セルペンス人
投影された巨大な「フクロウの目」に参加者全員が釘づけだ。
「これはまた……」アルが絶句する。
「気持ちは分かるけど続けるよ。どこに浮かんでいるか説明するね」
プロテウス改め、セルペンス人の都市は赤道に沿って拡大していったようだ。
元々、変温動物だったセルペンス人は、日射量の大きい低緯度帯を好む傾向にあった。
恒温動物に進化して、知的種族として文明を獲得しても、その性質は変わらず、地下に築かれた巨大な都市の底には、恒星光が燦々と降り注ぐ。
「洞くつから身を乗りだして、わずかに差し込む恒星光を浴びていた、そんな過去の時代からの習性かもしれないね」
映像を切り替えながら説明を続ける。
セルペンス人の地下都市は、ドリーネを中心に構築されている。
自然に形成されたドリーネを、シャフト化工事で拡幅整形し、巨大なドーム状の透明天盤が覆う。
シャフト内壁に、入口を覗かせる無数の洞くつがセルペンス人の居住区だ。
天盤直下の広大な空間は、恒星に明るく照らされるワークスペース。
居住区で睡眠を取る以外は、ここでセルペンス人は日々の活動を行っている。
「アライアンスの偵察機が見つけた最大の地下都市。たぶん首都だろうって」
首都の映像を出す。
大規模なドリーネが形作るシャフトの内部には、外部からの視線を遮るように設置された金属製のシャフト。
「なにせ上空からは丸見えだからね。金属のシャフトの中は、支配者一族の居住区みたい」
「偵察が楽でいいですね」とノワール。
「今回の作戦を立案したマエストロは、支配者の一族を特等席に招待するつもりらしいよ」
アライアンスのパフォーマンスを立案するマエストロは、首都に目標を定めたのだ。
「ハンター七五eに衛星は無い。ならば衛星を贈ろうではないかって言ってたよ」
作業を記録した映像を流すと皆の注目が集まる。
最寄りの小惑星帯に大量の分子機械を放出、多数の小惑星を分解、再構築を行いながら、セルペンス人の母星へと向かう。
「気づかれないのか?」
アルから当然の質問がきた。
「大規模な隠蔽をしてるって聞いたよ」
「この規模の隠蔽かい……マエストロは本気だね」
コハクがつぶやく。
「ハンター七五eは地球より高重力だけど、自転速度が速いから静止軌道はあまり変わらないみたい」
分解された小惑星が静止軌道に集結していく様子が表示される。
温泉の湯気が換気口に集まる光景を彷彿とさせる。
シガ・シェルターで宿泊した名ばかりの仮眠室。実質は貴賓室に設置されていた温泉を思い出す。
「静止軌道上で組み立てられて完成だよ。超低密度らしいけど迫力があるね」
やがて、湯気は球体を象り、瞳孔と虹彩が形作られる。
刹那、瞬膜が瞬く。まるで生きているようだ。
「常にこれに見下ろされてるんじゃ堪えるだろうね……」
コハクが同情するように首を振る。
「実際は真っ黒で地球人には見えないけど、赤外線知覚を持つセルペンス人にはこう見えるそうだよ。大体これくらいの大きさで」
両手を肩幅に広げてイメージを伝える。
実物の大きさを知りたければデータを確認してほしい。
想像をはるかに超える大きさに、僕は知って後悔したよ……。
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