第八話 大学にて
「起立、きおつけ、さようなら〜」
「「「さようなら〜」」」
帰りの会を終えた小学生たちがランドセルを背負い教室から去っていく。
さて、俺も帰ってさっさと勉強するか、ママに怒られるし。
机の上のランドセルに手をかけ………。
やべっ、まつなのこと忘れてた。
まぁ大丈夫だろう。今日はゼミ出席するだけで、発表だのなんだのは無かったはずだ。
それにまつなは小学生にしては大変賢い。もし話しかけられたとしてもうまいこと避けるはずだ。
……大丈だよな?
そういえば、まえ俺の元カノと話していた時、大変絶妙な返しをしていたような……。
一抹の不安が頭をよぎり、机の中に入れていたイヤホンを耳につけ、そしてスマホの音量を上げる。
「まつな、まつな聞こえるか?」
『………うん』
よかった。とりあえずは無事なようだ。
「そうか、特に困ったこともなかったか?」
俺がそう質問すると、まつなは少し考えた
『うん、そうだね、2人ともいっぱい可愛いね』
「……何言ってんだ?」
いや、俺と話す時と口調が違う、これは俺の真似をしている時の口調だ。
……っていうことは、こいつだれかと話しているのか?
時間的にはゼミはもう終わっているはずだけど……。
すると、イヤホン越しに会話の内容が聞こえてきた。
『ちょっとあんた! 裕也とどういう関係なのよ!』
『あなたこそ、斎賀君とどういう関係なんですか!』
本当に何が起こってるんだ⁉︎ なんか女子が言い争っているんだけど⁉︎
「おい、まつな! コソコソ声でいいから、何があったか簡潔に報告してくれ!」
『ゆうやの真似をした』
「簡潔すぎてわからねぇ! もっと分かりやすく!」
『ゆうやって、女の人好きだよね』
「ん、まぁ、うん、そうだな」
否定はできないが……。
『だから、女の人と一緒じゃ無いと、おかしいよね』
「おかしくねぇわ! 俺のこと女たらしかなんかだと思ってんのか!」
『前に女の人家に来た、包丁持ってた』
「ごめん! 俺女たらしだな、よく考えれば」
『よく考えなくてもそう』
確かに俺、よく女引っ掛けてあそんでるもんな、うん。
『だから、てあたりしだい声かけた』
「手当たり次第にかけちゃったか……」
そして、引っかかった2人が喧嘩しちゃってるのか……。
『ゆうや、任せといて』
「心配しか出てこないんだが」
この修羅場、正直俺でも潜り抜けるのは難関なのに、なぜこいつはこんなにも自信に満ち溢れているのだろう。
『大丈夫、君キス読み込んでるから』
「…………お前それ少女漫画だろ! ちょっとまて、とりあえず俺の指示を」
『落ち着いて、2人とも、私……じゃなかった、俺の話を聞いてほきい』
聞いてねぇし、なんで少女漫画に壮大な信頼を寄せているんだよこいつ!
『ん、なによ』
『どうしたの、裕也さん』
『実はさ、俺、小さい頃から君のことをずっと見ていたんだぜ』
おぉ、なんか男前な事言ってるけど………… それはどっちに言ってるんだ?
『……ウチたち、知り合ったの今朝だったよね?』
『私はついさっき初めて会いました』
2人ともほぼ初対面じゃねーか! そらそうだろうよ俺の体なんだから!
『小学三年生の頃、約束したよな?』
だから初対面だろお前達!
『……何言ってんの?』
『何を言っているのですか?』
そらこういう反応になるわ!
「おい、落ち着け! 俺の言うことをそのまま……」
『何言ってんだ、まったく……。 でもその言う所、昔から好きだったぜ』
「何に対して言ってんだ主語ちゃんとつけろや!」
くそっ! こいつ話聞いてねぇ!
『だからさ、中学を卒業したら……。結婚…しような』
「できるかぁ!」
『『………』』
スタスタスタと、遠ざかる足音が聞こえてくる。
おそらく、やばいやつだと判定して逃げたのだろう。
『……………よし』
「よしじゃねぇーよ!」




