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プロローグ

 暖かい日差しにさわやかな海の風。

 オレンジとスパイスが香る港町に、クラウディは両親に連れられて観光に来ていた。

 露店には色とりどりの果物と海鮮料理が並び、絹織物やキーホルダーの土産物屋では、店員があの手この手で客に売りつけている。細い石畳の道路沿いには赤い屋根と白い壁の家々が並び、散策する者を迷路に誘い込む。

 細い道を抜けた先にある白亜の宮殿に、クラウディはやってきた。アズレージョと呼ばれる青いタイルの絵画が、この街いちばんの目玉なのだ。

 両親が音声ガイドに従いながらアズレージョを鑑賞する中、クラウディはある一枚のアズレージョが気になった。

 左上には、鎧やローブを着た人たち。王座に座る一人は、ランプを手に抱えている。

 左下には、神殿の前で穴を掘る人たち。穴には、鏡が放り込まれている。

 右下には、大きな海とその中に浮かぶ指輪。

「クラウディ、この絵が気になるの?」お母さんが話しかけてきた。

「うん。なんか、変だなって」クラウディは答えた。

 するとお父さんがしゃがみ込んで、クラウディと目線を合わせた。

「これは悲しい話みたいだよ。ガイドによるとね——」


 その昔、大変美しい三人の魔神がいました。

 一人はランプの魔神。どんな魔法も操れました。

 一人は鏡の魔神。言葉を巧みに操りました。

 一人は指輪の魔神。風を操るのが得意でした。

 ランプと指輪の魔神は大変仲睦まじく、また鏡の魔神はランプの魔神に憧れていました。

 彼らはやがて心の汚い主人たちに使われ虐げられ、あるいは主人を操り、暴力や殺戮が繰り広げられました。しまいには戦争にまで発展してしまったのです。

 世界が破滅に向かいかけた時、時の賢者はランプを洞窟の奥に隠し、指輪を海に捨て、鏡を神殿の地下深くに埋めました。

 それから何千年もの間、魔神たちは暗闇に閉じ込められました。


 音声ガイドにあるのはここまで。

 世界には知られていない話があった。


 一人のからくりオタクによって、魔神たちが再び歴史に登場したことを――。

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