初恋
太陽が眩しい程輝き、遠くから一日の終わりを知らせるいつもの鐘の音と、カラスのカァカァという声を
聞き、先を歩く瀬奈はいつも通りにふりむく。
「今日も楽しかった、また明日」
一言告げ瀬奈は家の門をくぐろうとする。
じっとりと汗が額から流れる、たった一言伝えるだけで言いけれど一日遊び疲れた足のように、心が痛みだし中々口が動かず、いつもどうりうつむいてしまう。
するとカラスの鳴き声の世界に、小さい頃からの
安心する心地の良い甘い声が聞こえた。
「明日はもっと遊ぼう、今日より長く
足の痛みで動けなくなるくらいに……ね?」
瀬奈の安心する声を聞くと自然と顔をあげてしまい
自然と笑顔になり、足の痛みも気にならなくなる。
だから──
「うん!また遊ぼう」
じっと瀬奈を見つめていると瀬奈は、一日外で遊んだ汗の香りと柔軟剤の混じった、安心する香りで僕を包み、赤子をあやすかのように優しく頭を撫でてくれた。
胸が温かく全身に温もりが伝わるようだった。
人生初の夏休みが始まり、親が暑くて嫌がっていたが瀬奈から伝わる温もりは嫌ではなく、甘い声と同じで
とても安心する温かさだった、不意にぬるい風を感じた。
「じゃあね」と一言残し今度こそ瀬奈は家の門をくぐった。
僕は瀬奈が家に入っても、足を動かせずにいた、足はもう痛くなく、自分の家は反対側を向けばある距離なのに、ドキドキが収まらない胸に手を当てていた。
そんな僕は太陽がお月様に見守りの交代を終え、変わりにお月様になったのを、空を見て確認し、セミの声から鈴虫の声に変わったのにも気づかず、小さい足で15歩程歩き、門をくぐり──
「ただいま!」と教わったばかりの挨拶を声にした。




