-転移装置奪還作戦-
待たせたな!!!
(ごめんなさい)
統一歴176年9月7日 太陽系外縁部
星空達が太陽系を離れてから早くも1週間の時が流れた。
何度か帝国軍の襲撃を受けながらも、目標としていた連邦共和国の設置したワープ装置へと着実に近ずいていた。
「にしてもあれね、ここ最近襲撃が少ないわね」
そんなことを呟きながら、鈴は手に持った宇宙用の烏龍茶を一気に飲み干す。
「襲撃が少ない方が出撃もしなくていいから楽だと思うんだが?」
「そりゃあ私は星空みたいに戦闘狂とかじゃないから出撃するの嫌だし」
いつも通りの星空に対して嫌味のような物言いだ。
「誰が戦闘狂だよ...、まあ、それはいいとして。やけに近くないか?」
そう言って星空は彼女へ目を向ける。視界にはもちろん彼女の姿が映るはずなのだが、星空の目に映るものは彼女のサラサラで長い黒髪だ、今はいつでも出撃できるように頭の後ろにまとめあげられている。
彼女は星空の肩にもたれかかっている、はたから見ればカップルのそれだ。ただ、この場にいるのが星空と彼女だけだったのが全てもの救いだった。
「いいじゃない。この前まで別の女とランチとかしてたんだから、次は私の番だわ」
別の女と言うのがエリスであることは星空もすぐに理解出来たが、
「いや、待て待て。この前ってそれだいぶ前の話なんだけど...、なんでそこでお前の番になる?」
そんな星空を他所に鈴は無視している。
「このまま何も無ければいいんだけどねぇ」
「そういうこと言ってると何か起こるからやめとけ」
鈴が放った言葉のせいなのかこの後すぐに出撃することになった。
イチキシマヒメ艦橋下部、戦闘指揮所
ここでは戦闘指揮や火器の管制、BBの発着艦の指示などを行う、いわば戦闘の要になる場所である。室内にはたくさんの計器やレーダーがそれらに与えられた、記すべき数字や文字を表記している。
今、ここでは24時間の警戒態勢が敷かれ、敵機の襲撃に備え、いつでも戦闘が行えるよう4時間交代で見張りに入っている。いわば第二種戦闘態勢と言われるものだ。
「目標宙域に何かあります!」
その報告を聞きCIC内に電撃が走る。
「何が映りこんだ」
エリカが問う。
「艦艇のようです。サイズは500m級数は3隻」
「高解像度カメラにて目標を確認しました」
次は別のオペレーターが声を上げる。エリカもそちらへ向かう。
「これは...。分からないわね、艦種をタケシマに居るロイ大将に確認を取ってちょうだい」
「敵艦より多数の熱源体の射出を確認、おそらくBBかと」
それを聞いてからのエリカの行動は早かった。すぐさま艦長席へ向かい指揮を執る体制へ入る。
「第一種戦闘配置!全艦対空、対艦戦闘用意!BB部隊、随時発艦開始!」
それと同時に艦内の隊員がそれぞれの部署へ駆け出す。星空たちも自分たちの愛機の元へ向かう。
「タケシマから入電、艦種判明しました。帝国宇宙軍所属、長距離進出戦艦カイザー・B・ハルウド級戦艦です」
長距離進出戦艦カイザー・B・ハルウド、文字通り長距離を航行可能な能力を付与した戦艦である。基本的には長距離航行を考慮して武装は最低限度しか装備されないのが基本的であるが、これは実弾を運用する戦艦だけに限っての話である。荷物として場所を取る砲弾や弾薬を積むことの無い、ビーム兵器を採用しているため、このハルウド級に関しては三連装のビーム主砲17基51門もの主砲を敵艦隊へ向けることが出来る。帝国軍の中でも上位に入るほどの火力を持つ戦艦だ。
「長距離進出戦艦か、初めて聞く艦種ね」
そもそも遠方へ兵力を展開する理由がない地球にとって長距離を航行できる艦など持つ必要は無いのだ。
「送られて来たデータを見るに艦尾に関しては火力が薄く、正面に重きを置いているようです」
参謀長ケルンが意見を述べる。
