亡命申請
前回と前々回のゴタゴタを先ずは心より謝罪させて頂きます。理由はともあれ人様に『魅せる』作品を作成、提供できなかった事は私のミスであります。
そんなこんなで夏も明けましたね、まだ暑いですけど。今回からまた本腰を入れて努力をしてまいりますので応援のほどよろしくお願いします。
結局、部屋の前で待機させて鳥海1人が部屋の中に入るということで決定した。
ノックを3回してみたが中からの応答はない。
「入るぞ」
待っていても埒が明かないので、寮母から借りた鍵で錠を開けた。
部屋に入ると八角を始めとした様々な漢方薬が並んでいた。
その真ん中で漢方薬になると思われる薬草を潰している部屋の主――リーを見つけた。作業着だろうか、白色の袴のような服を着ている。それは彼女の黄桃のような髪色に良く映える。
どうやら作業に没頭しているようでこちらに気付いていない。
どうしてそんな服や薬草を持っているのかは彼女の能力『物質を再構成する』に起因している。
旧時代の言葉を使えば『錬金術』に該当する。皮肉なことに何百年も昔に不可能だと言われたことを実現しているのだ。
それにしても部屋の一部を占領するほどの量を揃えていることに彼は驚いた。
「良く揃えたな。外にもろくには出してもらえないのに」
やっと気が付いた彼女は少し驚いた様子でこちらを見て言った。
「おお、殿か。むう、すまぬ。今日退院じゃったのか?ひと声かけてくれればわしから花束でも持って迎えに行ったのに……」
残念そうな顔をして言っているが、実際には部屋から出れないはずなのだが……警備はどうなってるんだ一体。
まあ、この部屋の隣が花屋なのだが警備が見回っているのにそこまで簡単に行って買い物までできるのだから可能か。いや、ダメなんだが。
「そうじゃ、殿が早く元気になれるように漢方薬を作ったんじゃ。良かったらもらってくれんかの」
そういって小瓶を差し出してきたので受け取った。
「ああ、それはありがたく頂こう。レイの漢方薬は効くからな。それはそうと、『報告』をもらおうか」
「おお、それはそこの紙束に書いておる。後で比叡殿に渡しておこう」
彼女が指した方を見ると辞書くらいの分厚さをした紙束が置いてあった。
「中身は?」
「特殊部隊の作戦記録、訓練内容、それと構成員、最新兵器の情報じゃ」
「ご苦労。よく帰ってきてくれた。で、どうする?制服は用意しているが階級は少将から昇格しよう。他に必要なものは?」
「そうじゃの、義勇軍の時の自分の装備がこの紙に書いてある場所にある。それの回収と殿の小隊への参加じゃ」
渡された紙を見て彼は天を仰いだ。
「どこだよここ……戦闘機まで置いてあるのか。小隊の参加は俺が許可しても小隊の士気に関わる。よって回収したもう1人を含めて入隊試験を行おうと思う。いいだろ?」
それを聞いた少女は見かけ本来の可愛げを持ちながら小首を傾げた。
「それは構わんが……武装は何も持っとらんぞ」
「ああ、それについては軍の正式装備で統一するから大丈夫だ。全員同じ武器で戦闘する」
何かを察したのか少女は妖艶な笑みを浮かべると、
「成程、武器の所為には出来ない、という事じゃな」
彼は1つ頷くと彼女から貰った漢方薬をしまおうとした。
……が、何か違和感を感じる。なぜかリーがニヤニヤしている。嫌な予感がして彼は少女に問うた。
「……何が入っているんだこれ」
少女は蠱惑的な笑みを浮かべて答えた。
「何じゃろなぁ♪」
彼は溜息をつくと少女を連れて部屋を発った。
扉を開けて早々にユリアが質問してきた。
「隊長、大丈夫だった?まあ、大丈夫そうだね。で、その人が例の?へぇー、可愛い子だね。でも強いんでしょ!すごいよねぇ。ええと、リーちゃん……だっけ?この子どうするの?」
結論を待っている3人に彼は答えた。
「技術もある。俺と面識もある。亡命要請を拒否する理由はない。その為亡命に関しては許可する。しかし、アルファ小隊に編入したいという彼女の希望を俺1人が2つ返事で決めるわけにもいかない。よって、一端彼女を同行させて収容区画に向かう。話はそこで決定すると思うが……何か意見はあるか?」
予想通りと言えばそうなのだが榛名が文句を付けてきた。
「本当に大丈夫なの?絶対に安全って分かっている訳でもないのに。だってカイくんも見たでしょう?あれは何なの?彼女の能力?何も確証が無いのにカイくんのそばに置いて何かあったら私はっっ」
彼女は彼女なりに少年を心配しているのだ。それを知っている鳥海は少し穏やかな表情をしながら少女に語りかけた。
「大丈夫だ。前に言っただろ?問題ないって。レイがそれをするんだったらもうとっくにやってる。彼女が俺に亡命を申請する代わりに提示した国家軍の資料はこちらに利益はあるがリーには問題しかない。どの道もう彼女はあの国に居場所はない。だったらせめて、助けることのできる力を持った『友』が助けるのは当たり前のことだろ?」
穏やかに伝えたのだが意地っ張りな榛名は中々引こうとしない。
「でも、だってぇ……」
「大丈夫だ。俺を信じてくれ」
そう言いながら彼は、いつの日か彼の姉がしてくれたように優しく彼女の頭を撫でてやった。
数十秒ほど経って榛名が落ち着きを取り戻したことを確認した鳥海達は、次なる目的地へと足を運んだ。




