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第一話 選択と旅立ち

「オレは………オレは………異星人なんだ。………だっ、だから………だから……………一緒にはならない方がいい。」


ユキは、この生真面目で口数の少ない人が突拍子もないことを言うことに、ただただ驚いた。

振られたのだろう。

そんな突拍子もない理由で断らなくてもいいじゃないか。一緒にならない方がいいなんて、ユキを思っている言い方して、良い人に見られたいだけなんだわ。

と、思って悲しくもなったけど、ずぐに違うと分かった。

だって彼、凄く苦しそうで痛そうで辛そうなのを必死に耐えている顔なんだもの。

なんで、あんな突拍子もないこと言ったのか分からないけど、私のことを思って一緒にならない方がいいと本心から言ってるのだけは分かった。


ならね、私の答えは決まってるの。

◯歴××××年 宇宙の天の川銀河の地球という惑星。その惑星にある日本という小さな島国では、後に戦国時代と言われる乱世の時代が起こっている頃、とある銀河系のとある星が消滅しようとしていた。

文明が進むにつれ環境破壊が加速、徐々に生命体が住める環境は減り、数日おきに灼熱だったり極寒だったりの繰り返しの日々。

惑星の名は、ダフィタス星。

そこに住む高度知能生命体をダフィタス人と称していた。

ダフィタス人達は、ダフィタス星を捨て宇宙に住める星を探すことを決めた。

宇宙船は、日本列島より少し大きな宇宙船なのだが、それでもすべてのダフィタス人が乗ることはできない。

各国の若者を中心に前科があるものや、犯罪を犯す素養のある者を除く選定が行われた。

小さな子どもがいる家族は対象内となった。

そして星が滅んでもダフィタス星に残りたいと希望する者もいた。

ダフィタス人が住むに適応する星が見つかる確率も低い。

何十年、何百年、何千年と宇宙を彷徨い、いつか宇宙船が壊れてしまうことだってある。

宇宙船の中で、何世代もの営みを継続していく漠然とした不安と、星が滅ぶのを、ただ待つ不安。

不安の中でそれぞれが選択し、宇宙船に乗り込む日が来た。各国の居住区に分かれ、国の代表達より様々な説明や最終の意思確認が行われた。

出発の日、ダフィタス星に残ることを決めたダフィタス人は、家の外に出て、灼熱だったり極寒だったりの環境にも関わらず、ただただ、宇宙船が無事に住める星に辿り着くようにと祈りながら見送った。




◯歴×505年 4月30日 8:00

ピロピロリン♪


おはようございます。

朝のニュースの前に、とある方の手記を読ませて頂きます。

皆様、耳を傾けてお聞きください。

大切なことですのでもう一度言います。

どうか、耳を傾けてお聞きください。



◯歴××13年5月28日

ダフィタス星を出発して、10年ほどが経った。

まだ宇宙船内に大きなトラブルもないが、たまに喧嘩やちょっとしたクレームなどは発生しているみたいだ。

それでも自分の仕事はあるし、時間の経過はある。

休日は、友人達とご飯でも行こうか? それとも、気になりだしたあの子を誘ってみるのはどうだろうか?なんて仕事で知り合った人達との会話を楽しんでみたりとそれなりに暮らしている。

