-転移装置突入-
今回はちゃんと間に合いました。
統一歴176年9月7日 太陽系外縁部 転移装置付近の宙域
イチキシマヒメ艦橋下部CIC(火器管制室)は静まり返っていた。
誰もが空いた口を閉じることが出来なかった。絶句している。それに近いような感じだ。彼らは自分たちが放った砲弾の威力に驚愕していたのだ。イチキシマヒメの下部に装備された2門の大口径砲。電磁場の力で砲弾を放つ電磁砲それを大型化し固定砲として搭載したものだ。再装填、最充填に時間はかかるものだが、威力はそれ相応ものだった。
現にたった一撃で敵の戦艦を轟沈させることが出来るた。そして何よりこの状況を作り上げた理由は別にある。
「まさか出力が45%でこの威力なのか...」
震えながら1人のクルーが話す。
そう、電力の充填率は完全ではなかった。むしろ半分の電力も充填ができていなかったのだ。
「これは、この威力があれば敵の要塞や、コロニーなんかも一撃で」
また1人立ち上がり声を上げる。しかし、
「違う!!!」
艦長席とは反対側、司令長官の席に座るマルクス・シュミットだ。
「我々は敵を殲滅する訳では無い。我々は彼らに戦争の意思はないことを伝えに行くのだ。自衛はしても敵を滅ぼす行為はしない。」
それを聞いたクルーたちは、2度も同じことは話さなかった。
同日
たけしま級強襲揚陸艦一番艦たけしま
「まさか、実体弾であの帝国艦を沈めるとは...、しかも一撃で。私たちは地球軍を敵に回さなくて正解だったようだね」
ロイは特別に用意された一人部屋で、紅茶の匂いを嗜んでいた。重力制御ゾーンなので紅茶が宙を舞うことは無い。
「そろそろ、転移装置へ到着する頃でしょうか...」
誰かが扉をノックする。
「カルミナ・フロン、エリス・バーズン・ウッドワードです」
「エリスか入れ」
「失礼します」
挨拶とともに入室。
「セイル・パブアーこれより短艇にてイチキシマヒメへ向います。支度を」
セイル・パブアー、地球で言う大将の階級に相当するものだ。
「あぁ、わかった今行く」
最後に紅茶を少し口へ流し込む。
「地球の紅茶も悪くは無いな」
「えぇ、私もそう思います」
エリスとロイはたけしまの艦尾格納庫へと歩みを進めた。
同日
イチキシマヒメ ブリーフィングルーム
大型艦といえど、どこの艦艇に共通することの一つ。ブリーフィングルームがあまり広く作られていないこと、もちろんイチキシマヒメも例外ではない。今ここには、各艦の艦長、BB隊、宙間航空戦闘機隊の各部隊から小隊長たち、それ以外にも共和国軍メンバー数名が集められている。まるで巣に集まっているミツバチのように。
正面の大型液晶の前にはエリカ、ロイ、マルクスの高官三名が肩を並べて座っている。
「これより作戦概要を伝える」
ケルンが手元にあるタブレット端末の内容を読み上げる。
「本作戦は転移先の宙域の安全を確保する作戦である。」
今現在、転移先は共和国軍の中域であるものの。先程戦闘があったように敵の艦艇も使用している可能性が出てきた。転移先に敵艦が待ち伏せをしている可能性もある。そのため転移先で戦闘になる可能がでてきた。偵察用のドローンを出そうにも、転移先は通信可能な宙域では無い、よって転移先にはBB部隊を転移先へ送り込む。そして、必要ならば転移先の中域で戦闘を行い最低安全を確保してもらいたい。安全を確保が出来次第イチキシマヒメ、イシコリドメを突撃させ敵部隊に対して攻撃を開始する。
「以上が、天号作戦の概要である。今回の作戦には先導としてエリス・バーズン・ウッドワード殿に同行してもらう」
「どうもエリス・バーズン・ウッドワードです。よろしく」
そう言いながら目の前に並ぶ軍人たちの中から星空を見つけ微笑む。
「あの泥棒猫め...」
鈴が鬼のような形相になっているのは言うまでもない。
「敵勢力が確認されない場合どうすれば」
「その場合は30分程度その場に留まり周囲警戒をしてもらう。その後、数機の戦闘機を帰投させ状況を確認次第艦隊を動かす」
エリカが立ち上がる。それを見て、他の軍人らも立ち上がる。
「今回の作戦が成功すれば我々は帝国に対して反抗に出れる。これは停戦を申し出ることとは矛盾していることだ。しかし、ここを取られた場合彼らは確実に地球を落としに来る、それを阻止するのだ。今こそ奴らの首元に楔を打ち込み『チェックメイトだ』と伝えてやろうじゃないか」
このゲートを掌握すれば逆に地球軍は帝国に対して攻撃をする機会が増えるだろう。それを知れば帝国が停戦の申し出を受けると、そういう考えなのだ。
「では、時間合わせ」
「0に合わす。十、九、八...、二、一、ハイ!!!イギリス標準時間10:00作戦開始」
少しの間の静寂の後。
「地球協商国民に富と自由とがあらんことを」
エリスの敬礼に、皆敬礼を返すのであった。
「本作戦よろしくお願いしますね。星空さん」
「あぁ、よろしく。にしても嬉しそうだな」
それを聞いてエリスは頬を朱に染め、体をくねくねしながらこう答えた。
「星空さんと作戦を共にできるなんて、私嬉しんですよ」
との事だ。星空はなぜ自分と作戦を共にできることが、そんなに嬉しいのか皆目見当もつかなかった。その後彼らは自分たちが駆る愛機の元へ向かっていった。
「こちら3415各部点検完了した。」
『了解、こちらも確認した。進路クリア、障害物なし、3415発艦を許可する。戦果を期待してますよ女神様』
などと最後に冗談を混じえてくる。
「了解、3415発艦する。女神様はよしてくれ」
エンジンスロットを全開にする。それと同時に電磁カタパルトが勢いよく星空の愛機、クノイチを射出する。
出撃したBB、空間戦闘機隊は編隊を組み1個中隊ずつ転移装置への中と姿を消して行ったのだった。
そのほかの者たちは、転移装置に突入する部隊を敬礼で送り出すのであった。
転移装置の入口、リングになっている部分の内側を通った後には青白い光が残っていた。
どうも、最近入試に合格して肩の荷が下ろせた三富三二です。
最近は朝と昼とで気温の差が激しくなってきましたね。自分は寒がりなので朝厚着をして、昼には暑くて着てきたものを脱いでます。
そんな事はどうでもいいです。
今回はついに転移装置まで辿り着きました。
さぁ、ここからどうするか...
あっ、ちなみにストーリーはどっかの宇宙を駆け、銀河の彼方へはるばるのぞむ宇宙戦艦が元ネタですね。
あとは、後半の一部分が金髪のロリコンが隕石落とす作品のオマージュも入ってます。(おいコラ)
好きな人はわかるのではないでしょうか?
では、今回はここまで。
最後までお付き合いいただきありがとうございました。次会うのは来月になりすね。ノシ
制作時BGM 幽閉サテライト 「甘く鋭い棘」




