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第二話 ニハク国 代表者の苦悩

【前回までのあらすじ】

◯歴××××年

文明の発達により環境破壊が起こり、徐々に住めない環境となっていったとある惑星。

その名はダフィタス星。

ダフィタス星人は、星に残る者と宇宙船にて旅立つ者に分かれた。

宇宙船が旅立ち、約500年が経った頃、住める環境にある星を見つけたのだ。

その報告に、宇宙船内の人々は涙を流しながら喜んだのだった。

各国の首脳とスクリーンで繋がる部屋に居るのは、ニハク国という国の代表をしているザダル・ラ・ニハクという80歳を少し超えた男だ。

宇宙船の中でニハク国に与えられたエリアの中心にある建物は、政治の中枢を担う場所だ。

官僚や各部所長との会議など、様々なことが行われる。

建物の入口付近は観光用に作られているが、そこから奥に行くには警備が厳重になり、限られた者しか入ることは出来ない場所となっている。

その最奥の部屋がザダルの部屋として使われている。

豪華絢爛とはかけ離れた実に整然と実務に適したシンプルな部屋。

隣の部屋とつづきになっており、私室として使用されている。ザダルが少しでも休めるようにとベッドとテーブルとソファがあり、お茶などを作れるほどの設備が設けられているくらいだが、ザダルがいかに家に帰らず、何日も泊まり続けながら仕事に励んできたかを想像するには容易いほど、使い込まれていた。


サダルは、祖父母、両親から祖星の話は何度となく聞いてきた。

文明が発達するにつれ、環境破壊を止めることができなくなった。植物が枯れていき育たなくなり、草食動物が減っていき、肉食動物が減っていった。

気候の変化やそれに伴うダフィタス人の死亡率の上昇。

生きることが難しくなった人々の婚姻率の低下に伴う出産率の低下。

産まれてきた子どもが大人まで成長できる確率の低下数。

心が荒み、犯罪数の増加や自殺率の増加などなど。

様々なことを幼い頃から学んできた。

ザダルも宇宙船内で生まれた3世代だ。

地上というものの知識はあるが、想像すらできない。

天井に張り巡らされたスクリーンに映る、空というものが宇宙船内と地上という場所から見るものの違いさえ分からない。

空に映る雲だったり、朝と呼ばれる時間になると徐々に明るくなっていく色模様や、夜という時間になると暗くなっていく色模様。風と言われる空調の調節は、全て初代の方々が作り上げたものだ。

環境破壊が起こる前のダフィタス星を表現しているらしい。

正直、宇宙船と地上と何が違うのか?と思っていた。

ただ、幼少期から自分達の役割や使命。

ダフィタス人の全滅を回避すること。

それまでの宇宙船の管理に維持。

宇宙船が壊れてしまっては、ダフィタス星人は全滅してしまう。

惑星が放つエネルギーを宇宙船の維持に取り込む仕組み。

惑星ごとにエネルギーが違う。そのエネルギー変換装置の重要性。

色々なものが、各国の代表者の肩にある重圧と焦り。

各国の代表者とは室内に置かれたスクリーンを通してリアルタイムに会話することができるのだが、お国柄というのだろうか?話が通じない相手もそれなりに居る。

楽観的な者だったり、閉鎖的な者だったり様々だ。

同じ宇宙船の住人なのだから、協力し合っていけばいいものを、やたらと絡んでくる者や、国という枠を取り払ってひとつに纏めようと言い出す者も居た。

言語も文化も違うのに何を考えているのだろうか? 独裁者希望なのだろうか?と嫌悪感を顔に出さないようにするのに必死だ。

(あーーー、ホント嫌だ。こいつらと話するの。)


気持ちを切り替えよう。


目処がついたその星は天の川銀河にある美しい青い星だ。

宇宙船は、銀河に入ったばかりの位置を飛んでいた。

目的の星の生物が、どこまでの知能生命体なのか?

それによっては、こちらの宇宙船が確認され攻撃対象となる場合もある。

迂闊に近づくこともできない。

どの惑星に身を潜め、調査するか?

どこの部隊を調査部隊とするか?

各国での協議から始まり、何をもって安全と見なすか?

