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紅翡翠  作者: 量産型ザコ
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和道流空手道

昨日の分、投稿遅れました。

 青熊は休む事無く、ぶっ通しですうざんから虎牢関迄飛んだ。そして虎牢関ではフジがそれを出迎えた。だがすうざんでの異様な者達による攻撃、そこでフジは直ぐに思い至った。


「青熊さん、申し訳無いが今ここにアフロさんもヨウヘイさんも居ません。魯陽攻撃に出ています。ですが今の話を聞く限り、恐らくその軍は新たな転移者だと思えます」


「新たな転移者ですか!?」


「ええ、確証は有りませんが、恐らく間違いない。ならその軍の別働隊が魯陽にも向かっている可能性が有る。申し訳有りませんが、そのまま青熊さんは様子を見に行って貰えませんか? 一応こちらでも応援の軍は組織しておきます」


「…..わかりました。確認して来ます」



 


 魯陽へ向かって居る途中、青熊は馬を走らせて居るザコを見つけた。



「ザコさん!」


「おお! 青熊さんか、良いところで有った。すまんが青熊さん、ヨウヘイさんと軍師殿が危ない、フジさんに援軍の派兵を頼んで来てくれんか?」


「では其方でも現れたんですね?」


「うむ、異様なフルプレートを着込んだ軍である。もしやすうざんでも?」


「はい、ですがあそこは自然の要害、アフロさんの戦術も使えるので、直ぐにどうこうは無いでしょう」


「そうか、では援軍の要請をしにすまんがまた戻ってくれ。俺はこのまま軍師殿達の方へ戻る」


「わかりました、要請をかけてからまたこちらに戻ります! だが無理はしない様にしてください」


「わかっておる、頼んだぞ!」


 青熊はフジに援軍の派兵を頼み、急ぎザコの元まで戻る。ザコはまだ馬を走らせていたが、やはり青熊の飛行速度は半端では無かった。ザコを拾い、そのまま高速で戦場へと青熊は飛んだ。




 


 

