偽彼女
それを見たとたん私の身体が震えた。
目の前光景を信じたくなかった。
好きな人が恋をしている優しい顔。
目線は最近さとやがよく話しているあの子。
紹介されて、一瞬でさとやのタイプであることがわかったあの子だ。
あぁ、またなの。どうして私じゃないの。
涙がこぼれそうになるのを我慢して、繋がっていない方の手をぎゅっと握る。
私、山田陽子は今、手を繋いでいる折原さとやが好きだ。
さとやは頭がよく、人当たりもよく、顔もよい。
三拍子そろっているから当たり前みたいにもてる。
私とは同じ年で、腐れ縁とも呼べるほど学校、クラス、部活が一緒になる幼馴染みだ。
そして、現在進行形で偽彼女でもある。
「もてるのめんどくさいわー」
と愚痴りにきたさとやに
「偽彼女になったげよか」
と内心どきどきしながら提案してみたら
「乗った!」
と軽い返事をされ、今にいたる。
「でも、それも終わりかもな…。」
小さく呟く言葉が微かに聴こえたのか
「え?なんて?」
と、さとやの意識が私に戻ってきた。
「今日の晩御飯何にしようかなってね。」
にこりと笑いながら私はウソをつく。
さとやの記憶刻まれている最近の私はウソで塗り固められている笑顔ばかりだろう
何年も積み重ねられたウソの私にさとやは気付くことはないんだろうな。
だっては私はさとやを見るたび泣きたくなるばかりだから。
あんな提案するんじゃなかった。
いつか別れると判っていたのに。
それが今なんて辛い。
この繋がれた手さえ、私の涙をさそう。
「豚カツが食べたいな」
泣きそうになる私の意識をさとやが戻す。
「お、いいね~!って、また私の所に食べに来るの?」
「当たり前だろー!なんたって俺はお前の彼氏様なんだからな!」
ニカリと爽やかな笑顔を私に向ける。
今それを言うの。
私のことなんて好きじゃないくせに。
さっきまで私じゃない人を見つめていたのに。
でかかった言葉を飲み込み私はまた嘘の笑顔を向ける。
「彼氏様、そういうなら明日は豪華なものでも奢ってもらおうかしら。」
「げ!墓穴ほったー!」
と、二人でクスクス笑いながら私の家とかえって行った。
夕食を食べ終わりダラダラと過ごした後帰っていったさとや。
その様子はいつもよりソワソワしていた。
別れ話を切り出したかったんだろうな。
さっきまでさとやが過ごしていた場所を見つめながら呟く。
ポロっと雫が落ちる。
なんでいつも私じゃないのかな。
気を張っていた分、止めどなく流れる涙はソファーにすいこまれていく。
好き。
好き。
好き。
伝える機会なんていくらでもあったのに怖じ気づいたのは私。
恋をしたさとやに伝えても迷惑なだけだ。
笑顔で別れよう。
さとやが幸せになってくれれば、きっとこの恋も苦しくても終らせられるから。
さとやから切り出されたら私はきっと泣いてしまう。
だからさとや…明日あなたに別れを告げるね。
翌日の放課後。
「さとやー」
課題をしながらいつも通りを心がけて名前呼ぶ。
「んー?」
同じく、課題をしているさとやは気もそぞろに返事をした。
「別れよう」
なるべく軽く言った。
私は言った。
言ってしまった。
言えたことにホッとして、私はさとやの顔を見ていなかった。
ガッと腕を捕まれ私はビックリしてさとやの顔を見る。
すると、そこにはこれまで見たことがないほど怒っているさとやがいた。
「な…!?」
なんで、そんなに怒っているのかと問おうとしたらその前に
「ちょっと来い!」
と、捕まれた腕を引っ張ってその場を離れた。
人気がない教室に入ると同時に私は壁際においやられ
ドン
と壁に向かって手をついたさとやに囲まれた。
「な、なに?」
