-協連不可侵条約締結-
やあやあ
さっきぶりだね
統一歴176年7月16日 地球協商海軍ハワイ基地
この日、ここハワイでは条約締結会議に先立ち地球協商国とロイヴィア連邦共和国との間で捕虜交換会が行われた。もちろん星空も共和国捕虜なのでこの交換会で協商軍へと帰される。星空はこの交換会はきらびやかなものだと思っていたが、そんなことはなく淡々と進んでいく捕虜の交換の様子に少し面食らっていた。数刻の時が流れて捕虜の交換会も終わり、双方の官僚たちが握手を交わし談笑をしているのを遠目に見ながら星空は会場を後にした。
「アホかなたっ!!!」
星空が自分の配属されている艦へ向かっている途中、あからさまに本人を蔑称するような呼び方をする女性の声があった。それは先日スピーカーを挟んで聞いた彼女の声だった。
「バカの次はアホなのか...。鈴、元気そうガッッ」
鈴はまだ怪我の治りきっていない星空に対して問答無用でぶっ叩いたのだ。
怪我をしている星空が避けることが出来る訳もなく、もろに頭にくらって命中した脳天を涙目になりながら抑えている。
「痛って、おまえな」
次の瞬間鈴は星空の視界から消えていた。鈴は星空に抱きついていた。星空胸に顔を埋めて力強く抱きしめていた。
「え?え?え?」
星空は完全に状況を理解出来ていなかった。
「えっと、鈴さん...?」
「黙れ、ちょっとの間こうさせろ」
「はい...」
鈴の声は黒くドスの効いた声だ、星空は人生でトップを争うレベルでの命の危険を感じた。
この時鈴はの心の中では安心感、恐怖、喜びなどの色々な感情がめぐり回っていた。もちろん羞恥心もである。何気に顔が真っ赤なのだ。
そんな2人を姿を見つけた1人の女性の姿があった、彼女の姿はロイヴィア連邦共和国海軍の正装であろう白の生地に水色と金色の線が袖や襟にあしらわれ、髪は茶色で、ボブと言ったところだろうか、肩と同じぐらいの高さに切りそろえられて内側にカールさせてある。
「あ、星空さ〜ん、」
その声を聞いた途端鈴はすぐに星空から離れた。顔の朱色はまだ引いていない、目も泳いでいる。
「やっと見つけましたよ星空さん」
さっきの彼女が近づいてきた、彼女はもちろんエリスだ。いつものニコニコとした笑顔を見せながら。
「えっと、そちらの女性は?」
エリスは鈴に会うのは初めてだ。
「紹介するよ彼女は、龔 鈴俺の同僚だ」
「どうも」
ちょっと不機嫌だ。
それを聞いてエリスは敬礼をして鈴へ自己紹介を済ませた。それが終わったのを確認すると星空は鈴へ質問をなげかける。
「なぜ俺を探してたんだ」
それを聞いてエリスは少し得意げに、
「それはですねぇ、星空さん我がロイヴィア連邦共和国のふねカイザー・B・ブリュネイル級航空戦艦へのパーティーへご招待しようと思いまして」
パーティー、船乗り、特に息抜きの隙もない海軍艦艇での作戦に従事するものたちにとって、パーティー、祭りごとと言うのは数少ない遊戯の時間であり、安らぎの一時でもある。主な例としては赤道祭なんかがそうだ。
そして星空の中でもそれが普通だと考えていた。よもやこの考え方が間違いであることをこの後に身をもって知ることになるのだが、そんなことなどいざ知らず星空は、
「あぁ、構わない是非参加する」
拒むことなく了承した。
「なっ、」
それを聞いて鈴は『ウッソだろお前』みたいな顔をしていた。
「ちょっと待って、星空正気?そいつはもしかしたらアンタを殺そうとした人間かもしれないのよ?そこんとこわかってる。それに怪我もしてるんだし少しは安静にしてなさいよ」
だいぶ頭にきているのか女性のそれとは思えない強めの口調だ。