 陣立てはそう崩れ、翡翠軍は壊滅状態だった。ヨウヘイ、アフロ共に瀕死、そして


「お前には恨みはないけどな、とりあえずポイントアップの為に倒させて貰うぜ! 残りは画面で俺の活躍でも見てな!」


 その時だ、上空から槍が突き刺さった。


「何だ!?」


「ヨウヘイさん……軍師殿」


 ザコが降りて来た。そして槍を投げたのは、やはり青熊だった。


「よくも!!」


「青熊さん、2人抱えて飛べるか?」


「え? 何とか」


「ならヨウヘイさんと軍師殿を抱えて直ぐに逃げた方がいい」


「ちょっと待ってください、ザコさんは!?」


「誰かが残らなければ追撃が来るであろう?」


「冗談じゃない、仲間を見殺しにして自分だけ逃げるなんて事が出来るわけが無い!」


「状況をよく判断したほうがいいのでは無いか? ヨウヘイさんと軍師殿が共に倒されておる。ここで俺と青熊さんだけでこいつらに勝てると思うか?」


「それは………無理…..ですね」


「ならばここは俺が何としても青熊さんが逃げる時間を稼ぐ」


「一緒に!」

「俺に構うな! このままでは軍師殿も危ない!」


「逃すと思うのか? 悪いけどお前らもここで倒させて貰うぜ?」


「早くしろ! 俺か軍師殿とヨウヘイさん、どちらがこの先も同盟に取って必要な存在かわかるであろう!!」


「く! …….絶対に戻ります! 援軍を引き連れて必ずに戻りますから、それまで耐え切ってください!」


 青熊がヨウヘイを担ぎ、そしてアフロの所迄飛ぼうとしたが、当然ハナモゲラはそれを阻止しようと前に出た。だが……


「逃すかよ、うわ! テメエ!? セコイ真似を」


「馬鹿か貴様は? ここは戦場である。どんな手を使おうが関係あるまい?」


 ザコは地面を蹴ってハナモゲラの顔に砂をかけ、目潰しをした。そして即座にアフロの元まで走り、今度はトン吉の顔に手掴みで砂を投げつけた。


「うわ! 何だ!?」


「悪いが追いかけさせる訳には行かんのでな?」


 そこに目を拭ったハナモゲラが現れる。


「それで? お前一人で俺らの相手をしようってのか? そんなショッパイ能力でよ?」


「確かに、禿げ頭に猫耳とかギャグだよね?」


「ふむ、可愛いであろう?」


「ふざけんなテメエ! 折角のポイント不意にしやがって! 生きて戻れると思うんじゃねえぞ!」


「そうか、だがな?」


 ザコが地面を蹴って即座に動く。


「後ろです! ハナモゲラ」

「がぁあ!」


 ザコは踏み込んだと同時にハナモゲラの左腕を取り、回転させて抑え込んだ。更に左脇腹に突きを思い切り入れた。如何に黄月英と言えどもステータスはそれなりに有る。ザコも一応レベルは120以上は有る。


「貴様達舐めすぎである。確かに俺の能力は低い。だがリアルでも俺が弱いと思うのは大間違いである」


 そしてザコは構えを取り、今度はトン吉の方へ向かう。


「ふざけないでください!」


 トン吉は当然超速で剣を抜き、ザコの方へ向かい横凪を繰り出した。だが……


「え? ……真剣白刃取り!? グハァ!」


 ザコは取った刀でそのまま絵の部分でトン吉の喉を突いた。


「知らなかったのか? 真剣白刃取りと言うのは空手の奥義である」


「まさかテメエ?」


「俺は和道流空手初段、実際は二段の実力を持っておる。言い忘れたが二人を俺は逃したのでは無い。その逆である。俺が実は強かったとか言われるのは、俺のキャライメージに反するからな? 見られたく無いからこの場から去らせたのだ。いいか、ヨウヘイさんも軍師殿も、前の同盟からの俺の仲間で有る。それを痛ぶってくれた礼はこの程度では済まさんぞ!」


「い、幾ら空手やってるからってSRキャラがサーバント能力を持つ俺たちに敵う筈がねえ! この宝具でぶっ殺してやる! 食らえ! ブフォ!」


 ザコはまたしても土を蹴り、今度は砂をハナモゲラの口の中にぶっかけた。


「fightは俺も少しやっていてな? 宝具は真名を口にしなければ解放されんのであろう? この状況で言わせると思うか? アニメでは無いのだ、態々宝具の真名を貴様が言い切るまで待つ訳が無いであろう。それにな、和道流空手の極意は先手必勝!」


 ザコはトン吉の右回りに高速で回りながら、左上段前回し蹴りを入れるが、トン吉はそれを避ける。だがそのまま今度は足を後方にスライドさせて中断後ろ回し蹴りを蹴り、それがトン吉の背中にヒット。トン吉を蹴り飛ばした。その後即座に向きを変え、今度はハナモゲラの右側面に位置取り下段転身脚で回し蹴りを入れると見せかけ、それをフェイントにし、回転しながら立ち上がり、屈んだハナモゲラの直頭部に踵落としを入れた。


「つ! おぷがぁぁ! う、動きがわからねえ! 何だあの動き!?」


「俺が最も得意とする、変形ナイファンチである。ナイファンチは空手道の基本の技である。貴様らがよくテレビなどで見ているフルコンタクトの空手というのは、皆四大空手と言われる、和道流、剛柔流、糸東流、松濤館流の空手から分派した物である。つまり今俺が使って居るのが元の本来の空手道だ。そしてこの和道流空手と言うのは、古武術である神道揚心流柔術から発展した空手道。その神道揚心流柔術とは、戦場で刀を無くした武士が己の身体を武器に戦う術で有る。つまり真の戦場の術! 貴様ら素人が如何に戦の真似事をしようが、真の戦場の戦いを永遠とその遺伝子に組み込んで来た俺の空手に通じる訳が無かろう!」


