第弐拾玖話 結
「私たちが知っているのは、音築という名前と土地神だということだけです」
「マスターもご存知なんですか? 音築を。僕たち普通とは少し違って、妖怪を見ることが出来るんです」
「おやおや。妖眼というものですか。これはまた珍しい」
「妖眼を知っているんですか!?」
飲んでいたミルクセーキを、危うく吹き出しそうだった。
妖眼という言葉を知っているのは、妖と近い人や私たちのように、能力として持っている人のみ。
ということは。
「マスターも妖眼なんですか? 私たちのように」
「妖眼ではありませんよ。ただ、半妖なんです。音築様をお守りする、社守をしています」
「音築に会いたいのですが、会うことは出来ますか? 結界のことで、話せたら良いなと。無理にとは言いません。俺たちで何か力になれるなら、手伝いたいなと思っています」
そうですか。と、マスターは笑顔で答えてくれた。しかし、その後の言葉はまだ分からない。
「音築様は、お出掛けになられています。お社に向かわれても、音築様はいませんよ」
「そうですか。分かりました。すみません、お手数お掛けしました」
「いえいえ。ごゆっくりどうぞ」
マスターがカウンターに戻った後、私たちは再び話し合う。
「この後キュアライフに行くわけだけど、気をつけよう。僕たちは妖が見えるから、対応出来るけど、桃麻氏や吾妻さん、高坂先輩は見えないから」
「はぁ。俺たちも華鈴たちみたいに、ようかん? とかいうやつだったら良かったのに」
「桃麻、ようかんじゃなくて妖眼。ようかんだと、和菓子になっちゃう」
「紛らわしいな。でも妖怪に会ってみたい!」
「桃麻氏。そう言えるの、今だけだぞ」
「あたしは、三人に守って貰おうかな」
「私も! 響希君に助けて貰う!」
「任せて、美穂さん!」
あれ? さっきからずっと喋っていない人がいるような?
私たちだけで盛り上がって、気づくのが遅れたけれど。
「須崎さん?」
「そういや、舜氏喋ってないね」
「舜氏、大丈夫か?」
「大丈夫。大丈夫だけど、まだ何と言うか。心の準備が出来てない」
「そんなのゆっくりで良い。俺たちだって、見えるからこその苦労はあった」
「そうだよ。僕たちだって、すぐに理解したわけじゃないよ。ね、りんちゃん」
「そうですよ、須崎さん。ゆっくり慣れていきましょう。私たちも相談に乗れますし」
私たちの言葉で強張っていた表情を和らげ、少し明るい表情に変わった。
「良いよな~。級長はさ、俺から見れば羨ましい悩みだからな? 妖怪見れるんだぞ!? 俺なんてな、シキさんだっけか。妖力の強い妖怪が運良く見れるくらいだぞ!」
「あたしは、てまりちゃんだったね。あたしを庇って、亡くなっちゃったけど」
「いいな~。皆は妖怪と関われて。私なんて、何もないからね?」