「我々が砲撃し注意を引いてからBB部隊を突撃させましょう。そして火力の少ない艦尾側、エンジンを破壊し動きを鈍くさせます。BBを引かせて安全を確保した後、例の切り札を使ってトドメを刺します」
例の切り札、これはイチキシマヒメに搭載されている秘匿兵器のことなのだが概要は後々に話すとして、この作戦はすぐにこの艦隊の司令長官であるマルクス・シュミットへと伝えられる。彼は元々は主力艦隊などの指揮をしていた身だが、今回は共和国との連携を確固たるものにするために派遣される、重要な艦隊を指揮するために移動してきたのだ。
「うむ、艦長、この作戦で君は勝てると思うかね」
「...正直未知数です。かの秘匿兵器が一体どれほどの威力を出せるか」
「威力は申し分無いはずだ。それを考えた上でこの作戦が成功すると思うか、どうか?と尋ねている」
少し強めの口調でエリカを威圧するように、そして少し諭すように話す。
「勝てます。いや、勝ちます。特装砲電力充填、砲弾装填開始せよ。直掩機を1個中隊分残し、残りは敵艦へ差し向けろ」
同日 カイザー・B・ハルウド級戦艦 9番艦 カイザー・B・スリャーティス CIC
「第1陣、敵BAと交戦開始」
「味方に当てるなよ、目標敵新型戦艦、全艦主砲放てッ」
スリャーティス艦長フェリス・アーグリアスの号令とともに敵の新型艦へ向け、いくつもの赤い光線を放つ、エネルギーさえ供給されていればある程度は連射の効く粒子加速砲、間髪入れず次々に発射されて敵艦へとめがけ進んでゆく。
しかし、
「だめです。やはり効果はありません」
いくつもの赤熱化した粒子の束が命中したはずの敵艦は健在である。まるで帝国軍の艦隊を嘲笑う様に。
「くそっ、やはりダメか」
その時、地球軍の主砲の砲口が火を噴く。それに合わせてほかの艦艇も同じように砲撃を開始した。
「野蛮人め、そんな旧式な攻撃方法では我々の艦艇は沈みはせんよ」
その言葉通り敵艦の砲弾は命中したとしてもダメージを与えられていない。はじき返すか、跳弾し別の方向へと飛ばされる。数分間に及ぶ砲撃戦が行われたが双方決定打がない状況が続いていた。
「えっ、艦隊後方レーダーに感あり。これは...、敵BAです。数は...、30機です」
「なんだと!。どこに隠れてやがった。サーペント発射撃ち落とせ!」
スリャーティスの各所から対空用のサーペントと言われる艦対空ミサイルが推進剤の火の粉のようなものを尾に引きながら敵BA目掛けて突き進む。
しかし、それも虚しく全て撃墜される。
「これ以上近ずかれてはまずい、早く撃ち落とさんか!」
副砲、対空銃座の射程に入り、より濃密な弾幕が形成されるようになった。だが、艦長はもう知っていた。ここまで接近されて、直掩機のない今、このスリャーティスにできることなどもう悪あがき程度である。
「敵機、ミサイルの発射を確認。数20」
「回避、迎撃」
大きく旋回しつつ、上下運動も交えながらの回避運動。
全ての銃座が接近するミサイルへ照準を合わせ、加速し加熱した粒子をそれにめがけ雨のように降らせる。
スリャーティスの右舷側付近でミサイルは迎撃され爆発光を作る。ミサイルは全て迎撃されたように見えた。
しかし、まだ1発残っているミサイルがあった。
「ミサイル、一基残っています。なおも接近中、迎撃できません。」
その直後、艦全体に大きな衝撃が走る。
艦内の警報装置が起動し、各所の被害状況を知らせるディスプレイには期間部が真っ赤に染った自艦の見取り図が映されている。
「第3エンジンに被弾、火災発生。爆発の危険あり」
「機関部要員を退避させろ。できるだけ多くの要員を退避させるんだ、その後すぐに切り離せ」
機関要員を退避させた後すぐに第3エンジンを切り離す。その後、数秒で爆発光に包まれた。
残りの2隻も同じようにエンジン部分を破壊され航行速度が大きく低下していた。
敵機はそれを確認すると再度攻撃は行わず撤退を開始した。
「敵機撤収していきます。」
「一難去ったというところか、被害状況を知らせ」
