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【ハッピーエンド】普通の女の子のアタシ、冒険者やってます。  作者: ミンミンこおろぎ
第八部 愛とお祭り
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第68話 あなたの人生、大切なモノは何ですか?

 シオドアは、鉄板の上に肉の塊をどんと出してきた。

 肉の塊は、箸で突っつくと、柔らかくホロホロとほぐれる。

 良い匂い。すっごく美味しいそうな良い匂い。


「「「うわぁぁァァ」」」


 アタシ達は声を上げる。

 歓声というより、溜息に近い。

 美味しそう、超おいしそう!!



「これだけで食べようとすると、肉がこぼれてしまうから

 薄く切ったパンに乗せて、ソースをかけて、野菜やピクルスといっしょに食べるんだ」


 シオドアの説明、みんなちゃんと聞いた?

 肉しか見てないんじゃない?



 アタシは、パンをくるくると巻き、肉と野菜と一緒に食べる。

 美味しい!


 パンも野菜も良いものを買ったけど、主役は肉、肉よ。

 あー、美味しい。


 ビールは樽ごと冷やしておいた。

 冷えたビールがまた肉に合う。



「あたしはね、こいつの肉料理を食った時に、しばらく一緒に冒険しようと思ったんだよ」

 ヘンニが言ってる。


『輝ける闇』結成のきっかけは、肉!

 まあ、そうだよね。美味しい肉は正義だ。



 どんどんどん!


 玄関から大きな音がする。


 タイミング悪いよ。

 今、美味いものを食べてるのに。

 しょうがない。幹事のアタシが出迎えるか。



「シオドア、ひどいですね。私が来る前に始めるなんて。

 師に対する敬意が足りません」


 遅れて現れたのは、巨デブハイエルフのケレグント師だ。

 これで招待したメンバーは全員揃った。


「勝手に遅刻したのは、ケレグント師あなたです。

 肉にはタイミングがあるんです。

 ちゃんとあなたの分は取り分けて置きました」


 シオドアは答えると、肉の乗った小さな鉄板を渡す。


「おおっ気が利きますね。この肉、なかなかいけるじゃないですか。

 シオドア、あなたは料理に関しては出来の良い弟子ですよ。

 嘘じゃありません。

 あっ、どうも、ビールいただきます」


 ケレグント師の食べ方を見れば、嘘じゃないのは分かるってば。



 食事が一段落したら、デザートだ。

 温めた芋のお菓子の上に、アイスクリームを盛る。

 両方とも、ネリーが推薦したロイメの高級菓子屋で購入した。


 これも美味しい。

 甘い物は別腹だね。




「では、皆様、レヴィへのプレゼントを渡す時間です」

 幹事のアタシは宣言した。

 お別れパーティーの重要イベントだ。



 最初はヘンニだ。


「これはプレゼントじゃなくて、冒険者としてのレヴィの取り分だね。

 ロイメのお金は東では使えないから、物に変えたよ」


 丈夫そうな革袋から、キラキラ光るモノが出てきた。

 きれいな石がいくつもある。宝石?

 それから、袋の中にさらに小さな袋がある。


「この小さな袋の中身は砂金だよ。少ないけど。

 全部砂金にしようかとも思ったんだがね。

 金は良い運も悪い運も運んでくるからね」


 アタシは砂金が好きだけど、ヘンニの言い分も分かる。



「残りは、宝石?」

 アタシは聞いた。


「珍しい宝石もあるし、それほど珍しくない石もある。

 モノの価値は場所によって変わるんだよ。

 トロール族の村とロイメで価値が違った。

 東ではまた変わるだろう。

 向こうで必要なモノがあれば、交換に使うといいよ。

 きれいだけど、石っころなんだから」


「ありがとうナリ」



 次に出てきたのは、レイラさんとマデリンさんだ。


 二人が取り出したのは、銀色と青色の糸で編まれた輪っか。腕輪みたいなの?


