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第14話 救えるのは

14話目投稿しました!


 15話目は20時頃に投稿します!


 そろそろ終わりが見えて来ました!

 4ヶ月経った。

 彼はまだ帰ってこない。

 様子を見に行こうと思ったが上司に止められてしまった。


 また余計な事をするだろうと言われて。


 チカちゃんの知識は今では大学で通用するレベルまで上がっている。


「ヒメノ、きみたけにあいたいよ」

 

 しかし、ここ最近ずっとこの調子だ。

 

 手紙を書く時は元気になるのだがそれ以外の時は元気が無い。


 私と彼女の関係はこの4ヶ月で良くはなっただろう。最初は私の話を聞こうともしなかったのに、今ではちゃんと聞いてくれるし悩みも話してくれる様になった。


 ほぼ紀見塚さんの話だったが。


 私は部屋から出て隣の部屋に入る。

 そこには組織の一員で私と同い年の中間田陽介が居た。


「これお願いしますね」


 私は彼に、彼女の書いた手紙を渡す。


「うっす! 承ったッス!」


 彼は手紙を受け取ると


「紀見塚さん、結構やばいッスよ」


「どうかしたの?」


「なんか話によるとッスね、サンプル食べちゃったらしいんスよ」

 

「へ? サンプルってあの生物の?」


「そうなんすよぉ、地下の職員の殆どが正常じゃ無いらしくて、昨日ついに紀見塚さんもダウンってところッスね」


 大変だ、それでは薬の研究が進まないのでは?

 そんな事を思っていると


「でもみんなしっかり研究はしてるみたいッスね。おかしな話ッスね」


「研究の目処は?」


「どうなんスかね、後4ヶ月くらいって聞きましたけど」


 後4ヶ月、彼女は耐えられるのだろうか。

 


 紀見塚さん……無事に帰ってきて下さい。チカちゃんが待ってます、お願いです……



「あ、忘れてたッス」


 彼のその言葉で思考が戻ってくる。


「なんかこの研究に多額の資金投資をしてくれる政治家さんが居るんスよ。でも条件があるらしくて、その政治家の息子さんが結構ドぎつい性癖の持ち主とか。何やら人間だけど人間じゃないナニかと性交性をしたいって話で、そこで今研究しているあの生物と性交性させろ! って事で、資金を投資するからあの生物を人間に近い形にしてくれと言う要望が来たんッスよ」


 は? ふざけるな、彼女にそんな事をさせる訳にはいかない。彼女はきみたけさんじゃないと駄目なんだ。


「上もその資金投資は有り難いと言う事で引き受ける事になったんスよね。後、後々生殖機能が正常に機能するのかっていう実験もしようと思ってたらしいんでこの際にやってしまおうって事でしょうね」


 私は彼の胸倉を勢い良く掴む。


「彼女の意志は!? チカちゃんの気持ちは!?」


「い、痛いッス! 首がしまってるッス!!」


 そのまま彼を壁に押し付け


「あの子は紀見塚さんの事が好きなんですよ!? それなのに何故!?」


「知らないッスよ! そんなの!! 確かに可哀想と思うっすよ!? でも上が決めた事なんスから逆らえないっすよ! 俺ら下っ端は!」


「でも! それでも!!」


 私は彼に腕を掴まれ突き飛ばされ、その衝撃で机にぶつかり机と一緒に倒れる。


「赤井さん、気持ちは分かるッスけど俺たち組織の人間ッスよ? そこらへんわきまえて欲しいッス」


 組織の人間、私は組織の人間だ。


 何故あの生物にこんなにも肩入れしているのだ。


 馬鹿馬鹿しい、馬鹿馬鹿しい、馬鹿馬鹿しい……




 ……違う、私は彼女の事が好きなんだ。紀見塚さんの事が好きなんだ。組織の人間としての私じゃ無い、ただの人間としての私があの二人の事が好きなんだ。


「……わかってますよ」


 でも、その気持ちは棄てなければならない。


 組織の人間として。


「手術は一週間後って話ッス。変な真似は辞めて下さいよ? お咎め受けたくないんで」


 そう言うと彼は部屋から出て行く。


 私は頭を抱えた。

 

 私が組織の人間で無ければ、こんな気持ちにならずに済んだのに。私がただの人間としての気持ちを持たなければ、こんなにも悩まずに済んだのに。


  





 部屋へと戻る。


「チカちゃん、お話があります」


「なに? ヒメノ」


 彼女は心配そうに私を見つめている。


「それは……」



 私は彼女に説明した。 


 彼女は黙って聞いていた。


 話し終わり、無言の時間が生まれる。少しした後、


「きみたけは、よろこぶかな? ほめてくれるかな?」


 喜ぶ訳が無い、口にしようとするが声が出なかった。


「きみたけがよろこぶならぜんぜんへいきだよ。きみたけはいつもいってた、はっけんというものはすばらしいって。チカもいろいろなことをはっけんしてほしいって」


「……」


「これは、はっけんにつながるんだよね?ならだいじょうぶ。きみたけもほめてくれる」



「そうですね……きっと褒めてくれますよ」


 私は最低だ。クズだ。

 彼等のことが好きと思いながら、結局は己の保身の為に彼女の純粋な気持ちを利用している。


 ……止められるのは彼しか居ないんだ。


 早く戻って来てください、紀見塚さん。


 貴方しか居ないんです、彼女を救えるのは。



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