は優しいの、私は身体が弱くていつもお兄ちゃんに背負って貰ってた。どんなに私が足手纏いになって居ても、お兄ちゃんは何時も笑って私を背負ってた。あんた達何かとお兄ちゃんを一緒にしないで!」


 猛烈に怒りを露わにした林檎がそこに居た。ここまで激怒している林檎を俺は初めて見た。


 林檎…..覚えてたのか…….だから最近俺から離れて…..




 林檎は幼い頃から持病が有った。先天性心疾患、心臓の血流が悪く、チアノーゼ症状を引き起こす。それ故に激しい運動が出来ず、発育も悪い。容姿端麗でモテる子だったが、そう言う部分も後押しして居た。血流が悪く、青白い顔をして居たので、薄明な美少女と言う感じが出ていた。

 林檎はそう言う理由も有り、友達が居なかった。また両親から危ないので、常にシャオリンと外に出る時は行動する様に言われて居た。常にシャオリンが面倒を見ていたのだ。何処に行くにもシャオリンが一緒で有り、林檎は頼りになる兄を誰よりも信頼して居た。兎に角お兄ちゃん子だったのだ。幼い頃は何処に行くにもシャオリンが背負って居た。多少自分でも歩けたが、やはり幼く弱い心臓に、長い徒歩はかなり応えた。

 だが成長するにつれ、自信がシャオリンの足手纏いになって居る事に段々と気がつく。それでもシャオリンは、林檎を笑って何時も背負って外に行って居た。友達とプールに遊びに誘われて居ても、林檎が入れないからと断って居たのも見た。林檎はそれが嫌で、心無い事をシャオリンに言い、自ら離れて行ったのだ。シャオリンの足手纏いにならない為に。


 本当は誰よりもシャオリンの事が好きなのに、それを言えばまた自分はシャオリンの足手纏いになる。シャオリンが優しい事を林檎は誰よりも知っていた。だから口には出せなかったのだ。

 そんな大切なお兄ちゃんを今目の前の男達は侮辱した。林檎は今生まれて初めて殺意と言う物を抱いた。

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