以前の暮らしを思えば、雲泥の差だ。


子育て世代の親たちは、中年と呼ばれる世代になり、青年だった者がいい大人となり、子ども達は青年になり、早い者には夫婦になる者達まで現れた。

そんな日々を過ごしている中で、今日は爆発のような音と光が観測されたと夜のニュースで流れた。

俺たちの故郷がある星、ダフィタス星が消滅する時の爆発だったと知った時の虚無感に自分でもビックリした。

愛国心なんて俺には疎遠なものだと思っていた。

だからこそ宇宙船に乗ることを希望したのだ。

宇宙船に乗れば、生活環境は整えられ、生きるか死ぬかの日々とはオサラバできる。ただ、それだけだった。


星に残った人々は苦しまずに逝けたのだろうか? そうだといいな。

自分達が生き残らないとダフィタス人が滅亡してしまうのだと、今更ながらに実感した。


俺が宇宙船に乗ったのは15歳だった。

夢や希望というものとは無縁で、毎日が生き残るために必死だった。極寒で凍死しないために、灼熱の気温に体がおかしくならないように。

それでも生きていくために、水と食料の確保のために10歳から大人に混じって外側での作業を淡々とこなす日々を過ごしていた。

文明が発達した内側の世界には気温が調節され、空の映像さえ晴れだったり風が吹いていたりと、全てがコントロールされている。

もちろん、食料に水、菓子や酒にジュースなどの趣向品もある。

内側に住むダフィタス人を守るために、外側で働くダフィタス人が居る。

内側に住むダフィタス人は、言わば政治の中枢に関わる人や、そのシステムの開発者だったり、システム維持に関わるひと握りの者達だ。

多くの人々は、外側で厳しい環境と戦いながら、仕事をし生活を営んできた。

俺は外側で働く者だった。

母は俺が10歳になる数日前に死んだ。環境に耐えられず、朝起きたら死んでいた。

優しくて我慢強い人だった。

少ない食料でも美味しいご飯を作り、子どもの俺に少しでも多く食べさせてくれた。

10歳になり、父の仕事を手伝うようになったが、ある日、父が狩りに出かけた際に足を怪我をして早く歩くことができなくなり、極寒の中で家までたどり着けずに死んだ。と聞かされた。

俺は、父の友人達が命をかけて父の遺体を運んでくれたことに感謝をした。


父は、俺を残して逝くことを心配してくれたのだろうか?

もう今となっては聞くこともできない。

それから5年、父の友人達に助けられながらも、俺は1人でこの星で生きてきた。


父の友人達は、ダフィタス星に残った。

年齢が適応しなかったのだ。

父と同世代の人達だったのだが、全員が独身だったのだ。

「年齢が適応しても残るけどな!」と笑った顔を今でも覚えている。

その星が消滅したのだ。

母の骨も父の骨も、育ったあの家も父の友人達と狩りをしたあの岩の山も全てが消えた。

星に残ったあの人達も。


宇宙船に乗ると決めた時、未練などないと思っていた。

もうすぐ28歳になる大人だというのに、涙が止まらなかった。


次の日には与えられた仕事がある。

泣いていても仕方ない。そう思うのだが、やる気が起きない。

何もしたくない。

ただ、何も思わず黙々と仕事をする。

そんな日々を半年程過ごしていたある日、ふと周りの異変に気がついた。


俺だけじゃない。


心に空いた穴を抱えて、黙々と仕事をする人々。目は虚で何も感じていないのではないか?と思うほど表情のない顔。話し声が何も聞こえない。作業をする音だけが室内に響いている。

そのことに気がついた。

俺だけじゃなかった。

そのことが少しだけ心を軽くしてくれた。


ある日、ふと目が合った女性がいた。

その人は悲しいような、泣き顔のような笑顔を俺にしてくれた。

俺は、その人と結婚をした。

お互いに心に穴が空いたような虚無感を補うための結婚だったのかもしれない。

だけど、妻との生活で独りではない安らぎと、子ども達にも恵まれ、家庭を守っていく張り合いを得た。

仕事は淡々とこなすのではなく、家庭を守っていくことの喜びだと教えてもらった。

父も母も、そうだったのなら嬉しいな。とやっと思えた。

あの環境でよく俺を産み育ててくれたと、両親に感謝と尊敬の思いが溢れてきた。

父の友人達が独身だったことも納得できた。自分ひとりでさえ、生きるか死ぬかの日々なのに、家族を守るなんて安易にできるわけがない。

それでも結婚し、家族を持った父を友人達は、助けてくれていたのだろう。

父は友達に恵まれた人だったんだな。

子どもの俺にもそれとなく助けてくれ、気にかけてくれていた。

俺は、両親や周りの人達の助けがあって生きてこれたのだと初めて感謝の涙を流すことを知ったのだった。


それからの日々は、幸せだったと思う。

今は孫にも恵まれた。

妻は俺を置いて先に逝ってしまったが、きっと傍にいてくれているのだと思う。

妻は、子ども達を育てる時も孫を抱っこする時も、悲しそうな泣きそうな笑顔ではなく、幸せそうな笑顔を見せてくれた。妻が俺と一緒になり、幸せを感じることがひとつでも多くあったのなら俺も嬉しい。