「ちょっと待ってください。鈴さんあなたは星空さんのなんですか?婚約相手ですか?」
エリスが突拍子もないことを質問する。
「なっ...!!!こ、こっ、婚約者ぁ!?!?違う違うそんなんじゃないけど」
鈴が焦ったのを確認すると、すかさずエリスはここぞとばかりに攻め込む。
「ならあなたが星空さんの行動を止める必要は無いですよね。それにですが私たちの国では3回以上同じ相手から来た茶会への招待を了承したものは告白を受け入れるのと同義なのですよ」
そんな話は初耳で星空は目をひん剥いていた。
「ま、そんなわけで」
エリスがそう言って星空の腕に自分の腕をからませた。
「ちょっ、エリス!?」
驚く星空を他所に猫が主人に甘えるようにくっついてくるエリス。それと同時に彼女の豊満な山2つが星空の腕に押し当てられている。
薄々感づいてはいたが鈴の方へ視線を移す。
「...」
見える、見えるどす黒いオーラがゆらゆらと揺れる動くオーラが、星空はまた命の危険を感じた。一日のうちに戦闘以外で2回も命の危険を感じたのは今日始めてだった。鈴はブツブツ何か言っていたが、オーラをまとったままどこかへ姿を消した。そしてエリスだが一向に離れる気配がない。星空は必死で自分の心を理性で押さえ込んでいた。
「あのー、エリスさん?」
「もうちょっとお願いしますねぇ」
「はい...」
『エリスといつからこんな感じになってたんだろう...』そう思い必死に記憶をたどったが自分が彼女に気に入られる要素がなく、余計に困惑するだけだった。
統一歴176年7月21日 地球協商海軍ハワイ基地
今、ここには地球協商国を構成するいくつかの行政区を代表する者達と連邦共和国を代表して外交官であるロイと数名の副官のような者が集められ、世界で初めての宇宙越しでの国家間の条約締結が行われる。
この条約が締結すれば共和国の使用してるワープ装置を使い協商軍は帝国に対して反抗に出れる。それ以外にも技術供与など、他にもたくさんの条約が締結される。
そのためここには協商軍の保有する兵器も式典仕様の特殊型なものが並んでいた。
条約締結式の会場のはたくさんの人々が集まっていた。国のトップから政治家、活動団体、軍属の官僚など様々だ。会合は数時間の間行われ最後に両者が誓約書へ署名し双方が握手を交わしたことろ盛大な拍手と共に終わりを迎えた。
会合が終わり日も西側に傾いた頃アドリアンと県準がコーヒー片手に少し夜の暗がりに染まりつつある広い海を眺めていた。
「にしても、たった数日で交渉が終わるとわね」
「それはやはり共和国も切羽詰まった状況なのかもしれん」
「だがな、アドリアン私はこれでも世界情勢や歴史に詳しいつもりだが、さすがにこんな早くに条約が締結されることなんて見た事ないぞ」
県準いぶしげな顔をしている。
「今そんなこと考えたって俺らじゃどうにもならんぞ。まあ、しかしお前の言うこともわかる。どうも段取りがいいように感じる、もしかすると裏で誰かが動いているのかもな」
県準がコーヒーを一気に飲み干し
「お互い命は無くしたくないからな、変なものに首を突っ込むのは避けるべきだね」
「そりゃあそうさ。誰だってそうやすやすとは死にたくはないだろうしな」
そう言ってアドリアンは飲み干したコーヒー缶を海へ投げ入れる。缶は陽の光ではなく街の光を移した海へ姿を消した。
どうもおはこんばんにちは最近は完全に勉強へのモチベがダダ下がりな三富三二です。
理由としては極度の体調不良です。
終わり
では、次の投稿は来月の5日までのどこかで、では(・ω・)ノシ
制作時BGM 瑶山百霊
「千ノ縁」




