第54話 隔離と手紙
アタシ達、『輝ける闇』六人は、ダンジョン・ゲートに戻るなり、冒険者ギルドに隔離された。
ゴブリン族と接触した後、隔離されるのは冒険者ギルド職員も同じだ。
出発前にシオドアから説明もされていた。
覚悟していたはずだ。
隔離は十日間だって。
あー、サイアク。
隔離一日目にして、アタシはつくづくこの生活に飽きていた。不満タラタラた。
アタシ達六人は、は別々の個室に入れられた。
食事は日に三度、専用の扉から差し入れられる。
初回のメニューは、パンと肉と野菜のスープとヨーグルトだったかな?
部屋の設備はえらく気合が入っていた。
個室それぞれにトイレが付いている。臭わない最新性能のヤツだ。凄いね。
さらにいつでもお湯!が出るシャワー。
部屋にはベッドと、机と椅子。
リネン類もたくさん部屋にあった。
空調もあった。涼しい風が吹いてくる。
ヒョイッ、ポン。
アタシは部屋にあった挿絵入り小説を放り投げた。
飽きたというか、つまらない。
これなら、クリフ・カストナーの赤玉のレポートを読んでる方がマシだ。
閉じ込められていると、全てがつまらない。
「ねぇー、みんなー、しりとりでもしようかぁ」
アタシは扉の窓に向かって話しかける。
扉には窓がついている。
窓には二重のガーゼがはられていた。外の廊下はぼんやりしか見えないが、声は聞こえる。
隣や向かいや、斜め向かいの部屋に『輝ける闇』の仲間達はいる。
「どれい!」
アタシ。
「いざこざ」
ネリー。
「ざこ」
スザナ。
「こうもり!」
レヴィ。
「りんご」
シオドア。
ヘンニは返事がない。
寝てるな。
「ゴミ」
アタシ。
「黙れ!不必要に話すな!」
そこでギルドの職員にストップをかけられた。
こいつマジでうるさい。
「皆、退屈してるんだ」
シオドアが職員に話しかける。
「部屋に本があっただろ」
「面白くなかったよ。せめて、『冒険者通信』でも差し入れてくれ」
次の食事の時、いっしょに『冒険者通信』が差し入れられた。
記事のメインは、レイラさんとマデリンさんのロイメ帰還と人身売買組織の壊滅だった。
レヴィやゴブリン族については載ってない。
地獄耳の記者どもが、ゴブリン族について何も知らないはずはない。
冒険者ギルドかロイメ市か、どこかが記事を止めているんだろう。
アタシ達の退屈な隔離の日々はダラダラと過ぎていった。
トラブルと言えば、ヘンニが食事に肉が足りないと断固抗議したこと。
(厚切りのベーコンが付くことになった)
アタシとスザナが大声で歌を歌って、ギルド職員とシオドアに注意されたこと。
(だから歌はやめて、しりとりにした)
こんな所だ。
食事はちゃんと食べれるレベルだった。
シオドアやネリーは差し入れてもらった難しい本を読んでいた。
アタシは四日目にパズルを差し入れてもらい、少し気が紛れた。
ヘンニは多分寝ている。
スザナは、お祭りに間に合うのでそれほど不満はなさそう。
レヴィは大人しく辛抱強かった。
そして、七日目の午後、アタシ達は解放された。
あれっ、隔離は十日間じゃないの?
アタシ達は大きな部屋に集められた。
アタシとヘンニとスザナとレヴィ。
シオドアとネリーは一足早く解放されたんだよね。
「思ったより早かったね」
ヘンニが言った。
「こっちも事情がある」
マスクをした冒険者ギルドの職員が言った。
「シオドアとネリーはどうしたんだい?」
副リーダーのヘンニが、代表して聞く。
「両名は魔術師クランの二級魔術師だからな。魔術師クランから招集があった」
魔術師クランの招集があれば隔離は解かれるわけね。なんだかなぁ。
「ともかくアタシ達は自由の身よね」
シオドアとネリーは心配たけど。
「いや、君たちはストーレイ家所有の家であと三日過ごしてもらう。家の外に出るな」
あぁ゙、なんやそれ。
ストーレイ家所有の家と言うのは、要するにレヴィの家だ。
家の外に出れないとしても、冒険者ギルドの隔離施設よりは百倍マシ。
中庭があるし、そこでスザナと試合ができるし、ヘンニにしごかれることもできる。痛そー。
アタシ達はマスクをするように命令された。本来ならアタシ達は隔離されてる身なんだってサ。
レヴィの家まではロイメの住民と接触しないように、馬車で送ってくれるって。
馬車といっても、金持ちが乗るような馬車じゃないよ。荷馬車に幌を張ったヤツ。
馬車の荷台には、芋や野菜があった。差し入れの食料だって。あー、ありがと。
御者は冒険者ギルドの職員だ。
こいつ、うるさいんだよなぁ。
アタシ達が荷台に乗って、いざ出発の時、ちょっとした騒ぎがあった。
冒険者ギルドの職員と誰かが話してる。
いや、この声は祖父?
いやいや祖父、冒険者ギルドと喧嘩しちゃ駄目だって。
騒ぎはすぐ終わった。
祖父は、冒険者ギルドの職員に挨拶して去って行ったみたい。
何だったんだ?祖父らしくない。
「トレイシー・モーガン!」
冒険者ギルドの職員が言った。
「はい。何ですか?」
「身内から手紙だ。渡したからな」
アタシは手紙を渡された。何だろう。
個人的な内容だから、人目につかない所で開けろって表に書いてあった。
荷馬車は荷馬に引かれてのんびりレヴィの家に向かう。
途中の登り坂では、馬が辛そうだから荷台から降りるように言われたよ。
はいはい。
アタシ達の隔離はこんなモンだ。
夕方、アタシ達はレヴィの家に着いた。
これから三日間、ここで過ごす。
これから三日間は表に衛兵が立つんだって。
ご苦労さま。
レヴィの家で、アタシは手紙を開く。
「トレイシーへ
魔術師クランがどうもきな臭い。
根拠はヒトの出入りと俺のカンだ。
こういうことは以前にもあって、たいてい悪いことが起きる。
魔術師クランには近寄るな。
祖父」
……。
シオドアとネリーが魔術師クランに招集されてる。
魔術師クランで何か起こる、いや起きてるのか?