 確かに和道流空手道は強い。そしてザコの言う神道揚心流柔術の説明も本当だ。だがこれはザコのハッタリである。ザコとハナモゲラ、そしてトン吉のレベル差は如何とも埋め難い程の開きが有る。如何にリアルでザコが強かろうとも、この世界で超人的な能力を身に付けた2人に本来は通用する訳が無い。

 ザコはハッタリを効かせる為に、2人に攻撃を一切させず、まずは一方的に攻め込んだ。そしてザコが本当は凄まじく強いとハッタリをかませて戦意を失わせる作戦を取った。つまりこれは心理戦だ。ようは場数が物を言うと言うやつだ。

 ザコは若い頃やんちゃをしていた部類の人間だ。空手を習い始めたのも、喧嘩に負けたく無いと言う理由から初めた物だった。そして若い頃は毎日喧嘩に明け暮れた。更に空手の推薦で高校にも行った。組手も真剣に取り組んで、高校県大会でベスト8の成績も取って居る。

 つまり戦闘慣れと言う部分に置いては、ザコはこの世界に入り込んだ誰よりも場数を踏んで居たのだ。


 対するハナモゲラとトン吉は、殴り合いすらまともにやった事のない、ヒキニートとフリーターのゲーマーだ。戦いの場数と言う面では、ザコの足元にも及ばない。一方的に攻められる事で、2人はザコに恐怖し、そして戦場と言う言葉で畏縮してしまったのだ。これが修羅場を何度も潜って来た者が相手なら、今頃ザコの死体が転がって居ただろう。


「良いか、俺はもうおっさんだ、貴様らガキのお遊びくらいなら寛大になれる。だが忘れるな、今度翡翠のメンバーに手を出せば、俺は全力で貴様らをぶっ殺しに行くぞ!」


「は、はい!」

「すんませんでした!」


「ならばよし! 今回だけは大目に見てやろうではないか! ブフォフォフォフォ!」


 ザコは思った

 

 馬鹿な奴等で助かったのである!!





 ザコが2人を相手に戦って居る頃、青熊はアフロとヨウヘイを抱えながら、悔し涙を浮かべながら飛んでいた。こんな能力を持って居ながらも、仲間を見殺しにして逃げるしか出来ない自分に悔しさと怒りが込み上げていたのだ。


「お、俺を……ここに置いて、アフロさんだけでも…先に」


「ヨウヘイさん!? 目が覚めたんですね?」


「ああ…..情けない、本当に….青熊さん、俺をここに置いて行ってくれ。奴等は追手を差し向けて居る筈だ。この速度じゃ逃げきれない」


「ダメです…それでは身を挺して僕らを逃してくれたザコさんに申し開きが出来ない」


「何!? …..ザコさんが一人でだと!? だめだ! 今すぐ戻ってくれ!! ザコさんを一人で置いて来るなんて!?」

「僕だって悔しいですよ!!」


「青熊さん!?…..」


 ヨウヘイは青熊の薄らと浮かんで居る涙を見逃さなかった。大の男が涙を流す程の悔しさ、それは相当な決断だったに違いない。


「悔しくて悔しくて….もうどうにかなってしまいそうだ。でもザコさんはこう言ったんです。自分とヨウヘイさんやアフロさん、これからの翡翠に取って、何方が必要かわからないのか! と、僕に怒鳴ったんです。すみませんがこんな所にヨウヘイさんを置いて行く訳にな行かない。ヨウヘイさんはザコさんの思いに応えなければいけない。そうじゃなきゃ、僕だって納得出来ないですよ? 何の為にこんな悔しい思いで逃げてると思って居るんですか?」


「……すまなかった、浅はかな言葉を言った。戻り次第直ぐに回復してもらい、ザコさんを助けに行こう」


「はい、あそこにはフジさんが居る。彼の能力があれば、絶対に負ける事は無い」






 


 

