第53話 クエスト完了、そして
レヴィがニコニコで戻ってきた。
「良いことあったの?」
ネリーが聞く。
「レヴィは無事に追放されたナリ」
レヴィはアタシ達の前に紙を見せた。
おおっ、ロイメの印章が透かしで入ってる紙だ。
「なになに、『レヴィをゴブリン族の西の森の部族から追放する。これからは好きにしてよし』」
ネリーが読み上げる。
文章の最後にゴブリン族の手形?が押してあった。
これは「良かったね」ってことにしておこう。
「もう一つあるナリ」
レヴィはもう一枚の紙を見せた。
何それ?
「ふむふむ、『ゴブリン族は治癒術師マデリンと、木を渡る者レイラを招待する。
この招待は一年間有効である。
愛の女神様への愛と尊敬と共に』」
ネリーが読み上げる。
「すごいじゃないか!」
ヘンニが言う。
「すげー頑張ったね、レヴィ!」
アタシも言う。
「えへん、レヴィ頑張ったナリよ!」
レヴィは得意そうに胸を張った。
「マデリンさんがいかにすごい治癒術師かを説明するのが大変だったナリよ。
アプスト様の神託があると言って説得したナリ」
レイラさんは本当に神託だか分からないって言ってたけど、ま、いっか。
良いことにする。
帰ったら、ダンジョンの神様と愛の女神様の神殿にお参りに行こう。
レヴィの話し合いが終わったのは、午後も遅い頃だった。
『輝ける闇』としては、ここにもう一泊したかったんだけどねぇ。
「宴会も用事も終わったので、出て行っていただきたい」
だってさぁ。
まあ、ゴブリン族だし、仕方ないか。
一応、冒険者の森で、キャンプができそうな場所まで送ってくれるって。
南の森のゴブリン族の長老が『輝ける闇』の出発を見送ってくれた。
周りの巨木からゴブリン達の視線を感じるよ。
人間族ならともかく、ヘンニみたいな馬鹿でかいトロール族なんて、めったに見れないだろう。
ははは、注目するが良い。
「長老、お世話になりました」
シオドアが挨拶をする。
「いえいえ、ロック鳥はダンジョンの神様の使いですから」
「私とは別に。冒険者ギルドからです。
冒険者ギルドは、ゴブリン族を自由にゲートを通らせるつもりはないそうです。
『今回レヴィがゲートから出たのは、偶然が重なったせいである』と」
シオドアは言いにくそうに言った。
最後の挨拶がそれかい!
「我々も冒険者をゴブリン族の森に入れるつもりはありマせん。
今回は、ロック鳥の導く縁で特別です」
ゴブリン族の長老も冷ややかに返した。
そして、アタシ達はゴブリン族の集落を出発した。
帰り道は途中までゴブリン族が送ってくれた。
ゴブリン族の紹介してくれたキャンプ地は、だいぶ狭かったよ。
ゴブリン族ならこの広さでいけるんだろうけど。
その晩は保存食をかじって、交代で見張りを立ててキャンプをした。
次の日は、ボートで目的地まで進み、巨木の森に上陸した。
怖いのは下りだけど、体力がきついのは上りだ。
レヴィとアタシが先導しつつ、ヘンニの体重を支えられるルートを探した。
ネリーはみんなで引っ張りあげる。
帰りはロック鳥は出なかった。
途中で、昆虫型魔物がいたので、冒険者として狩ったよ。
魔石ゲット!やりぃ!
その日の晩も第四層でキャンプだ。
巨木の又の間、割と良い場所を見つけた。
以前に冒険者がキャンプをした痕跡がある。
人気の場所なんだろう。
ここまでくれば第三層はもうすぐだ。
と、思ったんだよ!
第四層の最終日に雨が降った。
巨大な雨粒が激しく降りそそぐ。
アタシ達は、キノコの屋根の下で雨宿りをした。
巨木の幹に張り付いて雨が降り終わるのを待つ。
雨はじきに止んだが、濡れた足元は滑りやすい。
こまめに休憩を挟みながら、ゆっくり時間をかけて登った。
あー、サイアク。
エルフのカニ歩き道を通り、そして、ついに第三層に戻ってきた!
足元が地面って良いね。心底ホッとする。
第三層に着いて最初にやったことは、青助を掘り出すこと。
青助は、埋めた場所に大人しく頭蓋骨のまま待っていたよ。
「青助ー、ゴメンネェー。待っててくれてありがとうー」
ネリーは青助に頬ずりした。
再会できて良かったよ。
青助は、頭蓋骨でスケルトンで生ける死者だけど。
側に埋めておいた荷物も無事だった。
その晩は、ゴブリン族から分けてもらったロック鳥の塩漬け肉を焼いて食べた。
「レヴィさ、許可が出ればアタシとレイラさんの所に修行に行かない?」
肉をほおばりながら、アタシはレヴィに言った。
「レイラさんの所ですか?」
レヴィが聞き返す。
「そ。ロープの扱いとか、偵察の勉強。
もちろん、レヴィは『輝ける闇』の治癒術師だし、興味があればだよ?
無理しなくて良いからね」
冒険者パーティーにおいて、偵察は先導者、治癒術師は最後衛。
これは基本だ。
治癒術師は、危険な先導者なんてやる必要はない。
でも、レヴィは高い所へ登るのも降りるのも、うまいんだよね。
これは種族レベルの適性だ。
レヴィ本人が興味があるなら、修行したら良いと思う。
『輝ける闇』のレベルアップに繋がる。
レヴィが修行したら、偵察として凄いライバルになりそうだけどね。
その時は、投石紐でも頑張るよ。
「面白そうナリ。一緒に行かせてくださいナリ。
許可が出たら」
レヴィは言った。
そうだね、許可が出たら。
その後は、第三層の草原地帯を歩き、アンデッドのいる第二層を素通りし、第一層もとっとと抜け、ゲートに到着。
ヒト通りの多い所では、冒険者ギルドの指示通りマスクをしたよ。
アタシ達は怪しい集団になった。
これで探索終了?
残念ながらまだ終わらない。
帰ったらそのまま、アタシ達は冒険者ギルドに隔離された。
ああー、マジでサイアクのサイアク。
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