明らかに怒ってるさとや。
「何じゃねーだろ?どうゆうことだ?」
「どうゆうことって…。」
「別れるって言っただろうが。」
だから、なんで怒ってるのよ。
さとやがわからないよ。
「言ったよ?」
「なんで、別れようなんて言うんだってきいてるんだ。」
「だって…。」
「だってなんだ?」
あんたに好きな人が出来たから。
喜んでくれると思ったのに。
思わず目の端から流れ落ちる涙。
「な!?」
涙に驚いたのか少し私とさとやの間に距離ができる。
でも、すぐに詰めてきて、グイっと抱き寄せられる。
そして
「きつく言って悪かった。泣かないでくれ。」
と背中を撫でられた。
私はそんな優しさと抱き締められたちょっとした幸福感でますます涙止まらなくなってしまった。
さとやは私が泣き止むまでずっと待っていてくれた。
「…それで?なんで別れようって言ったんだ?」
泣き止んだ私を見てさとやが私に問う。
「…す」
好きな人という前に涙が零れそうになって言葉を止める。
「…す?」
さとやが聞き返してくる。
私は手を握り、ゆっくり言葉にする
「す…きな人が出来たから。」
その言葉を聞いてさとやは固まった。
「好きな…人…。」
さとやは私から離れてうつむいて
「誰?」
と聞いてきた。
「誰って…笹山さんでしょ?」
その答えにビックリしたのかバッと私の顔を見る。
「…そ、そうか。女の子か…。ってか、なんで疑問系?」
目を泳がせながら言うさとや。
「?…女の子だよ?疑問系って…違うの?」
「違うのって…何が??」
「え?だから、笹山さん。」
「笹山さん??の何が違うの?」
「だから!笹山さんのこと好きなんでしょ!ってことよ!!」
「え?好きじゃないよ?好きなのは葉子だろ?」
「え?」
「え?」
…間。
「葉子は笹山さんのことが好きなんだろ?」
「…は?好きじゃないよ。笹山さんのことが好きなのはさとやでしょ?」
「好きじゃないよ。俺は葉子が好きなんだから。」
「え?」
「…あ」
と口を抑えて真っ赤な顔を抑えるさとや。
私は言葉の意味が理解出来なくてさとやの言葉を繰り返しす。
ヨウコノコトガスキナンダカラ
ヨウコって誰?ヨウコは私…。
脳が言葉の意味を理解した瞬間、カーッと身体が熱くなる。
「え?…あ。え?」
詰まる私にさとやが近づいて、
「葉子。」
と呼ぶ。
真っ赤な私はうつむきながらさとやに視線を向ける。
さとやも真っ赤になりながら私を見つめる。
そして、さとやが口をひらく。
「…葉子、ずっと好きだった。偽彼女じゃなくてちゃんと彼女になってくれませんか?」
あぁ、これは夢だろうか。
今、さとやは私を見つめて私を好きだと言ってくれている。
ポーッとしている私にさとやが
「葉子…返事は?」
と聞いてくる。
頭の中で好き好き好きと好きが溢れて、私はさとやに向かって抱きついてしまった。。
しかし、抱きつくとは思ってなかったのか、さとやはバランスを崩して後ろに倒れ込んでしまった。
「イッター!」
と、さとやの声に
「ご!ごめん。」
と慌てて退こうとするがさとやの腕に阻まれ動けない。
「さとや?」
と名前を呼び、顔を見ると。
さとやは笑っていた。
あの時見た優しい恋する顔で。
その顔を見つめているとさとやの手が私の垂れ下がった髪を耳に掛けると頬に触れた。
「葉子…返事。」
まるで、いとおしいというようように見つめられ、頬に触れられる。
「私もさとやが好き…。本当の彼女にしてください。」
そして、私たちは初めてキスをした。
夜中のテンションで書き上げました。
拙いところもあったとおもいますが、
最後までお読みいただきありがとうございました。




