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紅蓮荘奇譚 弐  作者: 天城なぎさ
第弐拾玖話 異界転移
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第弐拾玖話 陸

 虫の知らせは、良くも悪くも当たるという。

 斑牙の言う通り、何かが近づいているのならば、これから向かう『ガーデン&ふれあいパーク キュアライフ』に向かう道中や、その場所で警戒する必要がある。


「音築に会う必要がありそうだな」

「そうだね。僕たちで警戒するにしても、結界を張っている以上、音築に会わなきゃ」

「私たちだけなら会いに行けるけど、桃麻たちはどうするの? 須崎さんは妖に対して体調を崩すから、土地神に会いに行くのは……」

『あの方、妖眼(ようがん)が開花しますよ』

「須崎さんが、妖眼!?」

「舜氏がだと!?」

「そう言えば、斑牙言ってたね」

『まさかお前たち、気付かなかったのか?』

『あの人の妖眼の開花、そろそろじゃないかな』


 驚く私と響希君を他所に、黒牙と白牙は須崎さんに向かっていく。


『ヤッホー。ボクの声、聞こえてる?』

『おいおい、白牙。この少年は、開花したばかりなんだぞ』

「えっ、犬? えっ? 喋ってる……」


 少し顔を上げた須崎さんは、この世のものとは思えない何かを見るような目で、訝しげに二匹を見つめている。


「級長、大丈夫か? 犬なんていないけど」

「笹本は見えない? 黒い犬と白い犬が」

「舜、本当に大丈夫?」

「みずきも見えない?」


 そんな会話を聞いた私たちは顔を見合せ、本当に須崎さんが妖眼の能力を開花させたことを実感した。


「見えてるよね? 須崎さん」

「見えてるな」

「見えてるね。舜氏」

(わたくし)たちが言った通りでしたね』


 これで、土地神に会いに行ける。だけど。

 本来の目的地は、『ガーデン&ふれあいパーク キュアライフ』。


「土地神に会いに行く? それとも本来の目的地に行く? 僕はどちらでも良いよ」

「私としては、キュアライフに行きたい。でも、結界が張られているなら、見過ごせない」

「俺は、土地神に会いに行くのが最優先だと思う」

「よし。じゃあ、話し合いしようか。舜氏の体調のこともあるし、何処かで休憩がてら、話し合おう」


 (つかさ)君の提案に、私たちは四人の元へ。


「ちょっとした話があるんだけど、僕たちは今、とある土地神の結界の中にいます。その事で土地神に会うか、キュアライフに行くかの、二択が迫られています」

「話し合うってこと? それなら、何処かで休憩する? 舜君の体調もあるし」

「簡単に調べたけど、近くに喫茶店があるみたい。舜、少し歩くけど、立てる?」

「なんとか。ごめん、笹本。手貸して」


 桃麻に支えられながら、立てた須崎さん。

 私たちは一先ず、吾妻さんが調べてくれた喫茶店へ向かうことにした。

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