第2章:ささやきと頭の中の物語
その日の空は灰色がかっていて、積乱雲に隠されていた。
それでも、幾重にも重なる雲の合間から、二つの天体が見えていた。
二つの太陽。その光は、不思議なほど弱々しかった。
とても広い野原に身を投げ出した少年は、目をすっかり虚ろにして、もう何も考えず、もう動かなかった。
ただ、ささやきだけが、途方に暮れた彼の心を苛み続けていた。
それは何時間も続き、その間、彼は雲が流れていくのを眺めていた。
[二百三十一! 二百三十二!]
そのとき突然、少年は誰かが歌うような声を耳にした。
幼い少年は怯え、我に返った。なんとか立ち上がろうとしたが、体はこわばっていた。
[百二十三…… おっと、ちょっと待てよ…… あっちで何か聞こえた気がするな……]
そのせいで、見知らぬ者は少年にどんどん近づいてきた。
体が言うことを聞かないとわかり、幼い少年は這って進むことにした。
[夢じゃないよな…… 脚!? 泥棒め! この野原は私有地だぞ!]
襲撃者は少年の脚に気づき、追いかけ始めた。
[ああ、どうしよう……]
哀れな幼子は口ごもった。襲撃者が近づいてくるのを見ながら、逃げ道がどこにもないことを悟って。
[ぼ…… 僕、誤解だって伝えなきゃ…… なんとか立ち上がらないと……]
少年は最後の力を振り絞って、その人物と向き合おうとした。そのとき、突然
ガツン!
何者かが、棒で少年の頭を力任せに殴りつけた。幼い少年は地面に叩きつけられた。
[痛っ!!!]
[なんだ、ただの子どもじゃないか!]
その人物は叫んだ。
まだ痛みに耐えながら、少年は目を開けた。襲撃者の背丈は自分とほとんど変わらず、肌はわずかに浅黒かった。髪はぼさぼさで、毛先が少し絹のようになめらかだった。そして、深い緋色の瞳が二つ。
[き…… 君は間違ってるよ、僕は泥棒じゃない!]
哀れな被害者は口ごもりながら言った。
もう一人の少年は、興味深そうな顔をした。
[へえ、そうなのか?]
[うん……]
少年はそう断言し、再び立ち上がろうとした。
そして
ガツン!
立ち上がった瞬間、もう一撃が浴びせられた。
そのとき、こっそりと、トンボに似た虫が主人公の耳から出てきた。
[どうして信じられるんだ!? お前が泥棒じゃないって、なあ!]
[うわあっ! お願いだよ! 信じてくれ!]
少年はひざまずき、続けた
[僕は泥棒じゃないんだ……]
[わかった、わかった! 信じるよ、立っていいぞ!]
その言葉に、少年は相手に笑いかけ、まだ少し震えながら立ち上がった。
[ありがとう!]
今度は、もう一人の少年が彼をもっと近くで観察した。
[おっ、お前の目! 左右で色が違うぞ!]
[そうなの?]
[「そうなの?」ってどういうことだよ? お前の目だろ? ところで、名前は何ていうんだ?]
少年は戸惑いながら答えた。
[名前? ぼ…… 僕、わからない]
もう一人の少年が遮った
[待ってろ、すぐ戻る! そこから一歩も動くなよ!]
彼は走り去り、我らが主人公はその姿を見失った。やがて突然、背中に袋を背負って戻ってきた。そして数を数えながら近づいてきた
[二百五十四! 二百五十五!]
彼は少年のすぐ隣に立った。
[よし、二百五十六! いいぞ、行こう!]
幼い少年は、少し気まずそうに、両手を握り合わせながら言った
[い…… 行くって、どこへ!?]
[俺の雇い主のところに決まってるだろ! まさか、ここに永遠にいるつもりじゃないよな]
彼は満面の笑みを向けた。
[ちなみに、俺の名前はラスタバンだ。よろしくな、名無し! ヒッ! ヒッ! ヒッ!]
[よ…… よろしく!]
こうして二人は、灰色の空の下、並んで道を歩き出した
ラスタバンは相変わらず、奇妙なカウントを続けていた
[なあ…… 名無し、俺の名前、どう思う!]
[すごくいいと思う! たぶん…… そう答えればいいんだよね?]
[ハハハ! お前、本当に変わったやつだな! 知ってるか、ラスタバンってのはドラゴンの頭って意味なんだぜ!]
[うわあ! でも…… ドラゴンって何?]
ちょうどそのとき、あの奇妙なトンボが、二人の少年のすぐ頭上で舞い始めた。
[ドラゴンってのはな、あらゆる束縛から自由でいられるほど強力な、空飛ぶ生き物のことさ!]
[うおお!]
少年はすっかり呆気にとられていた。
[ハハハ! すごいだろ? はあぁ…… いつか会ってみたいなあ]
[見て! ラスタバン、今日はついてるよ! ドラゴンが僕らのすぐ上にいる!]
