第43話 出禁と屈辱
第四層のゴブリン族の集落を訪ねる。
これさ、偵察としての、腕がすっごく試される探索だよ!
マジで。
まずは、第四層の地図の確認だ。
ゴブリン族の集落は、第四層でも冒険者があまり寄り付かない地域だ。
第四層の地図は冒険者ギルドにあるので
写しを作らせてもらう。
複製の魔術道具は使わない。手書きだよ。
手書きが一番、頭に入るから。
写しと原本の確認はシオドアにやってもらった。
地図だけじゃない。
長いロープ、特殊な金具、武器、……必要な道具がたくさんある。
そして、ある朝、レイラさんとマデリンさんがレヴィの家を訪ねてきた!
緊急事態発生。
大先輩が二人来訪。
総員配置につけ!
その時に家にいたのは、アタシとネリーとレヴィだ。
三人でバタバタとお茶の準備をする。
「今回は依頼の報告とかじゃないしぃ、気を使わなくていいわよぉ」
マデリンさんはのんびり言った。
ほんとですかぁ?
そのままマデリンさんは、レヴィを抱き上げて、ソファーに座った。
マデリンさんは、レヴィのモフモフした尻尾を笑顔で撫でてる。
アタシとネリーは、レヴィを人質に差し出すことにした。
一方で、レイラさんは大きな紙を持ってきた。
これ、第四層の地図だよ!
「第四層のゴブリン族の集落まで行くって聞いてね」
レイラさんは地図を広げながら言った。
「ありがとうございます」
アタシは頭を下げる。
「あたしが付いて行ければ良いんだけどさ。
実はあたし、ゴブリン族から出禁食らってるのよね」
レイラさん、何やったんですか。
出禁に至った二人の話をまとめるよ。
七〜八年前のことだ。
レイラさんとマデリンさんは、第四層のゴブリン族とお話ししたいと思ったんだそうな。
「どうしてまた?」
「二人で飲んでたらさ、マデリンがね、愛の神様の神託があったって言い出したのよね。
なんだっけ?『ゴブリン族と愛について語ってこい』だっけ?」
『神託』とは神々がヒトに言葉を下ろすことを言う。
占い師のやるなんちゃってならともかく、本物は珍しい。
アタシは遭遇したことない。
「うーん、マデリン、内容、良く覚えてなーいのよねぇ。
良いお酒が手に入ったからぁ、二人で飲んでたら眠っちゃったのぉ」
夢か現実か。
うーんこれ神託?という感じだったそうな。
何度も言うけど、アタシはそもそも神託に遭遇したことがないから、本物も偽物もよく分からん。
「まあ、元々ゴブリン族には、興味があったしね。渡りに舟ってやつよ」
レイラさんはまとめた。
かくして、レイラさんとマデリンさんの「ゴブリンとお話する探索」が始まった。
「お二人が冒険者ギルドの規則を破る言い訳が立ったと言うことですね」
ネリーが直球に言った。
ちょっと、ネリー。
まず、二人でゴブリン語を学んだ。
そして、第四層のゴブリン族にゴブリン語で話しかけたけど、完全に無視された。
話しかけながら追いかけたら、ゴブリン族は毒矢を降らせてきた。
ゴブリン族は用心深く、余所者嫌いだった。
さもありなん。
「でも、こうなると燃えてくるのよね」
愛の神信者のマデリンさんがはじめた探索だったが、途中でレイラさんが本気になった
レイラさんは、もうちょい頭の柔らかい若者や子供なら、何か反応があるんじゃないかと思ったそうな。
ゴブリン族の子供はどこにいる?
第四層の上層部だ。
普通のヒト族ではたどり着けない場所だ。
レイラさんは身軽な体を生かし、第四層の上層部、細い木の枝が絡まりあうエリアに行ってみた。
レイラさんの目論見は当たった。
「『ここまでついて来れたら話してやるよ!』ってゴブリン語で言われたのよ」
レイラさんは燃えに燃えまくった。
もともと木登りは上手かったが、練習してさらに技術に磨きをかけた。
ダイエットで体重も落とした。
さらに高価な風魔術の魔術道具も手に入れた。
万全の態勢の下、ゴブリン族に挑んだ。
「あたしはゴブリンの連中について行ったし、それどころか一番高くまで登ったのよ。
そうしたら、ゴブリンどもは、ピーピー泣き出したの!
それどころか、また毒矢を浴びせてきたの。
約束が違うでしょ!」
ああ、それは。
「あの時のレイラちゃんは半分ストーカーだったからねぇ」
マデリンさんは言った。
うーん、まぁ。
「そして、冒険者ギルドから注意が来たのよ。
『ゴブリン族に付きまとう変態な冒険者はあんたらか。付きまとうのは止めろ』って」
「考えて見ればぁ、ゴブリン族から見てレイラちゃん、変質者よぉ」
ええ……。
「……あのレイラさん。
実はレイラさんと追いかけっこした子供の中にレヴィもいたんナリ」
おお!?
「そうよね、なんか見たような気がする!
なんでよ!
なんであたしが話しかけても駄目で、悪党冒険者は良いのよ!」
「その、つまり、怖かったんだナリ。レイラさんは強そうで怖かったんだナリ」
「悪党はどうだって言うのよ?」
「そこまで強そうに見えなかったし、なんとかなると思ったんだってナリ」
「そーこーがーだーめーなーのー。
ヒトを見る目がないってことよ!
自分より弱けりゃ大丈夫なんて、人間族を舐めてるわ。
人間族は様々な道具を使うし、仲間を連れてくるし、悪辣なことを思いつくことにかけては一番なんだから」
「反省してるナリ」
「ホントぉ?
言っとくけど、悪党に攫われて、隷属の首輪嵌められるとか、《《屈辱モノ》》だから。
マトモな頭で考えてたら、そんなことにならないから。
助けてもらえたからオッケーってモンじゃないから!」
そう言うと、レイラさんはレヴィの頬を左右に引っ張った。
「マトモな考えでは、ダンジョンの外に出れないんだナリ」
「そういうことを言うのは、この口かぁ!」
レイラさんはレヴィの頬をさらに引っ張る。
「ダンジョンの外に出れたから、もうしないナリ」
「ほーんとー?」
レイラさんのほっぺ引っ張っり攻撃はマデリンさんが止めた。




