東方二次創作のススメ(イマイチよく分からない幻想郷の掟編)
東方鈴奈庵にて霊夢より語られた、人間が妖怪になる事は許されないと言う掟。果たして、これはどの様な意味なのか。順に考察します。
人間が妖怪になる事は禁忌、これは霊夢の口より語られた内容である。これを理解する為には、人間、妖怪の定義とルールの適用範囲を定めなければならない。広義には人間以外の全てを妖怪とするが、人間から魔法使いになったと明言されているアリスや白蓮、古くは人間であった神奈子や神子、天子、後天的に半妖となった慧音の存在を説明出来なくなるからだ。
・広範な解釈
この規則には、幾つかのバリエーションが存在する可能性がある。その内最も汎用的だと思われる解釈から順に考える。
一、「妖怪」に含まれる範囲
ここでは、一旦以下の様に定義する。
◯人間で無い
妖怪と人間を対比して考える限りに於いて、恐らくこの定義が崩れる事は無い。
二、「人間」に含まれる範囲
冒頭に述べた通り、広義の「妖怪」を用いる限りで規則を解釈する事は困難である。そこで、「人間」の側に限定的な定義を策定する。まずは以下の三つを定義する。
◯幻想郷在住、或いは幻想郷出身である
○反物理法則的な能力を行使しない
○一般的な人間程度の寿命を持つ
この規則は幻想郷内のみで適用されている事から、幻想郷在住、或いは出身の人間と定める事に問題は無い筈である。
幻想郷開闢前に人間を辞めた神奈子や神子、幻想郷の外で魔法使いとなった白蓮、幻想郷に来た段階で既に現人神になりかけていた早苗等が元々人間であった事を考慮されない、即ち規則に抵触していない事からも、この定義が規則に含まれるであろうと考えられる。
二つ目の定義について。一般的な妖怪の印象から考えて、妖怪が何らかの超常能力を用いると言う事は疑い無い。で無ければ、能力を持たない人型妖怪と人間の境が無くなってしまう。三つ目も同様。
二つ目の定義には細則を付加しなければならない。即ち以下の様に言い換える。
○魔術・占術・仙術・神術・超能力を除く何らかの反物理法則的な能力を行使しない
魔術を用いる魔理沙、占術を用いる小鈴、超能力を用いる董子が人間として扱われる事からも、この定義は適切であると思われる。
上記の細則が適切である場合、三つ目の定義もまた以下の様に細則が付加される。
○一般的な人間程度の寿命を持つ、ただし魔術や仙術によって獲得した寿命については、これを考慮しない
これら定義に基いて考えると、魔術によって寿命を延ばしたアリス、天人になり長寿となった天子は人間であると解釈され、また入道を使役する事によって長寿の存在となった一輪、亡霊となった水蜜や屠自古は妖怪と解釈される。一輪や水蜜が封印されたのはおよそ千年前であるが、幻想郷縁起が最初に編纂されたのは千二百年前とされており、恐らく彼女らが封印された時点で幻想郷の掟或いはその原型が存在したと考えても良かろう。
先の三定義によって大方の住人は分類可能であるが、一部問題が発生する。夢想天生を使用可能な霊夢、半妖である慧音や霖之助等はどの様に扱われるのか。小鈴が持つ本読みの力も説明出来ない。
また幻想郷の外で人間で無くなった為にルールには抵触しないが、生来の魔法使いであるパチュリー、蓬莱の薬によって蓬莱人となった妹紅がどの様な扱いなのかも定義しておかねばならないだろう。
まず、以下の様な項目を加える事を検討する。
○人間を親に持つ者の"自然発生的に"得た能力は人間の基準に考慮しない
これまで他の項で述べて来た様に、夢想天生の根本原理は未だ明らかにはなっていない。その為断言は出来ないが、夢想天生自体は「生まれ持った霊夢の能力」由来であるとグリモワール オブ マリサで語られている為、先に挙げた人間に使用が許される種々の術の一種で無い事は明らかである。小鈴についても、読字能力はある時突然得た能力である。霖之助は「人間と妖怪のハーフ」たと阿求によって語られており、純人間では無い筈だが、同じく阿求の記述により「英雄伝(幻想郷の著名な人間を紹介する項)」に纏められている為、彼女が把握する規則では人間として定義される。
これらの事から、人間として生まれて生来持つ能力、及び後天的且つ自然に得た能力は人間から外れる要因にならないと考えられる。
慧音は、人里に住んでいながら求聞史紀で妖怪として扱われている。これは慧音が自然に半妖となっていないからだと考えられる。慧音は後天的に半妖となった存在であるが、求聞史紀でも「呪われたり祟られたり魔法を掛けられたり」すると後天的に半妖化するとされている。即ち、人為的にワ―ハクタクになったのだろう。
阿求の記述ではパチュリーとアリスが同じ枠で紹介されている。アリスが人間に属する以上はパチュリーも同様だと考えられるが、パチュリーの誕生に関する情報は公開されていない。その為想像で語るしか無いが、パチュリーの両親も人間或いは魔法使いであったなら、人として生まれ生まれながらに魔法も使えた、と言う解釈になるのだろう。
この一文ならば、易者が退治された事も説明出来る。一般的な亡霊や怨霊は自然発生的に生まれるが、易者は自ら復活の種を仕込んだ為に"不自然"だと認定されたのだろう。
ここまでの案を纏めると、以下の様になる。
人間の条件
◯幻想郷在住、或いは幻想郷出身である
○魔術・占術・仙術・神術・超能力及び"自然発生的に"得た能力を除く何らかの反物理法則的な能力を行使しない
○一般的な人間程度の寿命を持つ、ただし魔術や仙術によって獲得した寿命については、これを考慮しない
妖怪の条件
○人間で無い
ここまで広範な解釈を検討したが、幻想郷の各人物を見る限り、この規則に則っていない言動が多く見られる。そこで、各例に於いてどの様な規則が適用されているのかを個別に解釈する。
・限定的解釈、博麗の巫女のケース
博麗の巫女は妖怪を退治し、幻想郷に於けるパワーバランスを維持する事が務めである。その為に、妖怪は異変を起こし、巫女はスペルカードルールに基いて首謀者を退治する。
即ちスペルカードルールに於いては、異変の首謀者=退治する対象=妖怪である。その為、永夜抄で魔理沙とアリスが永夜の術を使った際には、妖怪で無いにも関わらず霊夢は退治しようとした。
これらから導かれる、博麗の巫女の業務上の掟は実にシンプルである。
○異変を起こす者は妖怪、異変を解決する者は人間である
・限定的解釈、幻想郷の賢者のケース
幻想郷の賢者達のみ、全く異なる基準を持っている。
儚月抄の話はそれ自体が、永琳に紫に対する不信感と恐怖を抱かせる事により、幻想郷の社会に人間として組み込む過程を描いた物である。即ち、以下の様な基準が存在する。
○妖怪は他の存在を恐怖させ、恐怖する者全てが人間である
これはあくまで基準であり、掟では無い事に留意しなければならない。他の住人に共有されていない以上、順守する義務は存在しない。従って、現状これに影響を受けるのは紫、華扇、隠岐奈のみである。
果たしてこの基準では、妖怪の一切を恐怖せずまた人間に信仰される聖や神子はどう捉えられているのだろう。