少年は嬉しさにすっかり浮き立ち、人差し指で空を指していた。
ラスタバンは空を見上げ、恐怖で凍りついた
[いや…… あれは、ドラゴンじゃない……]
ラスタバンは、その言葉をかろうじて絞り出すことしかできなかった。
二人の頭上には、途方に暮れた少年の耳から抜け出したトンボがいた。
翼の音は、鈍く響いた。
その体は今や巨大になっていた。大きさは、もはやクジラに匹敵するほどだった。
[ドラゴンさん! おーい!]
その言葉に、怪物から霧のような煙が立ちのぼり始めた。
ラスタバンは、顔を引きつらせ
[走れ!]
ラスタバンは少年の手をつかみ、二人は全力で走り出した
[ラスタバン! ねえ、どうして走ってるの!?]
[四十八! 四十九! 五十! あいつは俺たちにろくなことをしないぞ! お前、生存本能ってもんがまるでないのか、まったく!]
いくら走っても、その生き物は二人に追いついていた。
霧はますます濃くなっていった。
[ごめん……]
[いいって、謝らなくて! 五十一! 五十二! ちゃんと俺の足取りについてきてるか!?]
[うん……]
少年たちは息が切れ始めた
霧はさらに厚みを増していった
[くそっ! 何も見えねえ! よく聞け! この野原から出なきゃならないが、そのためには二百五十五歩半の儀式をやり遂げなきゃならないんだ!]
二人の少年は速度を上げた。怪物は依然として二人のすぐ後ろにいたが、襲ってくる気配はなかった。
[百二! もうすぐだ!]
[ラスタバン、見て……]
彼は言われたとおりにした。すでに不安に縁取られていたその眼差しは、今や形を変えていた。
今やその顔には、絶望の色が浮かんでいた。
色とりどりの花びら
赤、ピンク、青、その三つが混ざった色、そしてほかにもたくさん
色彩の祭りが、霧に包まれた一帯をすべて覆い尽くした
二人の子どもは、たちまち動きを止めた。まるで催眠にかけられたようだった
[うわあ、きれい!]
幼い少年は、すっかり呆気にとられた顔をしていた
これらの花びらは、頭上を飛ぶ怪物から発せられていた。
翼から剥がれ落ちていたのだ。
それらは信じられないほどゆっくりだったが、最初の一枚の花びらがラスタバンの耳元に運ばれたとき。
そこから声が聞こえた
- 知ってるか、ラスタバンってのはドラゴンの頭って意味なんだぜ
そして
突然
- お母さん!
- お母さん!
- ハハハ!
- ごめん!
- 見て! ラスタバン、今日はついてるよ! ドラゴンが僕らのすぐ上にいる
- 違う違う! あの子は不死身なんだ!
- ハハハハ!
- 僕は誰?
声の奔流が二人に降り注いだ。
二人は四方八方から襲われた
[アアアアアアア!!! 痛い!!!]
ラスタバンの耳から、血が筋になって噴き出した
[ラ…… ラスタバン……]
少年はその場に崩れ落ち、痙攣し始めた
それは、ただの不協和音ではなかった。
トンボのほうは、相変わらず同じ場所にとどまっていた。自分の下にいる者たちには、ほとんど注意を払っていないようだった。
ただ霧を撒き散らし、花びらを広げ続けるだけだった。
ラスタバンは、なんとか体勢を立て直した。
[お…… 俺たちは助かる、し…… 心配するな……]
話し相手はすでに気を失っていた。長くは耐えられなかったのだ。
ラスタバンは少年を持ち上げ、背負ったまま進み続けた
[百五十一!]
- ごめん
- ラスタバン! また何かやらかしたのか!?
- ドラン親方! 俺の新しい掘り出し物を見てください!
- コケコッコー!
- 私の新しい商品をご覧ください、保証しますよ、こいつは大物です。
見知らぬ声までもが、混ざり始めた
ラスタバンは、全身血まみれのまま進み続けた
決意に満ちた眼差しで、彼は進み続けた
[百五十八!]
- ごめん……
- 死ぬ気だ!
騒音は続き、霧は濃くなり、ラスタバンは数字を一つ、また一つと数えながら進んでいった
[二百十……]
(俺…… 俺はもう限界ぎりぎりだ、今いくつまで来たんだったか?)
もう少年を背負って立っていられなかった。脚が震え出し、彼は意識のない少年の体を手放してしまった
(くそ……)
彼は思った。
その目は、血と花びらに覆われていた。
[しっかりしろ、ラスタバン、今ここで諦めるわけにはいかない]
彼は自分を奮い立たせた。震える体で、仲間の襟首をつかんだ
今度は、もう一人の少年を地面に引きずりながら進んだ
[二百二十!]
彼は進み続けた。一歩ごとに、数字がリズムを刻んでいた。
[くそ、この甲高い音は何だ! 俺の耳が!]
ラスタバンの視界がかすんだ
(俺は、こうやって死ぬのか……)
[二百……]
ラスタバンは、その衝撃に耐えきれず倒れ込んだ。
今や、物悲しい静寂が辺りを支配していた。
[四十八…… くそっ! 勘に従って正解だったぜ! また何てバカなことをやらかしたんだ、バン!]
しわがれた声が、静寂を破った。




