エネルギープラント侵入計画
『起ーきーてー。起きろー』
「おはよう、ササナミさん。起きてますよ」
呼びかけられた瞬間目が覚めた。寝覚めはいい方だ。
ベッドから降りて体を伸ばす。短時間睡眠のわりに体調はよい。
リビングに行くと、すでにアステルが待っていた。
「おはよう。ベイブ」
「おはよう、よく眠れた?」
「うん、よく寝た」
『朝ごはんですよー。それともブランチかしら』
顔を洗って戻ってくるとササナミさんの呑気な声。
テーブルの上にはサンドイッチとホットコーヒー。二人分。
「いただきます」
サンドイッチに手を付ける。ベーコンとレタス、それにトマトが入っている。新鮮な野菜が美味しい。
アステルを見るとサンドイッチをちびちび食べながら、コーヒーを口に入れ……。
「……苦い」
「ミルクと砂糖を入れてみて」
「美味しくなった」
ミルクコーヒーを口にして微笑むアステル。
アステルの微笑ましい姿を眺めながら朝食を終え、エネルギープラントをどう攻略するか相談する。
「ヨハンの体がある隠れ家とシャフトで繋がっている。ザルヴァの記憶」
「ひょっとすると停滞カプセルに使われている出どころ不明のエネルギー源って……」
「そう。エネルギープラントから供給されてる」
「エネルギー伝送シャフトか。通れるかな?」
「分かんない。確認が必要」
『やつらの隠れ家は西ブロックよ。繁華街の地下にある大きな倉庫ね』
「保安課のエージェントが見張ってるんですよね?」
『二四時間態勢でね。今は三人のエージェントが見張ってるー』
「ベイブ、シャフトの開口部がどこにあるか教えて」
「エレベーターピットにつながっている」
『エレベーターシャフトの下ね。調べられるか聞いてみるわ』
しばしの沈黙……。
『今調べてるそうよ。検査資格を持っている子がいて助かったー』
シガ・シェルターは古いシェルターだ。基本ブロックには遠隔制御が効かない箇所が多々あるそうだ。
『直径約二・五メートルの縦穴が続いているそうよ。中心に超伝導ケーブルらしきものを発見ー』
エージェントが撮影した画像を見せてもらった。六十センチほどのケーブルを三方向から支持架が支える構造だ。
「何とか通れそうだね」
「懸垂下降で約四十キロ。行ける?」
「体力よりも温度が問題かな。たしか……」
『観測データがあるわ。地下四十キロで約九百五十度よ。でも、超伝導ケーブルを通してるから常温のはずよ。高温下で冷却はコスト的に無理ね。でも気圧は十メガパスカルを超えるわよ。装備なしじゃ無理』
「そうだった。人体は脆弱」
「うん、困ったときは相談だね。ベイブ、跳躍艇につないで」
『お困りのようで』
跳躍艇はノワールさんが当番をしていた。
『地下四十キロですか。侵略者もやりますね。ササナミの見解どおりシャフトは常温に保たれているでしょう』
ノワールさんに事情を話すとすぐに回答が返ってきた。
「あとは気圧の問題か」
『十五メガパスカルくらいですね。スラスターでインナーを強化しましょう。装甲服の外骨格みたいになります』
「そんなことができるんだ」
『ええ、ええ。できますとも。アプリケーションをアステルに送ります』
「受け取った。インストールする」
アステルが僕の首元のチョーカーに手を伸ばす。
『あとは持ち込んだ防毒マスクに調整用カートリッジを取り付けてください。普通に呼吸できるはずです。アステルは大丈夫ですか?』
「うん、これくらいの環境なら今の体でも平気」
「ノワールさん、ありがとう。これからエネルギープラントに向かうよ」
『防御はこれで万全ですが、その気圧では水の中のように感じるはずです。アプリケーションに多少の軽減機能をつけていますが、お気をつけて』
さあ、エネルギープラントを攻略しに行こう。





