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第59話 違うんだ、そうじゃない

 アタシは、注射針を通じてレヴィの血が吸い上げられていくのを見ていた。


 うぅっ、痛そー。

 スザナは目を背けた。

 アタシも見てて目眩がしそうだった。


 レヴィ本人によると大して痛くないんだって。

 本当?我慢して嘘ついてない?



 その後、ケレグント師とマデリンさんは実験室になった図書室に籠もった。


 なんかさ、二人でマデリンさんが持ち込んだ「2〜3日寝なくても大丈夫な薬」とか飲んでいたよ。

 シオドアによると、注射よりこっちの薬の方が怖いって。



 アタシとスザナが手伝ったことは、蒸留水を作ることかな。

 調合に使う?まさか。

 器具の洗浄に使うんだよ。


 ちなみに最初に作った蒸留水は、不純物が多いってシオドアにボツを食らった。

 何回か失敗して、合格点が出るようになった。



 やり方としては、蒸留の道具は、蒸留水で洗浄する。

 また、蒸留の最初と最後は、不純物が多いのでもう一度蒸留しなきゃいけない。


 スザナはこれで錬金術ギルドで、先生のお手伝いができるかもって言ってたけどサ。


 ま、先生は人間族かエルフ族の職人に作らせると思うよ。

 適材適所ってヤツだ。

 

 今回は緊急事態だから、アタシ達がやるけど。

 


 もちろん皆のための食事も作ったし、看護用の上着もたくさん縫った。


 まあそれでも、アタシとスザナはちゃんと寝てたから。 

 皆で倒れてたら本末転倒でしょ?


 ネリーを看護してるシオドアとレヴィが心配だよ。




 薬の第一便は、丸二日ほどで出来上がった。

 

 ネリーはシオドアとレヴィの看護のせいもあり、ちゃんと病気に耐えている。


 間に合ったのだ!!

 良かったぁ!!



「すぐに当たりが出た、運が良かった」「医療の神(ヒュギポス)様に感謝だよぉ」ってマデリンさんとケレグント師は言ってた。


 当たりがなんだか分からないけど、ネリーが元気になったら、医療の神(ヒュギポス)様にお参りに行かなくてはいけない。


 《《ネリーが元気になったらね》》!

 分かってるよね!

 ちゃんとネリーを元気にしてね!

 お賽銭弾むから!



 できた薬ををネリーの身体に入れるんだって。

 飲むんじゃなくて直接身体に入れるんだそう。

 どうやるの?また注射?


 えーと、薬はちゃんと効いたんだって。

 ネリーは一気に回復してきた。シオドア談。



 もちろん、魔術師クランに渡す薬も作らなきゃいけない。


 最初の薬ができたら、次からはそれほど難しくないんだとか。


 この頃から、巨デブハイエルフのケレグント師は愚痴が増えた。

「本国から応援を呼ぶべきだった」とか「もう私じゃなくてもできる」とか。


 何言ってるか分からないし、誰もケレグント師の愚痴に賛同しなかったけど。



 薬はケレグント師が魔術道具マジックアイテムで、魔術師クランの担当者を呼び出して、取りにこさせた。



 アタシとスザナは、窓ガラス越しにネリーを見ることができた。

 外壁に梯子をかけて、二階の窓からネリーを見た。


 相当やつれてたし、顔色は悪かったけど、ガラス越しにネリーはアタシ達に手を振った。

 アタシとスザナも振り返した。



 魔術師クランも感染はなんとか収束させたらしい。

 後は、病気になった患者が回復するかどうかだって。



 事件といえば。


 冒険者通信(タブロイド)紙は、魔術師クランの伝染病騒ぎをすっぱ抜いた。

 

 スクープである。



 冒険者通信(タブロイド)紙は、食料の差し入れといっしょにレヴィの家に差し入れられた。


 どうもサ、ロイメの留置施設でアタシ達を監視していた男が差し入れ担当みたい。

 ありがとー。

 あの時は文句ばかり言ってごめんねー。



 「魔術師クランで伝染病発生!」

 「死者〇人以上」

 「秘密主義の研究室、そのあり方を問う」


 ほーほー、冒険者通信(タブロイド)紙にしては、よくやった。

 アタシ達は魔術師クランのコウモリ実験室のせいで、こんな目に合ったのだ。

 

 ざまぁ。ザマァ。ザマア!



 次の号ではロイメ市の悪口が書いてあった。

 「伝染病をロイメ市は知っていたのか?」

「ロイメ市が見ているのは、市民か魔術師クランか?」

「伝染病から家族をどう守るか」


 やるねぇ、冒険者通信タブロイド紙。

 ま、隔離されてるアタシ達には関係ないけど。

 


 冒険者通信《タブロイド紙》が煽り立てたせいで、ロイメは大騒ぎになった。



 そもそも、世界に振り回される庶民の意見を言うけれど。


 伝染病や流行り病の類は定期的にロイメに入ってくる。

 アタシの母さんも父さんと流行り病で死んだ。

 あの年は王国やその周辺でもたくさんのヒト族が病気にかかって死んだ。


 要は病気は世界の一部で、神々の御心の一部、天災なのだ。

 すごく怖いけど。


 アタシはこんなことを考えていた。

 悟りの境地ってヤツよ。



 さて、今回は伝染病の発生が魔術師クランだとはっきりしている。

 みんなが文句を付ける場所が「地上に」あったわけよ。



 ロイメの議会で大問題になった。


 そして。


「夏の祭り中止」

 冒険者通信《タブロイド紙》に、大きな見出しが踊った。


 えぇ゙ー!?






 第七部「ヒトと病」はこれにて完結です。

 完結編の第八部は「愛と祭り」です。


 この物語の背景にいる神様は、愛の女神(アプスト)様だと思います。


 完結まであと少し!



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