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CHANGE  作者: ゼン
番外編
15/15

悪因悪果の話

 いびって遊んで愉しんでいた後輩の反撃にあった日から、女の人生は変わった。


 


 父親が専務取締役を務める、健康食品を主に取り扱う会社にコネ入社した女の人生は、言わば『超楽勝』だった。

 仕事なんてしなくても周りは何も言わないし、若くて可愛い女は皆のアイドルだった。


 しかし、そんな栄華の時はそんなに長くはなかった──女のその立場が危ぶまれる事態が起きたのである。


 とある芸能人がブログで、自社のサプリメントを取り上げたおかげで、サプリメントを含めたその他の商品が爆発的に流行ったことが原因である。

 会社が大きくなったことで新入社員として、女より年の若い人間が採用され入社したのだ。


 ……異性はいいが、同性は許せない。

 女より少し若いというだけで、ちやほやされて調子に乗る不細工は特に許せない。


 中でも格段に気に食わないとある後輩に、女は徹底的に嫌がらせをした。

 データを消して土日に出勤させたり、嘘の情報を教えて全く関係ない書類を作らせたり、長期休みを取らせないよう画策した。

 その内、後輩も対策をして騙されまいとしてきたが、それが鼻につき徹底的にいじめ倒した。


「明日の朝までにこの書類、修正しておいてぇ」


 だからあの日も、その流れでへらへら笑う顔に書類を投げつけた。


 ──そして、女の『超楽勝』に陰りが差す。


 まず、会社に労基が来た。

 法律違反していることがバレた社長の顔は紙のごとく真っ白になった。


 その次に、女の()()()の記録や証拠を持って弁護士がやって来た。


 更にその次なのだが、父親に縁こそ切られなかったもののしこたま怒られた女は、会社を自主退職することになった。

 父親のおかげで懲戒解雇は免れたそうだが……可愛い娘の為なら床に額を付けるのも当然だろう。大袈裟に声を張り上げる父親はまるで別人のように感じ、苦手になった。


 それからも、付き合っていた男と、乗り換え用に狙っていた男の両者に振られたりと、女の不幸は続いた。


 されども、ある程度出し切れば不幸が止む時は来る。


 ──しかし、最も不幸なことは、女がこんなことがあったというのに学ばない人間だった、ということだろう。




 無職になった女であるが、母方の実家が裕福なので生活は苦しくなかった。

 しかし、今どき『家事手伝い』の女は合コン等の飲みの席で良い印象がない。

 なので、派遣として働き始めたのだが……まともに仕事をしたことない女は新卒ですらできる電話対応もまとも出来ずに一ヶ月更新もままならない。

 そして、とうとう挙げ句の果てには『社会人経験、本当にあるの?』と、行き遅れのお局(ババア)に言われ、堪忍袋の緒が切れて、働くこと自体をやめてしまった。


 そんなこんなで。

 自分に大甘な母に泣きつき『あなたは働かなくてもいいのよ』と言質を得た女は自宅で悠々自適な快適ライフを過ごすことになる。


 何だかんだ激怒していた父親の機嫌も戻りつつあり、母親は変わらずに優しいし、最近参加した婚活パーティーでは良いとこのお嬢さんという印象を与えることができ、仕事をしなくてもいいことが分かった女の人生はやっぱり『超楽勝』だった。


 この頃に始めた趣味も、女の人生を有意義なものにしていた。


「ふふ〜ん、ふ〜ん」

 ──その趣味は、思わず鼻歌が出てしまうくらいに楽しかった。


【後ろの背景歪んでます;残念〜。このモデルさん好きだったのに、加工し過ぎ……】

 スクリーンショットに赤い丸を付けた画像と共に呟くと、『いいね』がたくさん付いた。


【○○ちゃんの足、羨ましいな〜、私の足は細過ぎるからこのくらい太くしたい! どうすれば太れるのかなあ;;】

 可愛いと調子に乗っているモデル希望の女が投稿した足の写真と、自分の写真を並べて呟くと、『○○ちゃんより細くて羨ましい』とコメントが付いた。


「あ、またコメントと『いいね』が付いた〜!」


 この調子でいけば、人気インフルエンサーになれちゃうかも! と女は本気で思っていた。

 こんな簡単に気持ち良くなれるならもっと早く始めていればよかった、と。女の人生は『超楽勝』なのだから、と。


 そんなこんなで、順調に日々は過ぎていった。


 が。


 女は、自分より人気のあるインフルエンサーのせいで自分のファンが少ないのだと思い込み、彼女らに誹謗中傷めいたメッセージを送ったり、誤った情報をSNSで発信しだした。


 毎日毎日、粗を見つけては発信した。粗がなくても、そんなものは作ったりこじつけて発信できた。


 中傷して、誹謗しまくった。


 そんなことして楽しいの? と聞かれれば、この頃の女は『楽しいに決まってる』と返したことだろう。


 女は無敵だった。

 何にも怖いことなんかない。



 ────……ここまでが、彼女の『超楽勝』な人生だった。



 ある日届いた手紙により、女の人生は暗転する。

 プロバイダ契約をしている父親宛にそれは来た。


 開示請求だ。


 悪事はいつか必ず白日の下にさらされる、と言いますからねえ──ニュースで報道された政治家の汚職事件。それについてのニュースキャスターのコメントは、女の感想と同じだった。


 でも。

 まさか。


 自分が、それと似た状況に陥るとは思わなかった。


 人気インフルエンサー、売出し中の若いアイドルやモデル達を執拗までに中傷して追い詰めた女は、とうとう両親から見放された──正義感を滾らせた者達が女の居場所を特定したせいだ。

 その結果、実家も女の個人情報も把握され、嫌がらせが始まった。


 その果てに、女の最大の味方である母親が心を病んだ為、父から家を出るように言われてしまった。










 今日も、今日が始まった。始まってしまった。


 悪夢は続いていると絶望感に苛まれながらも、仕事へ行く為の支度をする。

 しかし、早く醒めればいいのにと思いつつ、今この場にいることが現実なのだと知っていた。


 どうしてこうなったのか──ぎりぎり生活できるだけの金を親から貰えてることは、不思議なくらい幸運なことなのだが気付かない女はSNSに投稿する商品を得る為に仕事に出かける。


 バイトも派遣もなかなか続かないが、金が無いと投稿する写真が撮れない。

 だから働く。今日も、休憩時間にスマートフォンで履歴書を書くつもりだ。

 いっそのこと、もっと、手っ取り早く稼ごうかとも思うが、それだけはしたくなかった。


 でも、それも時間の問題だろう。もう、金が無い。


 助けてほしい。そう言って、元恋人や友人達に連絡しても、どうしてか誰一人として会ってくれなかった。


 冷たく世知辛い世界だ。

 可哀想な女を誰も助けてくれない酷い世界だ、と。


「どうして、誰も助けてくれないの……酷い、酷いよ」


 考えるが、分からない。


「……どうして…………?」


 独り。



 部屋で呟く女に、返ってくる答えはなかった。







 友人が『誹謗中傷による権利侵害』にて開示請求をした結果、慰謝料を勝ち取れた記念にこの番外編を書きました。


 ……『ざまあ』が流行る理由が分かった気がします。


 心無い言葉や文字に傷付く方がいなくなりますように。

 頑張っている人達が報われる世界になりますように。

 と、切に切に願います。


 友人は立ち向かいましたが、無理なら戦わずに逃げてもいいと思います!(私なら逃げちゃうかも;)


 これを目にした方々、心身の健康を第一に優先して日々をお送りください。

 お読みいただき、ありがとうございました。(20230326/ゼン)

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