 青熊から援護要請を受けていたフジは、直ぐに翡翠メンバーの一人、ロランを将軍とした兵5000を編成した。ロランは主力メンバーと言っても差し支え無い程の戦力を持っていた。だが何故ロランを主力メンバーとして扱っていなかったのか? それは彼のプレースタイルに合った。ロランは所謂リアタイメンバーでは無い。彼は夜勤が仕事なので、傾国戦などは常に駐屯メンバーとして、城に駐屯するだけだった。

 ロランの職業は、大学病院の医者であった。彼は夜間救急医療担当で有り、昼夜逆転の生活を送っていた者だった。翌日が日番の日だけ、傾国戦に参加していたのだ。

 そしてロランの獲得能力は、浅井長政、この能力で特筆すべきは暴走である。

 浅井長政のスキル、エアロバイクは、2ターンの間、自身が暴走(聖護)状態になり、攻撃力が120%増加、筋力値と敏捷値と知力値が50%増加、受けるダメージが20%増加。敵6名に740%の物理ダメージを与え、さらに自身筋力値×7のダメージが加算される。そして、残HP%が最も低い敵を4回追加攻撃し、 自身攻撃力50%のダメージが加算される。

 毎回攻撃前、場内敵生存者が3人以下の場合、100%の確率で2ターンの間、敵を撃砕状態にさせ、物理防御力と法術防御力を80%減 少、会心攻撃された時、ダメージを20%増加。敵の残HP が50%より低い場合、敵の状態異常耐性を100%無視する。


 もし運営が新たな召喚者を作ったのなら、こちらを上回る能力を持たせる事は誰が見ても明らかだ。ならば魯陽攻撃を今は諦め、一度撤退して体制を再度見直す事が急務だろう。


「ではロランさん、お願いします。ただくれぐれも」


「わかっています、アフロさん達が苦戦している様なら、迷わず撤退を選びますよ」


「そうです、青熊さんの話では、見た事もない様な軍隊で、フルプレートアーマーを付けていたと言います。なら私達の知らない能力を持って居る事も充分考えられる。それこそ魔法なんてのも有りだ。

 先日の自衛隊と言い、正直どんな者がこの地に現れるか予想も出来ない状況です。今は撤退して状況を整理する必要がある」


「了解しました、では出陣します」


「お願いします、必ず皆を無事に」


「勿論です!」


 



 ロランが5000を引きいて出陣して数刻、青熊は既にホウホウの程で飛んでいた。そして青熊は直下に魯陽へ向けて進軍する軍を見つける。軍旗は翡翠の軍旗の翡の文字とロランを表すターンAの文字。

 ロランの本名は、小山内 恭一だが、その名は有名なロボットアニメの主人公から取っていた。ロランセアック、それが彼のプレイヤー名の由来で有り、ターンAと言うのはそのアニメの名だ。

 


「翡翠軍、ロランさんか! 助かりましたよヨウヘイさん! ロランさんが応援に来てくれました!」


「そうか、よかった….」


 青熊は一直線にロラン軍へ向けて降下して行く。


「青熊さん!? ヨウヘイさんに、アフロさんか!?」


「ロランさん!!」


「これは酷い怪我だ、青熊さん、とりあえずアフロさんとヨウヘイさんの応急処置を!」


「俺に構わないで、アフロさんを頼みます。俺はこの軍半分を引きいてザコさんを助けに」


「ダメですよ、目の前に重症患者が居る。まず医者としての優先事項は、その患者の命を救う事にある。よってヨウヘイさんの意見は即時却下。誰か救命丹を」


「は!」


「それで? ザコさんを救出と言いましたね? 青熊さん、状況を教えてください」


 だが青熊は何も答えなかった、いや、答えられなかったのだ。悔しさと怒り、更に自軍と合流出来た事の安心感、それらが交叉して、青熊の涙腺は遂に決壊してしまって居たのだ。


「…..そうですか、では2人の応急処置が済み次第、その怒りをぶつけに行きましょう」


「はい!」


 ロランは青熊の涙を見て、直ぐに状況をある程度掴んだ。男がこれ程の涙を流す意味、それは耐え難い屈辱と、例え用の無い怒り以外有り得ない。


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