「現在、艦全体の火災の鎮火を確認。機関メインスラスターは全て出力を大きく落としています。ジェネレーターも半減しています。戦闘続行は不可能かと」
フェリスはしばしの間目を瞑り自分のすべき行動を整理した。
「全艦に通達転舵、撤た...」
「何を言うか!!!」
その時、CIC全体にかすれかけた声が響いた。
クルーたちはCICの出入口にたっている老人に目を向ける。帝国宇宙軍の黒塗りの制服に身を包んだ老人の姿があった。老人の片手には銃が握られている。
「何を言っておられるのですか、特別派遣の貴方が我々の軍のやり方に口出しをするとは」
フェリスは艦長席から立ち上がりその老人を睨みつける。老人はそれに怯えること無く堂々としている。
「帝国軍人は総統閣下に忠誠を近い、与えられた任務を確実に遂行するのだ。貴様に与えられた任務はこの宙域に近づくものを殲滅することだぞ。わかっておるのか」
「だからこそ、敵が攻撃をやめた今、ここで引かねば今後、敵の進軍を止めることが出来なくなるのです」
双方1歩も引かぬ口論が続いていた。
この時、老人がこの場にいなければ、この艦隊の未来はまた違ったものになっていただろう。しかし、今はもう時すでに遅しと言ったところだ。
さっきまで威勢の良かった老人が、驚いた顔をした直後だ、光の粒がひとつ通った。そのつぶが見えたのは一瞬だったフェリスの視界の右側に少し映る程度であったが、驚くほどに眩いものであった。
「ウッズ被弾。通信途絶」
味方の戦艦が撃破されたのだ。
それを知るやいなやフェリスは直ぐに命令を下す。
「180度回頭、急げ撤退だ。2射目が来る前に射程外に逃げるんだ。一体何が起こってる、敵はビーム砲を使いだしたとでも言うのか」
スリャーティスともう1隻の味方艦ボブファンも撤退を開始する。回頭して見えてきたのは、さっき撃破されたウッズであった。その姿は原型を留めておらず、命中箇所である艦首部分は完全に潰れ、船体の真ん中辺りから裂け目が入り折れていた。
「一撃で艦首の装甲を貫通したのか...」
その時、前を行くボブファンに光の粒が命中。艦尾下限側に命中。下から蹴りあげられたように艦尾が上の方向へ動き出す。もちろん命中した箇所は原型を留めないほどに変形し、赤熱化している。
「ボブファン、からの発光信号。『我ラ、貴艦ト共ニ戦カエタコト誇リニ思ウ。ボブファン艦長セブルス』との事です」
直後、ボブファンの機関部が大爆発を起こした。艦橋には数人の兵士がスリャーティスへ向け敬礼をしている姿が見えた。それも全て機関部の大爆発の中に飲み込まれていった。
この後、艦隊に対して3発目の攻撃はなかった。残ったスリャーティスは今出せる最大戦速にて、現宙域を撤退した。
どうも三富三二です。
そうですね、まずはごめんなさい投稿がだいぶ遅れてしました。本来は毎月5日までの間に投稿するようにしていたのですが、中の人が受験勉強を...、せずにゲームや、プラモなんてしてないです。(((許してください何でもしますから
今回はいつも以上に長くなっております。
いつもの約2倍ぐらいの文量です。
まあ、相変わらず誤字脱字、おかしな文章など散見すると思いますが、ご報告をくださるか、暖かい目で見守っていてください。
ネタバレ注意
今回は初めてまともな軍艦どうしでの戦いを描きました。と言っても自分は海戦すらまともに理解出来てないので宇宙での戦闘なんてもってのほか、艦隊指揮などの号令もさっぱり分からないので、変なところまみれだと思います。まあ、書き終わったのでそこは放って起きましょう()
今回も最後まで読んでいただきありがとうございます。
これからも月一ペースでゆっくりと、ひっそりと執筆を続けていこうと思っている所存なのでよろしくお願いします。
制作時BGM 9-nine-ゆきいろゆきはなゆきのあとOP「DEAR MY WAKER」




