8.ボランティア部
「はぁ、あいつらは硬い文章以外を小説だとは思っていないらしい」
「そんな雰囲気だったね」
文芸部の体験を終えた後、肩を落とす榊を慰める。
「榊はこれからどうする?ボランティア部に行くか?」
「ボランティア部も純愛な気配を感じるが、演劇部に行ってみようと思う」
「演劇部か、演技に興味があるのか」
「演技もだが、脚本もだな。それに演技のつもりが……なんてこともあるかもしれないだろ?」
榊はらしいことを言って親指を立てる。
「七ノ瀬は時間的にボランティア部に行くべきだろう。さっきみたいに一方的に話されたら最悪だろ」
「あと五十分か、確かにそうかも」
これでボランティア部に行けなかったら後悔しそうだ。
「じゃあ、また明日だな」
「では、また明日!」
榊は元気よくそう言うと走り去っていく。
「さて、俺も行くとするか」
俺はパンフレットを元にボランティア部の部室まで行く。
教室の扉をノックして開くと見覚えのある小麦色の髪が見える。
「こんにちはって、七ノ瀬君ではないですか」
中に入ると東雲がいた。
その他には二人の女の子がいる。
「東雲はどうしてここに?」
「私は中等部からボランティア部に所属しているんです。七ノ瀬君は体験に来てくれたんですか?」
僕が頷くと東雲は中に案内してくれる。
そこには前もって覚えていた人物が一人と、覚えていない人物が一人いた。
「こんにちは、ボランティア部の部長の藤原唯紗です。能力は〈笑顔〉です。よろしくお願いします!」
覚えていた人物である藤原唯紗が自己紹介をする。
学校内では人気者で、俺でも知っているぐらいだ。
そして東雲とは違うタイプの無邪気さを持つ女の子だ。
両頬に指を当てたあざとい笑顔が可愛いが、そんなことより口にした能力に対する動揺の方が強い。
思わず東雲の方を見ると困ったような表情をしている。
「二人は知り合いなのかな?」
「クラスが一緒なんです。それと唯紗ちゃん」
東雲は他の二人に俺の能力を説明してくれる。
「……ってことは私の能力を知ってるってこと?」
「そうだね、〈神殺し〉でしょ?」
俺がそう口にすると藤原は机に肘をついて、露骨に気だるそうな表情になる。
「はぁ、じゃあ取り繕う必要もないのね」
「あ、そんな感じなのね」
俺がそう口にすると他の二人が頷く。
「一応私も自己紹介しておこうかな。唯紗ちゃんと同じクラスの天美透子
《あまみとおこ》で、能力は〈スナイパー〉よろしくね」
「よろしく天美」
「うん、よろしくね七ノ瀬君。それにしても新鮮だねー、唯紗ちゃんの能力を知っている男の子なんて」
「そうなの?聞いた感じでは試験で使ったことがあるっぽいけど」
俺がそう言うと藤原が嫌そうな顔をする。
「神野に聞いたでしょそれ?なら私と唯紗ちゃん以外を制圧した話もしてほしいわね」
「ということは、藤原の能力を知ってるのって、ここの三人と神野ぐらい?」
「そうですね、神野さんとの戦いは私がしたことになってるので、あとは先生方だけかと」
東雲の説明を受けて全容を理解する。
もしかしたら、この学園で能力を隠している人は多いのかもしれない、
「それで、七ノ瀬はボランティア部に興味があるの?私が言うのもなんだけどメリットは無いよ」
「ボランティアってメリットを求めるものじゃないでしょ」
「それはそうなんだけどね。でもさ三人の美少女がいるのに男の部員がいないってそういうことじゃない?」
「まあ、確かに」
俺がそう言うと藤原はニヤッとする。
「美少女は否定しないんだ」
「否定できないでしょ」
どんな相手でも否定する気はないが、この三人に関しては事実だからなおさらだ。
「ふふ、からかうのはここまでにして、ここからは本気ね。ボランティア部は私が〈笑顔〉を向けることで仲間の士気を上げるという能力に現実味を持たせる為に始めたものだけど、それでも本気でやってるつもり、半端な気持ちなら辞めて」
藤原は真剣な表情でそう言う。
俺にはボランティアをしたいという明確な意思はない。
ただ学院に入って任務を与えられたことで、俺はいろんな人が国のため、人の為に働いていることを知った。
俺も今までほぼ無能力者として生きてきた。
助けられてばっかりの人生だから俺に出来ることができるならやりたい。
「俺は、その、助けられてばかりだから、人の役に立つことができたらいいと思ってるんだけど……」
言えない部分も多くて完璧に伝えられずにもどかしい。
どうしたら俺の気持ちを伝えられるだろうか?
「決して適当な気持ちで来たわけではなくて――」
「もう十分じゃないかしら唯紗ちゃん?」
俺の言葉を止めたのは天美だった。
顔を上げると藤原が顔を少し赤くして視線を外している。
「そうね、まさかここまで真っ直ぐ伝えられるとは思わなかったわ」
「……そうでもしないと伝わらない気がしたから」
俺を俯瞰して思い返してみるとかなり恥ずかしい。
急激に顔が赤くなっていくのがわかる。
「これからよろしくお願いしますね七ノ瀬君!」
嬉しそうな笑顔を向ける東雲がそう言うと真剣な雰囲気が霧散する。
それから俺はボランティア部の活動について説明を受けて解散となった。
それと家に帰って天美の能力を改めて調べると、〈スナイパー〉であっていて、跳弾や貫通弾と言った弾に特性を持たせる能力だとわかった。