俺の寿命も残り少ないだろう。

せめて、子ども達や孫達が生きている間に、住める星が見つかることを心から祈ろう。

俺ができることは、もうそれくらいだ。

あとは、子ども達に迷惑にならないように逝くことだけだ。


ピロピロリン♪


ニュースの前に読ませて頂いたのは、宇宙船での初代の方が書かれた手記になります。

もう一度聞きたいと思う方は、遠慮なく各自治国の役所にて公開していますので、是非お越ください。


今日は私達にとって記念する日になります。

皆様の多くの方々が4代目か5代目でしょう。

この宇宙船は、やっと私達が生きていける環境がある星を見つけることができました。

10年後から20年後には到着予定となります。

様々なことを想定して準備を始めていきます。

この手記を公表させて頂いたのは、改めて自分達の使命と先人達の思いを心に留めて準備をしてほしいからです。

各セクションや仕事によって準備内容も異なってきますが、それは順を追って説明していきます。


まずは、星が見つかったことを喜びましょう。

今日は仕事を休みとし、皆さんで喜びを分かち合う記念日といたします。

自治体ごとに、菓子やお酒など用意していますので、楽しい時間を過ごしてください。

では、本日の朝のニュースは終わりです。

夜のニュースは、本日はお休みとなりますのでよろしくお願いいたします。


ピロピロリン♪



アナウンスが終わり、喜んだり、泣きながら抱き合う人々を見ながら真剣な面持ちで話し合う人達がいた。


各国の首脳と呼ばれる者と、その官僚。

ようは、この宇宙船を維持し管理してきた者達だ。

ダフィタス星を飛び立ってから500年余り。

首脳達も世代交代をした4世代目だ。

ダフィタス人の寿命は、初代の頃は平均100年だった。内側の人の平均は、約150年。外側の人々は環境によって約70年という寿命というアンバランスな現象が起こっていた。

内側の人達も、文明が進むにつれ体を駆使して労働する環境が失われて、はじめは肥満になる人々が急増した。

肥満になり病気になることを避けるようになると、カロリーコントロールや健康を保つための運動メニューなど生活の全てを管理することで寿命を延ばしてきた。

その反面、外側の人々は体を酷使しなければ生きていけない上に、環境そのものが生きるのに厳しすぎた。

それでも、支給されるサプリメントの栄養源や水の支給によって寿命は平均70年を保っていた。

支給される場所まで行くのに町の代表者でまとまり、寒さや灼熱で倒れた人を介抱しながらの行動となるし、支給物だけでは補えないものが沢山あった。

寒さに耐えるための毛皮の確保や、動物から取れる脂肪分を摂取することだったりと、動物も絶滅する品種が増え、生存している動物が少なくなっていても狩は必要な生きる為の手段だった。

宇宙船に乗ってからは、外側にいた人々にも穏やかな環境の中での生活になり、仕事といってもデスクワークが主な仕事に変化した。

主食のサプリメントも、栄養だけではなく、胃に入ると膨れて満腹感を得られるように開発されたものだ。

至る所に、サプリメント工場があり、毎日大量のサプリメントが製造されている。工場内にはダフィタス人がいるというよりは、機械によって製品が作られている。人は、成分チェックや不備の有無の確認や、品質改良などを行うのが日々の仕事となる。

体に必要な栄養素を効率よく吸収させ、満腹感などの幸福度を上昇させるためにはどうしたらいいか?

噛むという行為が少なくなった弊害に対する研究も行われてきた。

趣向品の菓子を柔らかいケーキなどではなく、硬めのクッキーなどにしたりと食物を扱う部門は、様々な工夫と研究が日々なされていた。

医療や介護など人を相手にする仕事をする人々は少しの労働も含まれるが、ベット移動や体位移動も介助ロボットがするし、掃除などは全て掃除ロボットがしてくれる。

体を駆使する仕事が減り、腹一杯食べるということがなくなった代わりに運動メニューにも様々な工夫をしてきた。

スポーツのサークル活動を積極的に取り入れたり、文化的サークルも活動的に動いている。コミュニティを活発にすることで、他人と出会う機会に繋げるなど、子孫繁栄にも念頭に置いた日常を送れるシステムの中、宇宙船全体で、ダフィタス人の平均寿命は150年となっていったのだ。

500年という年月の中で、徐々に変化していったことだった。


読んでくださりありがとうございます。

まだまだ物語は始まったばかりですが、

面白いと感じたら星をつけて頂けると嬉しいです。


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