十月十五日~二十一日
十月十五日
十月十六日
何度も死ぬかと思ってきたが、今回ほど死ぬかと思ったことはない。
グレイホークは狙撃で大破。
揃え集めた装備も当然全ておじゃん。
それどころかキーグローブまでぶっ壊れる始末だ。
漸く森を抜けて日記を書く時間が出来たが、もうヘトヘトで何から書けばいいか思いつかない。
思いつかないときは、寝た方が良い。
残存食料、二日。
水、一日(簡易浄水装置はもう限界なので破棄)
ハンドガン残弾十二発。
キーグローブC所持。
十月十七日
一晩寝て多少はマシになったが、もう水がない。
食料も時間の問題だ。
おかしいな、日記を数ページ前にめくるとまだまだあった筈なのに。
しかし、残念な事にまだ人里まで遠い。
山奥のガードレールもないクソみたいに長い道を徒歩で辿るしかない。
九月二十八日にキーグローブに登録したホルニッセを転送で呼び寄せたい所だが、二日前に狙撃されたということはこの辺りはヤエヤマ解放戦線の勢力圏である可能性が高い。しかも今のホルニッセには使い道の分からない上にパーツの足りない謎装備がくっついているだけで武装がない。
C級でも脆い方のホルニッセを丸腰で使って万一敵に発見されでもしたらなかなかに悲惨なことになるだろう。最低でもコンテナを発見して装備を一つ手に入れたい。
でも、ガイストの長身も目も失われた今となってはコンテナ一つ探すのも一苦労だ。
20m以上の鉄の箱を見逃すことなんてあるかと思うかも知れないが、周囲は見上げると首が疲れるような木々が生い茂った山奥だ。探し始めてから気付いた。馬鹿な俺だ。つらい。
残存食料、一日。
水、なし。
ハンドガン残弾十二発。
キーグローブC所持。
十月十八日
口の中に涎がなくなってきたのでもうホルニッセを呼び出した。
涎がないのは脱水症状の証だ。
疲労困憊で身体も限界だった。
そもそも山を抜けたところで食料が手に入る確証もないので賭けだった。
結果を言えば、山は抜けられなかったがヤエヤマ解放戦線にもターミネイターにも見つかることなく進むことが出来た、水も食料も今日口にする分だけは手に入れたが、見た目はあり合わせの草を水と塩で煮込んだような粗末なものだ。腹には溜まらないがないよりマシだろう。
腹が減ってひもじい気持ちを誤魔化すために早めに寝ることにする。
残存食料、なし。
水、なし。
ハンドガン残弾十二発。
キーグローブC所持。
十月十九日
飲まず食わずで丸一日。
世界がこんなになる前の俺なら途中でフラフラになったかもしれないが、人間は簡単に死ぬ性質と意外としぶとい性質の二種類を併せ持つ。それはそれとして、あと少し進めそうだがガイストを隠すのに丁度良い場所があったので今日は早めに眠り、目が覚めたら活動を再開することにする。
眠いかと言われると微妙だが、目をつぶって横になっているだけでも休息効果はあるらしい。
プラシーボ効果でも何でも、その言葉を信じて俺はずっと生きている。
残存食料、なし。
水、なし。
ハンドガン残弾十二発。
キーグローブC所持。
十月二十日
昨日漸く民家のあるエリアに到着して必死で水と食料を確保して回ったが、既に漁られた後なのか何もなかった。
だが、今の世界では最後まで諦めないことが肝要だ。
その人生哲学(というと格好付けすぎだが)が役に立った。
ターミネイター由来の完全食料。
饑えた状態で食べてもクソほどまずいが、これがあれば暫く生きられる。
残されたノートに書き込まれた内容を見るに、以前ここに滞留していたヤエヤマ解放戦線が回収したものの、使い道が見つからず放置したようだ。近くにはこの黒い塊の特性を調べようと煮たり焼いたり混ぜたりして使い道を模索した痕跡があった。最終的には上手いこと塩分を抜けば肥料になるかもと書いた辺りで記録は終わっている。ノートが回収されなかった理由は不明だが、結局塩分を抜く方法が見つからないとかの理由で諦めたのだろう。
この世界でメモや記録を書き記している人間がいることに妙な感慨を覚える。
出来れば敵対したくはない。いや、訂正すると誰とも敵対したくはない。
ともあれ、食べている時はあんなに苦痛だったのに、いざ食べ終わると身体に栄養が行き渡り頭が冴えているのが腹立たしい。水も少ないがギリギリ確保出来た。しかし塩がない。塩がないと料理が料理以下の代物になるので完全食料をひたすら食べるしかなくなる。そんなことをしてたら俺の精神が死ぬ。
とりあえず今日は休むが、明日は気合いを入れて食料を手に入れよう。
残存食料、五日(ただし完全食料のみ)。
水、一日。
ハンドガン残弾十二発。
キーグローブC所持。
十月二十一日
(何かを暫く書いた後、それを滅茶苦茶に塗り潰して読めなくした形跡がある)
色々と調べてみたが、この辺りは既にヤエヤマ解放戦線が放棄した拠点跡のようだ。シャングリラとの前線からほど遠いこの場所が放棄された理由については推測するしかないが、通信網さえない今の世界では事故か何かで手放すこともあり得ると思う。
つまり何が言いたいかというと、この辺りは荷物を全ロスした俺が暫く逗留して準備を整えるには思いのほか条件の良い場所だったということだ。これは嬉しい誤算だ。これは焼き肉祝いである。
……肉は自然死したてのタヌキの肉だが。
ちょっと臭いし固いが、あの石油の塊みたいなクソマズ食料と違って食べ物感があるだけ非常に有り難い。美味しい部位はある程度残してスモークに挑戦したが、とりあえず食べられるものは出来上がったので保存食に加える。
捨てる神あらば拾う神あり。
何事も前向きが一番だ。
残存食料、七日(うち完全食料五日)。
水、七日。
ハンドガン残弾十二発。
キーグローブC所持。
久々になんか書けそうなので書いてみました