「アタシとマデリンの髪の毛で編んだわ。

 若い女性の守護神(アレグレイシア)様と愛の女神(アプスト)様の加護が込められている」


「ありがとうナリ。でも、これどこに着けるんだナリ?」


 腕輪に見える。でも手がつっかえてレヴィの腕に入らない。


「大丈夫よ、入るから」

 レイラさんが手を添えると、腕輪はスッとレヴィの腕にはまった。


「大事にしますナリ」

 レヴィは腕をじっと見ながら言った。



「ま、それなり大事すればいいから」

 レイラさん。


「ほどほどで大丈夫だよぉ」

 マデリンさん。


 おそらくだけど腕輪はガチの本物。

 髪の加護だか神の加護だかに関わる物だろう。



 その次はネリーだ。

 正確には、『輝ける闇』の女性メンバーとエルフのセリアとドワーフの武術教官、以上でまとめて一つの贈り物だ。


「私達からはナイフよ。

 獲物の解体とかにも使える便利なヤツ」


「ありがとうナリ」


 レヴィは鞘からナイフを抜いた。白銀に輝く刀身が現れる。良く切れそう。



「刀身は、ヘンニとスザナが選んだわ。鞘はわたしが選んだ」

 ネリーが言った。


「鞘はちょっと地味じゃない?」

 アタシはネリーに意見を言った。


「目立ち過ぎるのも危ないわよ。

 因みにこの鞘は、今のロイメの流行り。

 地味好みってヤツね。デザインも素材も見る人が見れば凝ってるのが分かるわ。

 もし東に、これの良さが分かる人がいたら、美的センスがあると見ていいわよ」


 要はネリーの貴族趣味か。

 ロイメ娘のアタシが言うのもなんだけど、地味好みってよく分かんないんだよね。


 まあ、いいか。ナイフは良いものみたいだし。

 ……実を言うとね、アタシは『ゲームに使えるカード』を勧めたんだよ。没になったけど。




「これは俺からです。

 冒険者通信の最新号です。

 ロイメのお土産にどうぞ」


 冒険者ギルドの監視員が持ってきたのは、冒険者通信(タブロイド紙)だった。

 ロイメらしいお土産だ。


 見出しは、なになに。夏のお祭り復活!

 うぉ、マジで、祭り復活したよ!


「やったあ!!コジロウと一緒に行ける!」

 スザナが歓声を上げた。



 えーと、お祭りの話はちょっと置いておく。



 プレゼントの大本命シオドアの番だ。


 シオドアのレヴィへのプレゼントは、きれいなガラスの瓶に入った、……乾燥フルーツかな?


 これは意外だ。

 シオドアのことだし、もっと印象に残る物を持ってくると思っていた。


「乾燥フルーツの砂糖漬だ。疲れた時に食べて欲しい。

 もちろん誰かと一緒に食べても良い」

 シオドアは言った。


 レヴィは瓶と瓶の中身をじっと見つめた。


「シオドア、ありがとうナリ。

 これで友達を作るナリヨ」

 レヴィは答えた。



「私のことを忘れてもらっては困ります」


 あー、もう一人いたね。ケレグント師。


 アタシのプレゼント案、『ゲームに使えるカード』に文句を言って潰したのは、ケレグント師である。


 カードのどこが悪いのよ!

 仲間と遊べる、一人でも遊べる。旅立つレヴィへの贈り物には一番じゃない?


 でも、ケレグント師の返事は、ともかく駄目の一辺倒だった。

 東の連中が駄目だって言ってるそうな。


 アタシは「レヴィはカードもルールも既に知ってるよ」って反論したよ。

 そしたら「向こうの材料でレヴィが新しく作る分には構わない」とか答えてくるの。

 訳わかんない。もう。



「今日は、魔術花火を持ってきました。

 皆で楽しみましょう」

 ケレグント師は言った。



 肉を焼く炉の火を消して、代わりに火の付いたロウソクを立てた。


 中庭は一気に暗くなる。



 順番に手に持った魔術花火に火を付けた。

 魔術花火は、キラキラ光を撒き散らしなが

 ら、色を変え燃えていく。


 アタシのは白の渦巻き、シオドアは青の星、ネリーは金色のフワフワ、ヘンニは明るいオレンジの炎、スザナはピンクで星たくさん、レヴィのは七色に色を変えた。

 他のヒト達も皆キラキラで美しい。


 闇の中で輝く花火を『輝ける闇』のみんなと見たこと。

 アタシはずっと忘れない。




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