四十五章 最終章
最終章となりました。
長々とこの作品の御愛読、有り難う御座いました。
続編を予定しています。
もし、宜しければお願い申し上げます。
『智香ちゃん?どうしたの?』
『え?』
『少し待ってて?今あいつが近藤さん達と話してるから』
沖田さんは着物の袖に目を移す。
『なぁに?』
『え?』
『掴んでる』
『あ…すみません…』
いつから掴んでいたのだろう…。
恥ずかしくなってしまう。
沖田さんはあたしを見てくれる…。
掴んでいたのは…恐らく、先程の接吻のせいだろう。
嫌な罪悪感ではない。申し訳無い罪悪感が
あたしの中にある。打ち明けるべきなのか
それはいけないのか…。
『智香ちゃんてモテるよね』
『なっ!急に何ですかっ!』
『取られないよう気をつけないと』
『此処でそんな話…他の隊士に訊かれたらどうするんですか…』
それは樋口さんのあの行動も
同じ事が謂える。
そうこうしていると樋口さんが広間から
出て来た。土方さんの話が終わったのだろう。入れ替わるよう、あたし達が中へ入る。
『総司の姉上は俺達が何とかする』
近藤さんが謂う。
『原田達に話した通り、”隊務で暫くの間京を離れる事なった”と。だから心配要らねぇよ。平助にもちゃんとそう伝える』
『有り難う御座います』
『此処を離れるだけだ。生活には困ることはない。山崎君と原さんが協力してくれる事となっている。智香君も身体には気をつけて』
『はい』
『バタバタしてたから何もやれなかったが…戻ってきた時には盛大にやってやるよ』
『それじゃ僕は沢山魚を釣ってきますね』
『お前は本当に釣りが好きだなぁ?』
『そうゆう土方さんだって』
『あ、もう一つ。お前の班は樋口に任せる。勿論俺も入るが』
『土方さんの方は大丈夫何ですか?』
『なぁに。俺は何も無い時だから気にするな』
『判りました。向こうへ着いて落ち着いたら文を書きますよ』
『ああ。俺もトシも返事は書く』
此で心置きなく江戸へ行ける。
沖田さんの病気…。考えるだけで
胸が締め付けられる…未来へ戻って
治療出来るならそうしたい。
此方での労咳(結核)治療法は
主に栄養と休息
無理の無い程度に動いても良い
それと労咳の薬が開発されるのはまだ先。
昭和十八年にワックスマンという人が
作り出す。
ストレプトマイシンだったかな…。
リファンピシンは治療期間が九ヶ月間らしいけれど…。
今この幕末では先程の栄養と休息。
あ、かかりやすい(労咳になりやすい)人、ストレスも一つの原因らしい。
何かで観たのを覚えてる。
結核患者がやってはいけない行為。
沖田さんのキスは小鳥たちのキスみたいなものだったなぁ…。
自分で労咳だと知っていたから。
コレラとか労咳とかこの時代では
不治の病。
広間を出ると、沖田さんは健康診断の
結果を教えてくれた。
咳や胆等が確認は難しかったけれど
”恐らく労咳だ”と診断されたーー。
『栄養かぁ…畑も借りれるかなぁ〜?』
『呑気過ぎますよ?』
『そう?』
あたし達は中庭にある池の鯉を
縁側に座りながら見る。
『労咳は肺の病気ですけど…胃にまわり、血を吐きます。血の色を見れば判りますから…その時は無理しないで下さい』
『うん。残念だよねぇ』
『え?』
『君を抱き締める事しか出来ないんだもん』
『あたしはそれだけで嬉しいですよ』
『そう?』
『はい』
『…移ってたら…ごめん…』
『接吻…ですか…?大丈夫です白血球がやっつけてくれてますよ』
重なっただけのキスだもの。
未来へ…彼を連れて行きたい…!
治したい…
此からもずっと一緒に居たい…。
『沖田さんを連れて…未来へ行ければ良いのに…』
『え…?』
『治したい…労咳を…治してこの屯所に戻ってまた皆と楽しく過ごしたいです…
こんな考え…都合がいいのは判ってます…未来を良いように使って…
あたしは狡い人間です…』
『気持ちだけで僕は嬉しいよ未来は未来、こっちはこっち何だから仕方のない事だよ。病弱な僕がいけないんだから』
『沖田さんは病弱なんかでは有りません!』
『智香ちゃん…』
『未来の本では確かに病弱だとか書かれていますけれど…流行病のせいで…弱った身体に菌が入ってしまっただけなんです…沖田さんは弱くなんかない…です』
『有り難う…。最後の年くらい…病気の事は忘れよう?僕が謂うのも何だけど…君の笑顔が見たいから』
『沖田さん…』
『だから泣かないで?』
『沖田さん…沖田さん…ぅ…』
『栄養をつけて、身体をもっと丈夫にするから。だから君は僕の傍に居てくれるかな?』
あたしは顔を挙げることが出来なくて
ただ沖田さんの胸の中で泣くだけ…。
本当にあたしは…新選組や沖田さんの救世主なの?変えられる事が出来るの?
労咳という病気に直面して
今こんな状態のあたしが…彼等を救えるの?
……違う…。
駄目だ。弱気になったら…。
絶対に沖田さんの病気も治して
此処へ戻って来るんだ…!
『…ずっと傍に居ます…絶対…沖田さんの病を治して…戻ってきて…』
ピリリリリ…
ピリリリリ…
『何…?何でスマホが…』
『…初めて鳴ったね…』
スマホの着信画面には
”沖田 総司 労咳(結核)治療開始”とあった。
着信音は鳴り止んだけど
画面はそのままだ。
程なくして、あたし達は屯所を出た。
勿論皆に何も謂わず、置き手紙を数枚残して…。
『本当に文だけで良かったんですか?』
『だって彼等には”隊務で”ってなってるでしょう?』
『まぁ…そうですけど…』
『いいの。本当の事謂ったら皆目丸くしちゃうし』
いつもと変わらない沖田さん。
きっとあたしを安心させてくれているのだろう。
本来ならあたしが彼を安心させる側なのに…。
『一緒に除夜のかね、訊けるね。毎年見回りやりながらだったから』
『お疲れ様です』
『有り難う』
スマホが鳴ったところから
まだ続きます。
続編は短編からかまだ迷っています。
此処までお付き合い頂き
有り難う御座いました。
【http://ncode.syosetu.com/n9144cm/
新しく連載開始しました
続 キミをこの剣で…~新選組~】
になります。
続きは此方となります。
スミマセンm(_ _)m




