1.目覚めたらそこは現実ではありませんでした。
あ頭が……重い。
頭の半分はまだ、寝ている。
ぼんやりとまどろみから目が覚める。
ぼーっとしてる。
現実と夢の境界線があいまいだ。
「――!!」
驚きによる開眼。
急遽夢から現実へと呼びだされる。
……ここは、どこだ?
たしか、俺は自分の家で寝ていたはずだ。
今日(もう昨日かな……)は飲み会だったはず。
泥酔はしていたが、家には辿り着いていた。
まさか、酔いすぎて別の場所で一夜を……。
考えがまとまらない。
背中に嫌な汗が走る。
ドコダドコダドコダ……!!
辺りは闇の中、不安が大きくなる。
悲鳴。
あああああああ!!!
何なんだ、ここは。
現状把握。
いや、深呼吸が先だ。
すーはー。
動悸が激しい。
もう一回。
すーはー。
幾分か気持ちがマシになる。
悲鳴。
悲鳴。
悲鳴。
再び現状把握。
ここは……。
目が暗闇に慣れてくる。
ここは……森の、中?
あり得ない。
あり得ない。
あり得ない。
いくら酔って野宿をしても、森の中はあり得ない。
俺の住んでいる場所に森林は殆どない。
せめて、街中ならわかるが、森は、ない。
悲鳴。
悲鳴。
悲鳴。
先ほどまで無視していたが、悲鳴が聞こえる。
やばい、予感しかしない。
闇の森。
悲鳴の先。
駆け寄る。
そこには……。
背筋が凍る。
動悸が激しい。
息苦しい。
見たことがない生き物。
ゾウとか、キリンとか、そういうレベルではない大きさ。
気を失いかける。
20階建位のマンションの背丈。
紅色の身体。
それを囲うかの様なツバサ。
ゲームや漫画で見たことがある。
本来存在しない生物。
ヨーロッパで伝承や神話として語り継がれている。
伝説上のみ存在する生命体。
――ドラゴン。
悲鳴。
悲鳴。
悲鳴。
ドラゴンの足元。
そうだ、俺はこの悲鳴を聞き、ここまで来た。
少女が1人。
丸まっている。
声に反応するドラゴン。
――ギロッ
黄金色にぎらつかせる目玉。
耳まで裂けた大きな口。
滴る唾液。
頭が真っ白になる。
ああああ。
走馬灯が思い浮かばない。
そのような暇がない。
助ける?
俺が?
俺、こんなドラゴン倒せないよ。
俺の今までの人生は逃げてきていた。
よくわからない世界。
女の子を守る。
そのような大層なこと、俺にはできないよ。
――はぁ、はぁ、はぁ
動悸が激しくなる。
見捨てる?
俺の良心が持たない。
だが、助けることもできない。
あああああああああああああ!!!
「だ、誰か……。 助け……て……」
俺は、俺は!!
今までただ平凡に過ごしてきた。
そして、これからも普通に生きていくはずであった。
うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!
こ、ここで。
今ここで!!
動け、俺の身体。
そう、助けるんだ。
無理だよ。
俺はただの一般人だ。
喧嘩すらほとんどしたことがない。
力?
そんなものないよ。
でも、目の前で困っている子がいるんだ。
唐突に頭に文字が浮かぶ。
『力が……欲しいか……』
え?!
『二度問う……力が欲しいか……』
頭が白くなる。
有るものならばほしい。
むしろ、、、よこせ!!
『力が欲しいか……ならば我と契約せよ……』
け、契約??
頭の中で閃光がはじけた。
ただ、一生懸命に身体を動かしただけであった。
しだいに周りの音が一切、耳に届かなくなった。
――鼓動を除き。
意識が急速に変わる。
ゲーム画面が暗転するかのように。
――鼓動。
――どっくん。
全ての遮断。
――どっくん。
無の世界で何かが動く。
――鼓動。
――どっくん。
!!!!開花!!!!
頭の中に無数の文字・数字が浮かぶ。
それは、アラビア数字や日本語、英語ではない何か。
これは何だ。
何なんだよ!!
ランダムに並んでいた文字配列・数字配列が徐々にまとまる。
決して日本語ではない。
俺には読めないはず……。
だが、なぜか読める。
俺の両手がぼんやりと光る。
意識が現実へと戻る。
目の前のドラゴン。
そう、今ならやつを簡単に退けさせることができる。
頭に浮かんだ文字配列。
魔法。
しかも強力な。
ドラゴンの口から今まさに炎が吐き出された。
大丈夫。
きっと大丈夫。
文字列を言語化する。
「我放つ。氷の力。霊獣百虎の名において」
手の光が強くなる。
徐々に。
徐々に。
「氷系強魔法!!!」