それからの行動をどうするか?など決めていくことが山積みだ。

もし、我々と同じような科学的進化をなしているなら、侵略もできないだろう。

こちらは、宇宙船1隻なのだから。

兵士の鍛錬も怠ってはいないが、数では負けるだろう。

もちろん、兵士といっても兵器を扱う者達のことであって、実践として戦うことは想定していない。

兵士の中には、筋肉をつけることが喜びであり、実践に近い鍛錬を好む者も少なからず居て、運動サークルのひとつとしてザダルは認識した。


そもそも我々が住むことが可能な環境なのだろうか?

考え出すと不安が積み重なっていくようで、また無意識にため息が出る。

自分達の代で星が見つかったことは僥倖だと思うが、やる事の多さと危うさにため息が出てくる。

手放しでは喜べない。


(独裁者の発言をするあいつは、侵略してさらにその星の独裁者になるよう動くんだろうな。

関わりたくない!

いかんいかん。私も浮かれているのだろうか?)




ブーブーブー


スクリーンからの呼び出し音が鳴った。

各国の首脳会議の時間だ。

今後の予定のすり合わせが今日のメインの内容だ。

住めると目処をつけた星にどこまで近づくか。どの惑星まで宇宙船を移動させるのか?

そこまでの移動時間の想定。

それまでに国民に何を準備させるのか?そんなところか……と会議の内容を考えながらザダルの右腕として仕えてくれる官僚のひとりの男を呼ぶボタンを押す。

10秒もかからず現れた男の名前は、ユグド・リ・ニハク。まだ40代前半の若く働き盛りの男だ。

ユグドが来たことを横目に見ながらスクリーンを繋げる。

「やぁ。お待たせしたかな? あー、まだな方々もいらっしゃいますね。」

笑顔を貼り付けニハク国にとって少しでも有利になるようにはどう交渉しようか?

有利にならなくても国民に被害が出ないように守ることは最低限の条件だ。

ニハク国は、比較的技術者が多く恵まれた国として認識されている。

星の調査に大切な技術者を使われて事故などで損失するようなことを許すことはできない。

そんな思いを笑顔の下に隠し、会議の行く末を考えている間に全ての首脳が揃った。


「それでは、首脳会議をはじめます。」

コンピュータ音には思えない女性の声で意識を戻す。

言語の違いさえも感じさせないように自分の耳には母国語で瞬時に翻訳されるシステム。

このシステムを構築したのも遥か昔のニハク国の技術者なのだ。


「まずは、目処を立てている星に何処まで近づくかですよね。 我々と同等な文明を持つならば近づき過ぎるのは危険と思われます。皆様どう思われますか?」


カジール国の首脳の発言だがザダルも同じ意見だったし、やはり想定した内容になると安堵の息を吐き出す。

すると、すっとユグドが紙をスクリーンからは見えないように渡してきた。


調査部隊からの報告が記載されていた。

この銀河系は惑星や恒星の数が多く、目処を立てた星がある太陽系まで慎重に移動することになる。

それに最低10年はかかる。

太陽系には8つの惑星があるが、星のエネルギーを得るには危険な惑星も多く目標の星の、隣の星が比較的安全にエネルギー補給ができる可能性があると報告書にあった。


この宇宙船は、自動運転になっているが周囲の星の環境や走行するための安全な経路なども自動になっている。それには様々なデータに基づいたエビデンスがあり、調査チームはそれを精査してくれたようだ。


ザダルは、カジール国の首脳の発言に基本的に同意していることを強調した上で、今上がってきた報告書の内容を説明した。


数時間の会議の上、安全を優先し10年以上かかってでも太陽系までたどり着く。

その間に、もっと詳細な惑星の情報を得ることが出来るとし、その都度話し合いを設けることとなった。

国民達には、太陽系までの道のりの危険さを話さない方向で決まった。不安を与えるのは得策ではないとの判断になった。

しかし、有事の際の避難訓練の実施や各家庭での非常時の備蓄の斡旋などはした方がいいとなったが、上手く誘導する方法を考えることは、国民性のこともあり各国で決めることとなった。


首脳会議が終わり、ユグドが用意してくれた紅茶はすっかり冷めてしまっていたが、それが乾いた喉に心地良く染み渡った。

会議で決まった内容は、傍に控えていたユグドから各官僚達に通達されるだろう。


はー、また会議だ。

それまでに、ある程度の道筋を練っておかなくては。


癒されたい。休みたい。


切実な願いは、ユグドの「会議はいつにしましょうか?」という言葉で叶わないと悟るザダルであった。



読んでくださりありがとうございます。


まだまだ序盤です。

それでも面白いと思ってもらえたら星をつけて頂けると嬉しいです。

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