プロローグ 【 声 】
今回は プロローグのみとなっております。
どうぞ、ゆっくりしていってくださいね。
人は脆い 命は短い薄氷のように儚い それに比例して短き人生の中で実行可能な事も少ない。
そして.....貪欲な瞳に移せる景色もまたしかり。
しかし、数は夜空の星々と同様、
八百万の目がある。
それでも、この世界は見てもみきれぬ。
そして、みきれぬという事は見る事ができない。その景色にとって、
その世界にとって、人間は招かねざる者ということである。
ならば、人ならざる者になれば見れるという者もいるだろう。
全くその通りだ。では、その人ならざる者の話を私からの贈り物にしよう。
ん? なぜそれを知っているかって?
.......さぁ、なぜだろうね。
プロローグ
目を閉じても開いても黒一色。 どこが上でどこが下なのか。 足が地面についているか。 頭がぼーっとする。
あれ、頭なんてついてたっけ?
あれ、目なんてついてたっけ?
よくわからないや。とりあえず何も考えたくない。
「ねぇ、君今忙しい?」
突然男の声が聞こえた。
....30代くらいだろうか。成人しているような声だ。 不思議な事にそれの声がどこから聞こえているのかわからなかった。
まるで体全体が耳のような感覚だ。
「..........わからない」
ほっといて欲しいから嫌味を込めて言った。
静けさに浸っていたいのにその声が
美しい花瓶を金づちで砕くかのように台無しにするのがどうしても気にくわない。 自分の事は放っておいてほしかった。
「自分のことでしょ?わからないの?」
嫌味を込めて言ったのにわからなかったのだろうか。
「.............自分が誰なのかもわからない。 とりあえず、答えたんだから静かにしてくれないか?」
さっきの自分の嫌味を理解出来なかったのかと思い、はっきり言ってみた。しかし、怒っている自分を奇妙な奴は笑った。
「人間は僕らと違って儚い生き物だものね。君たちの記憶なんて曖昧なんだからもっとだね。あぁ、なんとかわいそうに。......ねぇ、君今忙しい?」
さっきの自分の言葉を無視して話を進める。 理解できないのだろうか。
どうやら見えない奇妙な奴は可哀想な事に「放っておく」という言葉は脳みそには入ってないらしい。本当に面倒な奴だ。
「..............だから何もわからないんだって 何度言ったら理解するんだ
本当に自分が何をしなくてはいけないのか今忙しいのかわからないんだ」
「......それって忙しいって思えば忙しいし、忙しくないって思えばいそがしくないんじゃない?」
「なんて適当な...... 」
こいつには理屈が通じないらしい。
全くなんてやつだ。
「よし、君は忙しくない! 忙しくない! さぁ、これでいいだろ?」
「.................なんでそうなるのさ」
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読んでいただき誠に有難う御座います。
次回から本編となっております。
前菜のお味はいかがだったでしょうか?
次回はスープといったところでしょうか?
お気に召して頂けたら、次へお進みして頂けると幸いです。